◆井口達也の…やっぱりな話52◆

「お前等、どこのモンよ」

俺がそう言うと、オールバックの男は去り際に「環七亡者(仮名ね)だコラ。おめーら、死んだぞ」と凄んだ。

「いつでも来いバカヤロウ」

俺達はそう言い返してその場から去った。

帰りの電車の中で、ようやく落ち着き始め、喧嘩の反省会が始まった。

環七亡者がどうとか、これからどうするなんて話よりも、若干押され気味だった喧嘩に納得がいかなかった。

それは村上も一緒だった。

「何あんな簡単に転ばされてんだよ達也」

「おめーだって同じだろうよ。頭カチ割られて寝転んでるんじゃねーよ」

「んだとコラ」

「あ？」

険悪な空気に包まれている。

発散の為に向かった新宿で、女には逃げられ、喧嘩も消化不良気味。

余計にストレスがたまってしまう結果になった。

村上は裂けた額をぬぐいながら舌打ちをした。

その後無言のまま狛江に到着し、無言のまま解散した。

環七亡者の事なんてもう頭になかった。

その場限りの喧嘩なんて日常茶飯事だったし、環七亡者とは集会のルートが被るような事もまず無い。

殴られてズキズキする痛みの苛立ちは環七亡者へ向けられるわけでもなく、ここ数日のチームのふがいなさと自分の弱さに対して向けられていた。

しかし俺の傷が癒える前にあの二人と再会する事になったのだった。

～つづく～

井口達也

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