以前からTPPについては反対の意見を書いてきて、反論も頂いたんだけど。

関税が撤廃されて自由な貿易が促進されれば、それはいい事ではないかと思う人もまだいると思う。TPPはフエアトレードでは無い。互いに良いようにと云う公平性を持った貿易ではないって事なの。

 平和は戦争によって保たれるとか、自由は服従する自由とか、無知である事は力であるとか。
言葉が本来の意味を失うように意図する政権の下で、公平性のある互いにとって良いような条約が結ばれるとは、まったく思えない。大体自民党は、TPPは絶対に反対って言ってたじゃないのかね。

 北米自由貿易協定(NAFTA)を92年に締結してから、米国の中間層の没落は米国の経済を落とし込んでしまい労働者の賃金は40年前の水準にまで落ち込んでる。これは、TPPによって間違いなく日本でも起こりうる。既に日本でも起こっているよね。

 TPPに反対なのは、それが単に貿易の範疇だけでないからで。関税を引き下げて「自由貿易」を目指す国際的な協議機関には既にガットがある。
それはお互いに相手国の「主権」を尊重した上で、出来る限り関税を引き下げて「自由貿易」を行おうとするものとされてきた。その主旨は理解できるよね。

 ところがTPPは根本的に違う。関税を撤廃して国の産業政策として自由貿易がおこなわれることではない。ISDI条項があることなの。。

 これは、日本の農産業を守る独自の「非関税障壁」も関税の一種だとみなして。貿易関連の投機家からの提訴があれば、世界銀行の中の一機関が判定できるのがISDI条項だ。

 乱暴を承知云えば、企業が他国を裁判に訴えて、世界銀行が判定する。この投機家って言うのはさ、いってみれば利益を得る大企業が、もっと自分達が儲けられるように規則を変えろ、その規則があるからオレら損したから補償しろみたいなもんよ。

 例えばね、ISDI条項を発動すると、日本が自動車に排気量ごとに課税している「自動車税」も米国型の大排気量の自動車に不利だ、米国の自動車を狙い撃ちしていると「非関税障壁だ」と認定されれば、日本政府はその制度の撤廃を求められ、米国の自動車産業に対して莫大な損害賠償金を支払わなければならなくなる。

 だから予防的に日本もTPP導入を前程にして、軽自動車の格安の自動車税を増税したようだけど、これもヘンな話だ。軽自動車の普及は日本独自の必要から生まれたはず。そういう日本特有の制度も壊される。

 日本の農業に対する各種の補助金や「減反政策」もその標的になるだろうね。元々製造原価の高い国内の酪農製品への助成や制度も、米国並みに引き下げられ。さらに物の交易だけでなく、保険や医療制度といった日本で定着している各種制度にまでISDI条項が発動されることになるんだよね。

 以前も、米国の貧困について書いたんだけど、医療保険が受けられない多くの人々は自分で傷を縫って処置したり、あるいは高額治療費で家を売らなければならぬ人々は日常にいる。

 この日本よりも劣る医療保険制度が、日本に適用されることになりかねないんだよね。混合診療は限定的なものから一般的となって、保健医療の方が限定的となる。そうなると中間層でも家族の医療費負担で破産する事が日常化しかねない。そうした社会を、日本国民は望んでいるのだろうかね。

 それでなくても現政権になってから、介護保険料は上がって介護関連の予算は削られ、難病支援は削られ、年金は下がりと社会福祉関連は軒並み悲惨なのにね。

 米国社会は端的に言えば1%の人たちに残りの99%の人たちが奉仕する社会で。日本も米隷属の官僚独裁とも云える情況の上に、さらにTPP加入へと傾斜している。

 それは、日本が貿易だけでなく、社会制度までも米国に隷属する国になるってことなんだよね。
 
 防衛では、安保法制改革で自衛隊を米軍の補完軍隊として世界で使おうとするもので。それは明確に日本国憲法に抵触するものだよね。安倍自公政権の米国隷属を推し進める暴走は歯止めがきかない。

 引き返せない「関税撤廃」貿易協定に突き進むのは狂気の沙汰だと思うのだが。

 「自衛のための軍隊」を世界の何処でも何時でも、国会承認なしで戦争できるようにすることを庶民は望んでなんかいないはず。「国際平和支援法」という新安保法制は危険極まりないよね。それは自衛隊を米国の戦争に組み込むものでしかない。

 米国は、既に世界覇権国家の座の維持は危ういもので。台頭してきた中国が新たにその座に就こうとし、欧州各国は敏感に新しい世界のリーダーに擦り寄る様子も伺える中で。

 日本は非戦宣言をした稀なる国として「非戦争国連合」を構築することが出来る、和の国であるはずだよね。米国に隷属する道を選ぶというのは。覇権の鬩ぎ合う世界を肯定することでもある。武力が平和を作ることなどありえない。

 岩上氏のTPPインタビューも京さんが詳しくブログに書かれていらしたけれど。<こちら>

TPPは、すべての人に降りかかる問題なんだよね。国内の生産者を潰し、発がん性の高いホルモン剤や抗生物質を投与された米国産牛肉が安く出回り、今より安い牛丼やハンバーガーは食べられるようになるだろうけど、仮に狂牛病が発症してもその輸入を止めることができない。

ニコチノイド農薬、遺伝子組み換え食品も今以上に規制が取り払われるだろう。

国内経済や社会制度を、根底から変えてしまう怖れと、医療、郵政の現状を維持不能にする怖れだけでなく、食材など生活全般にその影響は及ぶものだと思えば。

 慎重な検討と線引きの必要性があるのにも係わらず、内容が明らかにされない闇鍋を美味しいと食べさせられるような事案なんだよね。

 情報の公開と慎重な議論が必要な事案が、次々と闇雲に進められる政権下では、過大な禍根を残すのではないかと危惧する。

 それでなくとも、福一の現状と全国的な放射線汚染の中で、安全な食品の獲得も困難な家庭に於いて、TPPは貿易関税の話でも難しい政治の話でもなく。

 自分達の暮らしの質を劣化させ、混乱のみが拡散することを考えれば。安易に経済がよくなるんじゃないかという曖昧な期待で見過ごしてはならないのではと思う。

さて通院やら、引越しの荷物つくりと遽しい中でも、気がかりな世の中ではあるのだ。