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 昨日は大変な数のご応募、まことにありがとうございました。 m(_ _)m

欧州景気、回復遅れ 2010年ゼロ成長予測
http://www.nikkei.co.jp/kaigai/eu/20090722D3K2201L22.html
 欧州景気の回復が日米に比べ遅れるとの見方が強まってきた。個人消費は2009年1~3月期まで4四半期連続でマイナス、企業活動も低迷が続いている。実体経済の悪化と金融収縮の連鎖はまだやまず、ユーロ圏の成長率は日米がプラスに転じるとみられる10年もゼロ近辺にとどまりそうだ。
 欧州の夏の風景に異変が生じている。「バカンスはあきらめた」。仏レストラン店員のカレッドさん(45)。恒例のアルジェリア旅行を楽しみにしていたが「今年は余裕がない」。欧州連合(EU)調査では6人に1人が夏の旅行を断念した。』

 意外に知らない人が多いですが(日本のマスメディアが「ユーロ圏」という、変な成長率の報じ方をするため)、今年の第1四半期(09年1月-3月)のドイツの実質GDP成長率は、年率換算14%超のマイナスでした。(対前期比だと3.8%マイナス) この成長率自体はちょうど日本の同四半期と同じ水準なのですが、問題は日本は第2四半期には対前期比1%弱(年率換算だと3.2%前後)のプラス成長に回復するにも関わらず、ドイツはマイナス成長から抜け出せない可能性が高いということです。
 理由は簡単で、ドイツの主な輸出先であるユーロ圏が、ドイツよりもさらに状況が悪化しているからです。
 特に、ドイツの資本財の主要輸出先だった中東欧バルト諸国は軒並み崩壊状態で、ドイツ製品を輸入するどころか、通貨危機・経済崩壊を食い止めるのに四苦八苦している状態です。日本の輸出産業は、資本財輸入国である中韓の「輸入激減」により大ダメージを食らいましたが、ドイツも同じ状況になっているということですね。

 欧州全域の状況がアメリカより悪化している原因は、バブル崩壊の威力がアメリカよりも強烈だったことと、不良債権の増大による金融システムの麻痺、危機に起因してます。
 欧州全域の不良債権は、アメリカとほぼ同規模の2兆ドルといわれています。この内、半分がアメリカの不良債権(CDOとかRMBSとか)なのですが、残りは欧州自地域内向けなのです。これまで、本ブログではアメリカの不良債権は散々取り上げてきましたが、欧州内部の不良債権については触れてきませんでした。
 欧州内部の不良債権は、主に二つに分類されます。

(1) 欧州域内の不動産バブル崩壊による、不良債権
(2) 中東欧バルト諸国向けの不良債権

 (1)ですが、実は欧州の不動産バブルは、「質的」にアメリカをも上回り、バブル化していました。
 アメリカのバブルは、純粋に「家計の不動産取得」を主因としており、住宅価格の上昇もさることながら、それ以上に値上がり分を新たに借り受ける「ホーム・エクイティ・ローン」など、アメリカ国民の「所得のバブル」の色が濃かったのです。
 そもそもアメリカはあれだけ国土が広いわけですから、全国的な不動産バブルなどあり得ず、実際に住宅価格が値上がりしなかった地域というのもありました。一部の地域(フロリダやら、カルフォルニアやら)の住宅バブルが突出して上昇し、その価格上昇を利用してアメリカ国民が「所得のバブル(要は借金)」に走ったことが、今回の危機の主因となっています。
 それに対し、欧州の方はどちらかと言えば「不動産投機」の色が濃かったのです。要は、別に自分が住むわけでもないにも関わらず、「不動産価格が値上がりするから」という理由で購入した人が多かったわけです。
 例えば、スペインの不動産は、主にドイツ人やスウェーデン人の投機により、極端に値上がりしました。スペイン人の所得の数十年分という規模にまで、住宅価格が上昇してしまった以上、価格を下げても買い手が全くつかないわけです。日本で言えば、3LDKの普通のマンション価格が、外国人の投機により1億円超にまで高騰してしまった感じです。
 すなわち、欧州の不動産価格がアメリカを上回る下落率になるのは確実で、その逆資産効果は十年単位で、欧州の家計を苦しめることになるでしょう。

 次に(2)ですが、実は中東欧バルト諸国に流れ込んでいたマネーは、欧州のみならず、中東やロシア、それに日本発のものも少なくありませんでした。欧州の金融企業が海外から金を集め、中東欧に投機マネーとして流し込んだのです。(主に設備投資や家計の住宅ローンに使われました)
 中東欧バルト諸国は2007年まで「海外マネーを利用した、バブル景気」に沸いていたのですが(ああ・・・、まるでどこかの半島の国のようです・・・)、バブル崩壊後は一気にキャピタルフライトに見舞われ、通貨暴落により対外債務の返済負担に苦しめられるようになってしまったのです。
 独仏などの大国はもちろん、スウェーデンやオーストリアなどの国々も中東欧に積極的に「投機」を行っていました。なぜこれらの国々が中東欧に金を流し込んだのかと言えば、単純に利回りが良かったからです。
 いわば、中東欧バルト諸国は欧州の「サブプライム諸国」と呼んでも、差支えがないわけですね。
 例えばオーストリアは、自国のGDPの八割ものお金を、サブプライム諸国に流し込んでいました。日本で言えば、400兆円もの金額を、利回りの良い新興経済諸国に融資した計算になります。結果的に、アメリカのサブプライムローンと同じく、高利回りのサブプライム諸国は軒並み経済崩壊の危機に直面し、対外債務の返済負担からデフォルト寸前にまで追い込まれています。

 OECDは2010年の成長率予測において、日米がプラス成長に復帰するにも関わらず、ユーロ圏はゼロ成長としています。IMFも、ほぼ同様の予測です。
 実は、EU全27カ国の財政支出は、すでに(リーマン・ショック以降)400兆円の規模にも達しているのです。しかし、不良債権の増加ペースや景気悪化には追いつけず、状況は日々悪化していっているのが現実なのです。
 思えば、ユーロあるいはEUという発想は、富裕国や新興経済諸国を一つの経済圏に統合することで、全体的な経済最適化を図るというものでした。賃金の安い地域には、ドイツなどが直接投資を行い、富裕国の消費市場向けの製品を作る。徐々に新興経済諸国の所得水準が上がってくると、富裕国の金融企業が融資を拡大し、住宅ローンなどの金融サービスで儲けるという構図でした。
 しかし、巧くいっているときはいいのですが、現在のような危機的状況に至ると、互いに足を引っ張り合い、身動きが取れなくなってしまうわけです。
 もしも各国がユーロに縛られていないのであれば、それぞれがある程度の保護主義と、財政政策と金融政策を実行することで、それぞれが勝手に立ち直ることが可能なわけです。もちろん、バルト諸国や中東欧諸国の中には、破綻する国も出てくるでしょうが、現在のように「全体的に沈む」という状況は避けられます。
 かつてのソ連と同じく、わたしたちは現在、「壮大な歴史的実験」の結末を目撃しようとしているように思えてならないわけです。

EUがこんな状況にも関わらず「アジア共同体」とか言っている連中の頭の弱さに絶望感を覚える人は、↓このリンクをクリックを。

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