新年あけましておめでとうございます。
旧年中は大変お世話になりました。
本年も質の高い情報をお送りいたしますので、
どうかよろしくお願いいたします。
さて今回は、恒例の【令和5年度税制改正大綱】を
ご紹介いたします。
今回の税制改正大綱は、ズバリ富裕層に対する
課税強化と、グローバルミニマム課税制度の導入で、
これらの影響により、今までの節税スキームの
ターニングポイントとなることが予想されます。
グローバルミニマム課税とは、国際課税競争に終止符を
打つべく導入される、国際的に協調される課税制度です。
グローバル企業が軽課税国に拠点を移すことによる
合法的な租税回避に終止符を打つべく導入されました。
具体的には、実効税率(単純に税額を利益で割った率)が
15%に満たない場合には、親法人に対して15%との差額を
課税できることになります。
中小企業には直接関係ありませんが、これにより法人税率を
下げる必要がなくなったため、近い将来法人税の税率が
上がる事が必至となります。
また、超高額所得者に対する課税強化や、富裕層に対する
相続税課税強化も導入されました。
また、生前贈与が過去7年までさかのぼって相続税の
課税対象になりました。その分、相続時精算課税に
贈与税の基礎控除(110万円)が適用されることになりました。
巷で言われていた、全ての贈与が相続税の課税対象に
なるという噂が、実際に施行されるべく土台が出来た
ようです。
今後の節税スキームが大きく変わっていくターニングポイントとなる
税制改正の概要を以下にご紹介いたします。
令和5年度税制改正大綱(抜粋) R4/12/16決定
1.所得税・個人住民税
項目 |
内容 |
時期 |
NISAの恒久化 |
l つみたて投資枠を年40万円から年120万円(上限1,800万円)に増加 l 成長投資枠を年120万円から年240万円(上限1,200万円)に増加 |
令和6年1月以降 |
スタートアップ支援税制 |
l 保有株式を譲渡し、創業もしくは一定の創業企業に出資した場合、保有株式の譲渡益を20億円まで非課税とする |
令和6年以降 |
超高水準所得課税 |
l 所得3.3億円以上に22.5%を課税 |
令和7年以降 |
空き家に係る5,000万円控除特例延長 |
l 譲渡日の翌年2/15までに要件を満たせば、特例適用 l 当該不動産を取得した相続人が3人以上の場合には、特別控除額を2,000万円とする |
令和6年1月以降の譲渡 |
納税地変更の届出等の提出期限の見直し等 |
l 開廃業の届出・青色申告の取りやめの届出書の提出期限を、その年分に係る所得税の申告期限までとする |
令和8年分以降の所得税 |
年末調整書類の簡素化 |
l 扶養控除等申告書に、前年と同様である場合にはその異動がない旨の記載によることが出来る l 保険料控除申告書の記載の簡素化 |
令和7年以降の源泉所得税 令和6年の年末調整以降(保険料控除申告書) |
源泉徴収票の提出簡素化 |
l 市区町村長に給与支払報告書を提出した場合には、給与所得の源泉徴収票を税務署長へ提出したものとみなす |
令和9年以降 |
2.法人税
項目 |
内容 |
時期 |
試験研究費の拡充 |
l 増減試験研究費が4%を超える場合、超えた割合に応じて控除限度額が+5%まで増加し、同研究費が▲4%を下回る場合には、控除限度額が最大▲5%となる l 中小企業の増減試験研究費が12%を超える場合、控除限度額を+10%とする l 特別試験研究費の対象に博士号取得者等を雇用した場合の人件費を試験研究費の対象にする |
令和5年4月以降開始事業年度 |
グローバルミニマム課税の導入 |
l 特定多国籍企業グループ等全体の利益に対し、実効税率で15%に達しない場合には、15%に達するまでの法人税を親会社に対し課税する |
令和6年4月以降開始対象会計年度 |
情報申告制度 |
l 特定多国籍企業グループ等に属する内国法人は、その属する企業の名称・所在地国の実効税率等の情報を事業年度終了の日より1年3ヵ月以内に提出する義務を負う |
|
その他 |
l 中小企業の軽減税率を2年延長 l 青色申告承認申請書の簡素化 l 土地重課停止を3年延長 |
|
3.相続税・贈与税・固定資産税
項目 |
内容 |
時期 |
相続時精算課税の基礎控除創設 |
l 相続税の基礎控除とは別に、相続税の申告の際に年間110万円の控除が出来るようにする |
令和6年1月以降の相続・贈与 |
相続時精算課税により取得した財産が被災した場合の特例 |
l 相続時精算課税により取得した財産が被災した場合には、その被害を受けた部分に相当する価額をその財産の価額から控除する |
令和6年1月1日以降に生ずる災害以降 |
生前贈与加算の拡大 |
l 生前贈与加算の対象となる贈与の期間を3年から7年に拡大する l 相続開始前4年前から7年前に受けた贈与財産は、課税価額から100万円を控除する |
令和6年1月1日以降の贈与財産に係る相続税 |
教育資金贈与の課税強化 |
l 相続財産が5億円を超える場合には、受贈者の年齢が23歳未満であっても相続財産に加算する l 認可外保育所に支払う保育料が教育資金に含まれる |
令和5年4月1日以降の信託財産 |
結婚・子育て資金贈与の課税強化 |
l 50才に達した時の残額には贈与税の一般税率により課税される |
令和5年4月1日以降の信託財産 |
その他 |
l 労働者協同組合連合会が所有し、使用する事務所および倉庫に係る固定資産税を非課税とする l 新形コロナウイルス感染症に関する特別貸付に係る契約書の印紙税の非課税措置を1年延期する |
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4.消費税・間接税
項目 |
内容 |
時期 |
インボイス発行事業者となる免税事業者の負担軽減 |
l 簡易課税第2種事業に相当する納税額とする制度を創設する(令和8年9月30日まで) l 簡易課税制度と選択して適用できる |
令和5年10月1日以降を含む課税期間 |
少額の返還インボイスの交付義務免除
|
l 基準期間における課税売上高が1億円以下等である場合、1万円未満の課税仕入に対するインボイスの保管義務を免除する(令和11年9月30日まで) l 売上に係る対価の返還等に対する税込価額が1万円未満である場合には、インボイスの保存義務を免除する |
令和5年10月以降 |
インボイス発行事業者の登録申請期限 |
l 申請期限を課税期間開始前1月前から15日前に変更する |
令和5年10月以降 |
その他 |
l 輸出物品販売場にて承認を受けず当該物品を譲り渡した場合譲り渡した者と譲り受けた者が消費税の連帯納付義務を負う(令和5年5月より) l 酒税の特例制度を段階的に廃止(令和10年まで) l 航空機燃料税を段階的に増税する(令和7年4月より) |
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5.その他
項目 |
内容 |
時期 |
エコカー減税縮減 |
l 現行制度を令和5年12月末まで延長 l その後、令和7年5月までに段階的に縮小 |
令和5年以降 |
防衛力強化税制 |
l (法人税-500万円)×4~4.5%の税額とする l 復興特別所得税のうち1%を防衛費とし、復興特別所得税の期間を大幅に延長する l たばこ税につき3円/本増税する |
令和6年以降 |
優良な電子帳簿の範囲の明確化 |
l 優良な電子帳簿の範囲を仕訳帳・元帳・手形・売掛金・買掛金・有価証券・固定資産台帳・繰延資産・売上・仕入・経費に関する帳簿とする |
令和6年1月以降申告期限到来より |
スキャナ保存制度の条件緩和 |
l 解像度等に関する保存要件廃止 l 記録事項の入力者等に関する情報の確認要件廃止 l 相互関連性要件を、重要書類に限定 |
令和6年1月以降に保存される国税関係書類 |
電子取引の保存要件緩和 |
次の事業者の検索要件をすべて廃止 l 売上高5,000万円以下の事業者 l 出力画面を日付及び相手先ごとに整然に保存し、提示・提出の求めに応じることが出来る事業者 |
令和6年1月以降に保存される国税関係書類 |
加算税の課税強化 |
l 無申告加算税につき、税額が300万円を超える部分を30%とする l 無申告加算税が前年、前々年にも課されている場合には、10%を課徴される |
令和6年1月以降法定申告期限到来分より |
ダイレクト納付 |
l 期限内に申告し、法定納期限の翌日に納付があったダイレクト納付は、期限内に納付があったものとみなす |
令和6年4月以降ダイレクト納付分 |
スマホ搭載の電子署名の利用可能 |
l スマートフォンに搭載された電子署名にて電子申告が可能になる等 |
令和7年1月以降 |
滞納処分の強化 |
l 滞納処分免脱罪の適用範囲拡大 l 質問検査権に帳簿書類以外の物件が加わる l 調査の相手方に対する帳簿書類等の物件の提示・提出を求めることが出来る |
令和6年1月以降に開始する滞納調査 |
6.予告
項目 |
想定される論点 |
年金課税の見直し |
l 年金制度間のバランス、貯蓄・投資商品への課税、給与課税のバランスに留意しつつ課税のあり方を検討する |
デリバティブ取引に係る金融所得課税の一体化について |
l 租税回避行為を防止するために早期に検討する |
所得控除等の見直し |
l 特別控除(各所得から控除するもの)と所得控除の見直しを進める |
カーボンニュートラル実現に向けたポリシーミックス(経済政策)について |
l EVに対する走行距離課税の導入? |
原料用石油製品等に係る免税・還付措置の本則化 |
l 引き続き検討する |
帳簿保存・記帳義務と電子帳簿 |
l 税務上の透明性確保と恩典適用のバランスを含めて、電子帳簿保存の普及を目指す |
社会保険診療報酬への事業税課税 |
l 実質非課税のあり方を見直す |
電気ガス等業に関する外形標準課税について |
l 課税のあり方について検討する |
出産・子育て応援交付金について |
l 安定財源の確保について早急に検討をし結論を得る |
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