◆北海道はでっかいどう⑥◆

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唐突に「乗せて」ときた咲。

大関は面倒な女につかまったと思ったのか、シラケた顔をしている。

「無理。じゃあな」大関は咲を冷たく突き放す。

「いいだろ大関」

「じゃあお前が下りろよ達也。それならこの子を乗せてやってもいいわ」

「鬼かよてめぇ」

「嫌ならしゃしゃり出てくるんじゃねー。こっちは仕事のついでに乗せてやってんだろうが」

「俺だって仕事できてんだよ」

ムチャクチャな理屈だ。

「仕事なら女なんて関係ねーだろ。乗せてく義理もねー。こちとら遊びじゃねーんだよ達也コラ」

図星。正論。反論の隙間がない。

俺は言葉につまった。

「まぁ話だけでも聞こうぜ」

俺がそう言うと、咲は勝手に運転席のドアを開けて話し始めた。

確かに閉まったままだと話は聞こえにくいが、凄まじい根性と図々しさだ。

大関が注意をする前に咲は矢継ぎ早に話し始めた。

俺や大関が口を挟む間がない。

「わたしぃ、彼氏と大ケンカしちゃってここで下ろされちゃってぇ…帰れないしうろうろしてたんだぁ、あ、乗せてってくれるならどこでもいいから連れてってくれたら良い事してあげよっかな、あ、いいことって言ってもエッチな事はダメだよぉ、暇子だしトラック旅行してみたーい！それでね…」

止まらない。

どうやらこの辺が地元らしいが、生まれから育ちまで、俺達が一切興味のない話まで話し続けた。

大関が予想していた売春婦ではないらしい。

「待て待て待てって！分かったから！」

大関が根負けした。

「どうなっても知らねーぞ女」

「咲でーす」

「チッ。お前の隣にはな、東京で一番ロクデモナイ女ったらしが乗ってるって事を忘れるんじゃねーぞ」

「ほーい」

結局咲が加わり、俺達は三人になって北を目指した。

井口達也

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