今回は
昨日自宅近くを歩いていたときの話です。

前から、一人の恰幅のいい
初老のご婦人が歩いてきました。

上下ともブランド物を身に付け
見るからに、ザ・金持ち
という風情を漂わせながら。

そのご婦人、気がつくと私のことを
ずっと見つめながら、じき私の目の前で
パタッと足を止めたのです。

そして、いきなり何の前置きもなく
こう言い放ったのです。

「図書館、どこ? 図書館、知ってる?」

それだけ言うと、あとは一言も口にせず
ただただ私の目をじっと見据えていたのです。

そのとき、「なんて失礼な人だろう!」
正直、私はそう思いました。

人にものを尋ねるにしては
あまりにも不躾な物言いだと。

でも、もしかしたら不慣れな街で
道に迷ったのかもしれない。

私はすぐにそう思い直して
ご婦人にこう答えました。

「図書館なら、知ってますよ」

でも、道順を教えるのが面倒だったので
「こっちです!」と自分の背後を指差し
手招きしながら、ゆっくり歩き出したのです。

その後、ちゃんと着いてきているか
何度か後ろを振り返ると

そのたびに不機嫌そうな顔をしながらも
ご婦人は、ちゃんと私のあとに着いてきました。

そして、裏道の路地をいくつか曲がり
3分ほど歩いたところで、図書館の入口に到着。

「ここが、図書館ですよ」

そう言って、私が振り返ると
それまで不機嫌そうな顔をしていたご婦人が
一転して満面の笑みを浮かべ、こう言ったのです。

「ありがと。ワタシ中国人。日本はじめて。
だから日本人、ちょっとコワかった。ごめんなさい。
でもあなた、とてもいい人。きっと良いことあるよ…」

なあ~んだ!そういうことだったのか!

私は、ご婦人のことを
今の今まで勝手に思い違いをしていたのです。

最初に、不躾な物言いをする人だと決めつけた。

その後、図書館までの道中
ずっと不機嫌そうな顔をしている人
と決めつけた。

でも本当は
ただただ不安でコワかっただけなのに。

もしかしたら、日本ではじめて
見知らぬ日本人に声をかけたのかもしれない。

それなのに、私は一方的に
はなからご婦人のことを日本人と思い込み
勝手に「失礼な人」と決め付けていたわけです。

実にお恥ずかしい話です。

それに引き換え、中国人のご婦人は
見知らぬ日本人の男に、不安を覚えながらも

最後には、何度も頭を下げながら
つたない日本語で、感謝の言葉を口にしたのです。

■善意で、人に何かを施すなら
 その行いだけでなく、気持ちも善意であれ!

何気ない日常の中で
また新たな学びを得た、私の昨日の出来事でした。

そう言えば、あのご婦人
「きっと良いことあるよ…」と私に言ってたけど
あれって中国式の社交辞令だったのかな?

それとも…