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 最近、吃驚した話。
 千葉県に住む知り合いが読売新聞取っているのですが、毎週土曜日にローカル(船橋)情報のチラシが一枚挟まっているそうです。そのチラシには、「今週のベストセラー」として、一週間に売れゆきが良かった本ベスト10が紹介されています。
 そして最新版(7月25日版)に掲載されていたベストセラーは・・・。

1位 1Q84 BOOK1(村上春樹) そりゃそうでしょう。
2位 1Q84 BOOK2(村上春樹) そりゃ(ry
3位 大正野球娘。(神楽坂淳) おいっ!
(略)
6位 完全にヤバイ!韓国経済(三橋貴明/渡邉哲也) 
(以下略)

 な、なにぃっ!!! な、なぜっ!
 ・・・いや、自分も書いておいて何ですが、何でこんなに売れているんでしょう、ヤバ韓2。

 その韓国経済ですが、唯一の成長要素と言ってもいい政府支出の限界が早くも見えてきました。韓国は昨年の十月時点から国債札割れを起こしていましたから、それを思うと「明博君、頑張った!」と言いたくなります。

起死回生の韓国経済、「点滴」外せばダブル・ディップ?
http://japanese.donga.com/srv/service.php3?biid=2009072974128
 李明博(イ・ミョンバク)大統領は27日、「出口戦略(Exit Strategy)は時期尚早だ」とし、拡張的な財政政策の基調を年末まで維持するという考えを示したが、財政支出の余力が底を付いた状態であるため、韓国経済が下半期に「ダブル・ディップ(一時的に景気が反騰するかに見えたが、再び下降局面に陥る現象)」に陥るのではと懸念する声が出始めている。
 政府は第2四半期(4~6月)に前期対比2.3%となった国内総生産(GDP)の伸び率が第3四半期には0%台に下落する可能性が高いと見て、景気回復基調を維持していくための対策作りに苦心している。
 企画財政部の高官は28日、「2四半期まで経済成長をけん引してきた財政支出の余力がほとんど底をつき、経済成長率が第3四半期には1%を割り込む可能性を排除できない」と述べた。李大統領が経済回復の努力を持続するため、出口戦略の留保まで明らかにしたものの、経済成長率の急落が目に見えている中で、取り得る政策がなかなか見つからないというのが政府のジレンマだ。
 政府は、主要事業費257兆7000億ウォンの65%を上半期に支出した。下半期には希望勤労事業など既に予定されている事業に財政が投入されるだけで、財政の追加投入は現在としては不可能だ。 (後略)』

 結局のところ、貿易依存度((輸出+輸入)÷GDP)が八割(※2008年)を超すほどに、極端に外需依存が進んでしまった韓国は、政府支出で経済を下支えしつつ、外需回復を待つ他に対処法はなかったわけです。
 ヤバ韓2の後半で戸締役様が書いていますが、97年のアジア通貨危機、その後のIMF管理を経て、韓国経済は完全に「グローバル経済」にビルトインされてしまいました。
 韓国の家計の金融資産は、2008年末時点で1兆1690億ドル(110兆円)。
 それに対し、中国がおよそ510兆円で、日本が1410兆円。しかも、中国の家計の金融資産の七割が現預金、日本も過半が現預金です。韓国の現預金の割合は不明ですが、それ以前に額が極端に少なく、IMF管理の恐ろしさをまざまざと感じさせてくれます。
 韓国が今後の政府支出を、国内マネーだけで賄うのは、まず不可能でしょう。(まあ、中国も現預金が多い割に、国債札割れ起こしていますが)
 
 さて、中国の方は韓国同様に「政府支出」による景気下支えをしつつ、民間銀行に「資金を幾ら幾ら、融資せよ」と命じることで、民間投資へのドーピングを続けています。ところが、民間銀行が「命令」に従い、融資した金の過半が不動産と証券市場に流れ込み、実体経済と極端に乖離したバブルが進行しているのはご存知の通り。
 話はユーラシア大陸の反対側に飛んで、またまたドイツですが、同国の「難しい名前」の財務相シュタインブリュック氏は、自国の銀行に以下の内容の書簡を送ったそうです。
銀行は適正条件で融資するように
 ECBは現在、政策金利を1%に引き下げたままで、同時に6月だけで約59兆円の1年物資金をユーロ圏(ドイツじゃないです)の銀行に供給しました。ところが、各銀行の融資残高は横ばいを続け、企業にお金が回っていません。
 なぜユーロ圏の銀行が融資を拡大しないのかといえば、理由は中国同様に、二つあります。

■需要縮小と債務返済優先で、民間の資金需要がそもそもない。
■銀行側が(特に対中小企業融資について)不良債権化を恐れ、貸出基準を厳格化している。(いわゆる貸し渋り)

 中国の場合は、共産独裁国の強みで、
いいから、幾ら幾ら融資しろ!
 と命じ、銀行が従った結果、不動産と株式がバブル化していますが、ドイツは同じことはできません。いわゆるクレジット・クランチが進行する中、ドイツ(及び他のユーロ諸国)は財政支出でGDPを下支えし続けるしかないわけです。
 何しろ、日本人には慣れっこの、
ゼロ金利かつ中央銀行が金をばら撒いても、誰も借りない。銀行も貸さない
 という状況、すなわちバランスシート不況は、ユーロ諸国はほとんど始めて体験するわけです。シュタインブリュック氏も、さぞや面食らっていることでしょう。
 ユーロ圏は、現在、銀行が不良債権の拡大と追加処理の必要性に迫られ、苦境に陥っています。(と言うか、いい加減にストレステストをやるべきなのですが) しかし、銀行の貸し渋りを放っておくと、企業倒産の拡大と失業率の更なる上昇に見舞われるわけです。
 この二律背反。EU議長国スウェーデンのボリ財務相は「欧州景気の明確なリスク」と表現しています。

 すでに、各国の財政支出拡大により、ユーロ圏では長期金利の上昇とユーロへの信認低下懸念が生じています。ECB(欧州中央銀行)
のトリシェ総裁は、各国に対し、
歳出を絞るべきだ
 と発言していますが、欧州諸国の政府側にしてみれば、
冗談言うなっ!
 という感じでしょう。
 財政政策は各国担当、金融政策はECB担当という「ユーロの矛盾」が、露骨に顕在化し始めたわけです。


トリシェ総裁、そりゃ無茶だよ!と、欧州諸国の政府に同意してしまった人は、

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