周防正行監督の映画『それでもボクはやってない』を
ご覧になったことはありますか?
私は2007年の公開時に映画館で見ました。
 
朝の通勤ラッシュの電車の中で、
中学生に痴漢と間違えられた主人公の男性は
駅長室に連れて行かれる。
そこで、ことを荒立てず示談で済ませることを良しとしなかったので、
警官に逮捕・連行されてしまう。
取調官は彼が無実を主張しても全く信用してくれない。
一旦は心折れかけるものの、家族や弁護士の協力を得て、
裁判で無実を勝ち取ろうとするが……
という話です。
怖いなぁと思いました。
 
そういえばOL時代の同僚男性たちから、
満員電車では手の位置にものすごく神経を使うんだと
聞いたことがありましたっけ。
うっかり痴漢に間違われないように、です。
でも当時の私は、たとえ間違えられたとしても、
落ち着いて説明すればわかってもらえるんじゃないかと、
そんな甘いことを考えていたのです。
しかし『それでもボクはやってない』を見ると、
痴漢は疑われた時点でほぼアウトなんだな、とわかったのです。
 
書店で新堂冬樹さんの『痴漢冤罪』を見かけた時は、
『それでもボクはやってない』みたいな話かと思ったのですが、
全然違う話でした。
 

 

『痴漢冤罪』は映画そっくりな場面から始まります。
 
女子高生に「この人痴漢です!!」と大声で叫ばれた男性。
身に覚えがない彼は、誤解だと主張する。
ところがそこに、痴漢現場を見ていたという目撃者が現れるではないか。
否定し続けると、駅長室に行って白黒つけようということに。
そこに偶然通りかかった弁護士が
「それはお勧めできない」と話に割って入ってくる。
日本では痴漢を疑われた場合、
本当は無実であったとしても99.9%有罪になってしまいますよ、と。
そうなったら信用は地に落ち、
職を失ったり、家族さえ失うこともあると言われた男性は、
その弁護士を頼って示談に応じることに。
 
実は、痴漢被害を受けた女子高生も、目撃者も、
示談の世話をしてくれる弁護士も全員グルだった。
偽ではない、本当の弁護士であるにもかかわらず、
無実の男性を陥れ、示談金を搾り取る裏稼業をしているのだ。
そのためには、被害女性役の女子高生に、
良いカモを見分ける方法や、
痴漢冤罪を成立させるための満員電車での立ち位置などを
しっかり教育するなど「ビジネス」に徹している。
 
彼らが次のターゲットに選んだのは、若手人気俳優。
イメージアップ戦略のため、舞台の稽古場まで
電車通勤していると知ったのだ。
個人ではなく所属プロダクションを脅せば、
5000万円程度は軽くいただけるだろうという読みだ。
 
ところが、プロダクションの社長は、
非合法手段もいとわず事務所を成長させてきた男で、
この作戦には全く乗ってこなかった。
逆に、全員がグルではないかと疑ってかかり、
売られた喧嘩を買うのだった。
 
こうして弁護士とプロダクション社長との
仁義なき戦いが始まった……。
(新堂冬樹さんの『痴漢冤罪』の前半をまとめました)
 
弁護士とプロダクション社長は、
どちらも表の顔と裏の顔を持っています。
それ以外にも、幼少期の経験や、
「弱み」など共通点が多いです。
鏡に映った者同士みたい。
そんな二人が、騙したつもりが騙され、
陥れたつもりが陥れられ、
何度もどんでん返しをくらい合うのが面白い!
面白いなんて言ったら、痴漢冤罪の被害者には申し訳ないけど。
 
そして最後の最後に大大どんでん返しがあり、
「はー、怖い怖い」
「はー、面白かった」
と、本を閉じました。
 
それにしても、小説としては面白いけれど、
現実の「痴漢冤罪」は、面白がっていられない問題だと思いました。
そもそも、痴漢被害者の女性が嘘をつくはずがないという前提は
時代に合わなくなっているのではないかしら。
この小説のように弁護士さんまでが黒幕なんていう極端な話はないにしろ、
被害者役の女性と目撃者が共謀すれば、痴漢冤罪は簡単に成立しそう。
実際にそういう事件もありましたからね。




 
 

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