陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

細川智栄子の漫画『あこがれ』

2014-07-25 | 読書論・出版・本と雑誌の感想


昔なつかしい少女漫画って、ふいに読みたくなるものですよね。暇つぶしで。
で、今回ご紹介するのは「王家の紋章」の細川智栄子の話題作『あこがれ』。これを読んだのは小学生ぐらいのときだったはずですが、当時でもかなーり絵が古いなと思ってました。調べてみたら、1968年作! な、なんとほぼ半世紀ちかくも前だったとは! 私がまだ生まれる前の漫画だったんですね(唖然)。瞳と口の、顔に占める割合が「セーラームーン」どころじゃないってば(爆)。

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この漫画は、1986年に堀ちえみ主演のドラマ「花嫁衣裳は誰が着る」としてドラマ化されましたね。来宮良子さんの、あの渋みのある美声ナレーションでおなじみの(笑)。ちなみにあのメロウな歌声の主題歌(椎名恵「愛は眠らない」)で想いだされた方もいるのでは? ほんらいはカヴァー曲で、原曲はこちら。内容はよく覚えてないけど、主題歌や前振りのナレショーンだけはやたらと覚えてますよ、ってドラマは多いですよね。

さて、この漫画の内容をかいつまんで申し上げますと。
父親は行方不明、三歳で実の母親を亡くし、佐渡の名門ホテルに引き取られていた少女・春日千穂がヒロイン。従姉のみさ子母子のいじわるにもめげずに働きながらも、彼女の夢はいつしか上京してデザイナーになることでした。そんなある日、佐渡にやってきた大スター・上月光の命を助けたことから、彼女の運命がまわりはじめ…。

冬山で遭難とか、お誕生会とか、女子特有の嫌がらせとか、とにかく後世の漫画でも見られるようなテンプレがオンパレードなので、とにかく笑っちゃいます。主人公、健気なんだけどとにかくトラブルメーカー。それに王子様の光もちょっとおぼっちゃまというか、我がままですね。みさ子のいじわるは、なんつうか、もう筋金入りですね、女の子ってこわいですねえ~。いまのゆっるい少女漫画からすれば、想像できないドロドロした世界です。

上京した千穂は、有名デザイナーの事務所に押しかけでむりやり社員にしてもらい、次第に頭角を発揮していきます。そのあいだ、ライバルの先輩にはいびられるわ、濡れ衣は着せられるわ、とにかく酷い目に。いまのブラック企業もいいとこなのですが。この地方のボンビーな少女がスターダムにのしあがっていくというサクセスストーリー、まさに『ガラスの仮面』と同じ。女性の社会進出がまだまだ夢の時代であったとき。あの『ベルサイユのばら』(1972-73年)よりも前のお話なんですね。

スター俳優である光のほうにも、とんでもない試練が次々に襲いかかります。
父の会社の危機、借金の肩代わり。とにかく、千穂ともども災難の連続です。光と千穂の仲違いを狙うのはみさ子のみならず、佐渡の知り合いで千穂に横恋慕する祐介までもが。しかし、いちばん怖いのは、光ママンでしょうかね。出生の秘密あり、三角四角関係あり、とにかく畳み掛けるように襲いかかるトラブルの連続に胃の軋みが増すこと間違いなしです。さしづめ当世版シンデレラストーリーですが、さて、光と千穂のラストは、期待を裏切りはしないものですね。なんかいちいちキザな決めポーズで立ち去るスタァ光のしぐさに微妙に笑えますが。あと、光パパン、さっさと真実白状しろよ、と思いました。場末のチンピラとかありきたりすぎて(笑)。姉御肌の親友もお約束ですねえ。

ちなみにドラマとでは、若干エピソードに異変があります。
清純派だったあの堀ちえみさんは、ワイドショーのコメンテーターですっかりちゃっかりしたミセスになってらっしゃいますが。みさ子役の伊藤かずえは、おなじく大映ドラマの「乳姉妹」(ちなみに原作があの吉屋信子 の『あの道この道』らしい)でもいびり役のお嬢さまが板についていましたね。賀来千香子もそうなんですが、けっこうきっつい役を演じた人って、後年丸くなるのでしょうか? 光を演じた松村雄基は、どちらかというと不良役が似合っていましたよね。「スクールウォーズ」しかり。なんか名前で検索したら、氷川きよしとナントカという記事があったので笑ったんですが。



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2 Comments

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うひゃあああw (RQ)
2014-07-28 19:59:45
これ、小学生の頃回し読みしましたよ。
古臭い土臭い漫画だと思って、その時期に多分王家の紋章はもう始まってたかと思うのですが、申し訳ないけど細川御大のあの絵というか雰囲気というか作風が苦手になっちゃって。
(遠近法がいつもおかしいと思うの)

大人になって時代も変わった今読み直せば別の観点から読めるかもしれません。
THE少女漫画な世界ですよね。多分。

ガラカメと王家とどっちも好きな人はどんだけ忍耐強いのだと思います。
御大の年齢を考えると完結は難しいでしょうね。
(いつまでたっても続きが出そうもないガラカメだけでももうそろそろ限界かなーって思い始めてるのに)

変なタイトルつけてしまってすみませんスパムじゃありません。
思わず変な声が出てしまったKiyoshiとYuukiはもうお別れしちゃったようなので触れないでやってください
って自分のところで数年前にちょっとだけネタで触れたらダイレクトに書いてないのに今でも時々検索に引っかかって
あーズンドコ。
かずえカッコイイっすよ。15でヘビを素手で掴めるオンナですもの。
カメンはつづくよ、どこまでも~♪ (万葉樹(陽出る処の書紀))
2014-07-28 23:02:19
RQさま、コメントありがとうございます。
まさか、まさか、こーんなど古い漫画にコメント下さる方がいるとは思わず。
タイトル欄、たしかに何事かと思いました(笑)

>申し訳ないけど細川御大のあの絵というか雰囲気というか作風が苦手になっちゃって。
(遠近法がいつもおかしいと思うの)

全体重の三割は頭に集中してそうな体形ですよね。飛び込みしたら、ぜったい、まっ逆さまから、みたいな(爆) たぶん、目が大きいから、魚眼みたいな世界観じゃないでしょうか(←いま、テキトーなこと言いました)
子どもの頃はあまり違和感感じなかったけれど、いまから、読むと突っ込みたいところだらけですね。昭和の少女漫画独特の強引な展開と、ウフフ光線の尋常ならざる絵柄に耐えられるのは、今の時代、肝の据わったギャグ漫画家だけだと思います。

>ガラカメと王家とどっちも好きな人はどんだけ忍耐強いのだと思います。

『王家の紋章』は名前を聞いただけで、読んだことはまったくないんです。
そうですか、こちらも「未完の大作」なんですね…。たぶん、ご本人の頭ん中では完成されてるんですが、アウトプットされるのが体力的に厳しいのかも。風呂敷ひろげて畳めなくなったんでしょう(酷)
完結してから一気に読みたいと思ってるんですが、いつになることやら、『ガラスの仮面』…。

>かずえカッコイイっすよ。15でヘビを素手で掴めるオンナですもの。

伊藤かずえさんは、現在でもちょくちょく、活躍されてますよね。
「ポニーテールは振り向かない」で武闘派少女を演じたのが印象的です。いかがわしい役どころをあまりされていないはずなのに、イメージを壊さずに芸能界に残っていけるのはすごいですよね。しかし、思春期のおなごは意外と大胆ですなぁ。

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