株式会社経世論研究所  講演・執筆依頼等、お仕事のご依頼はこちらから
三橋貴明のツイッター  はこちら

人気ブログランキング に参加しています。

新世紀のビッグブラザーへ blog

人気ブログランキングへ

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
『ギリシャと地方創生①』三橋貴明 AJER2015.6.16

https://youtu.be/kDM_C2YUqHU

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

   


  本日23時からFMフジ「なんでもカウンセリングYou&Me」に出演します。
http://jocr.jp/blog/nandemo.php


 さて、ギリシャ情勢がいよいよクライマックスに向かおうとしています


 改めてギリシャの置かれた立場を確認してみましょう。

 ギリシャに対し、EU側は金融支援を11月末まで延長し、総額155億ユーロ(約2兆1400億円)を支援する提案をしています。但し、当然ながら付加価値税増税(≒消費増税)と年金支給額削減、年金受給年齢引き上げとうの緊縮財政が条件です。


 ギリシャのチプラス首相は、ご存知の通り「反緊縮」を公約に掲げ、政権を握ったSYRIZA(急進左派連合)の党首です。EU側の要求を呑むと、完全に「公約違反」という事になり、恐らく政権を維持できなくなるでしょう

 というわけで、チプラス首相は27日にテレビで演説し、
ギリシャは緊縮策の継続をEUなどから強要されている。国民の意思に逆らう要求に対して回答を迫られている」
「国民は(EU案による)脅迫から自由に決断すべきだ」
 と、「国民投票」に打って出ることを呼びかけたわけでございます。


 要するに、チプラス首相は「匙を投げた」という話でございますね。今回のギリシャの国民投票ばかりは、ナチス式に「間接民主主義」を無視するために、国民投票に打って出た、という話ではないと思います。

 国民投票は7月5日に実施するとのこで、チプラス首相は今月末の支援期限の延長をEU側に求めました。


 それに対し、EU側は猛反発。流れは一気に「ギリシャのデフォルトと、ユーロ離脱」の方向に動き出しました。


EU、ギリシャ支援の延長拒否…国民投票も
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20150628-OYT1T50009.html
 ギリシャのチプラス首相が欧州連合(EU)などによる金融支援を巡り、来月5日の国民投票に向けて今月30日に迫る支援期限の延長を求めたことについて、EUのユーロ圏19か国財務相会合は27日、ギリシャ側の要求を拒否することを決めた。
 EUはすでに提示している構造改革案をそのまま受け入れるよう求めており、ギリシャのデフォルト(債務不履行)危機は、期限を目前に重大な局面を迎えた。

 ブリュッセルで記者会見した財務相会合のデイセルブルーム議長(オランダ財務相)は「EUとして最大限に譲歩した提案をギリシャは拒否して国民投票を表明した。支援期間を延長してもギリシャの状況は良くならない」と述べ、ギリシャが申し入れていた数週間の延長を拒否したことを明らかにした。
 EU側が事実上、ギリシャの国民投票を認めない姿勢を示したもので、ギリシャ政府は難しい判断を迫られることになった。(後略)』


 ユーロ圏財務相会合のデイセルブルム議長(オランダの財務大臣)は、ギリシャの国民投票表明について、
交渉のドアを閉じた
 と、批判しました。


 支援延長も国民投票も拒否されたとなると、ギリシャのデフォルトを回避する手段はたった一つ。チプラス首相が「政治生命」を賭けて、公約違反の緊縮受け入れを表明するしかありません。ポピュリスト的傾向が強いチプラス首相に、それができるかどうか。

 というか、それをやりたくないからこそ、「国民投票」と言い出したわけです


 ある意味で、ギリシャにおける民主主義と国際協定によるグローバリズムの争いが頂点に達しようとしているわけです。ここでいう「民主主義」は、本来のデモクラティア(民衆の支配)という意味で、あまりいい意味で使っていません。

 それにしても、チプラス政権が強引に国民投票に突っ込むと、まさにデモクラティア発祥の地において、世界初の「デモクラティア 対 グローバリズム」の決戦が行われることになるわけで、皮肉な話でございます。


 ギリシャ国民にとって、失業率26.6%(直近)であり、すでにGDPの四分の一を失うデフレに苦しめられている中、更なる緊縮財政を求めるEU諸国は「悪」に見えるでしょう。

 逆に、債権者側であるEUにとっては、カネを返せない立場でありながら、緊縮財政を拒否するギリシャ国民が「悪」に見えることでしょう。

 結局のところ、国際協定(リスボン条約やマーストリヒト条約)で各国の主権を縛ったうえで、政府や民間の「カネの貸し借り」を自由化するという発想に無理があったのです。ユーロ圏が一つの国になったならともかく、現実には異なる主権の集合体なのでございます。


 ギリシャの事例は、国際協定(TPP含みます)で各国の主権を縛るという発想が、中長期的には成り立たないという「現実」をまざまざと見せつけてくれるのです。


本ブログで「世界が見えてくる」と、ご評価下さる方は、

↓このリンクをクリックを!
新世紀のビッグブラザーへ blog

人気ブログランキングへ
◆本ブログへのリンクは以下のバナーをお使いください。

新世紀のビッグブラザーへ blog
◆関連ブログ

三橋貴明オフィシャルブログ「新世紀のビッグブラザーへ blog」Powered by Ameba

◆三橋貴明関連情報

Klugにて「三橋貴明の『経済記事にはもうだまされない』」 連載中

新世紀のビッグブラザーへ ホームページ はこちらです。