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『2016年第一四半期を振り返る(後篇)①』三橋貴明 AJER2016.4.26(9)

https://youtu.be/zOAOYTdAZyY
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 最近、日本銀行の黒田総裁や岩田副総裁に同情したくなってしまうのですが、なまじ2013年4月、14年10月と金融市場の「期待」を高めることに成功し、大幅な円安、株高が(一時的に)進んだため、結果的に過剰な期待が金融政策に寄せられてしまいました


 安倍政権が、あるいは安倍総理が日銀の二度の"成功"について、いかに受け止めたのか。少なくとも、財務省は日銀の"成功"について、緊縮財政強行のネタの一つとして利用したのは間違いないでしょう。

 わたくしは、2013年時点で、それまでは「デフレは総需要の不足」と認識していた政治家が、ある日、突然、
「デフレは貨幣現象でしょ。実際、日銀の金融緩和で大幅な円安になった。円安になれば輸出が増えるし、株高の資産効果で消費が増えるから、デフレ脱却できる」
 と、言い出したのを何度か目撃しました。財務省の「ご説明」により、デフレは総需要の不足と認識していたはずの政治家がひっくり返り、「おカネ発行でデフレ脱却」という不完全なソリューションが拡散し、14年度以降の超緊縮財政への足場が築かれてしまったのです。


 デフレは貨幣現象の「貨幣」が何を意味しているのか、明確な定義を示してくれたのは、岩田規久男教授ただ一人(マネタリーベースだそうです)ですが、現実にはマネタリーベースを200兆円増やしたにも関わらず、インフレ率は直近で▲0.3%


【日本のマネタリーベース(左軸)とインフレ率(右軸) 】

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_52.html#MBCPIMar16


 デフレは定義不明な貨幣現象ではありません。総需要の不足です

 上記の認識の間違いは、世界共通であり、「デフレおカネを発行すれば脱却できる」すなわち、金融政策のみで脱却可能という認識が浸透していました。理由は、
「金融政策を拡大すると金利が(名目でも実質でも)下がり、設備投資が増えるはず」 
 もしくは、
「金融政策拡大で期待インフレ率が上がると、将来的な物価上昇を予測した消費者が消費を増やすはず」
 という、何というか風が吹けば桶屋が儲かる「はず」論に基づいていたのです。 


 上記のレトリックは、
「企業は常に設備投資をしたい」
「消費者は常に消費を増やしたい」
 という前提のもとに成立する考え方です。現実には、国内需要が縮小している状況で、企業は金利がどうであろうとも設備投資を増やしません。理由は、投資利益率が低いためです。


「そんなことはない!」
 などと、反論する人は、きっと大学教授か何かで、象牙の塔にこもり続け、現実のビジネスをやったことがない人でしょう。


 あるいは、消費者にしても、実質賃金が増えず、貧乏になっている状況では、将来予想がどうであろうとも消費を増やしません。いや「増やせません」が正解でしょうが、いずれにせよ上記の理論は、供給が価格を創出するという、いわゆる「セイの法則」に基づいていました。経済学者の頭の中では、常に「需要はある」わけです。

 現実の日本は、あるいはデフレに陥った国では違います。デフレの国では企業は設備投資をしたくないし、家計も消費を増やしたくないのです。結果、需要は縮小します。

 当然ながら「政府の需要創出」が求められるわけですが、「デフレは貨幣現象」という奇妙なレトリックが蔓延した結果、日本は「金融政策+緊縮財政+構造改革」でデフレ脱却を目指すという意味不明な実験を行う羽目になり、失敗しました。


『「機動的財政出動を」日伊首脳会談へ、G7結束強調
http://mainichi.jp/articles/20160502/k00/00e/010/160000c
 欧州を歴訪中の安倍晋三首相は2日昼(日本時間同日午後)、最初の訪問地イタリア・フィレンツェでレンツィ首相と会談する。26~27日の主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)を前に、世界経済を下支えするため「今こそG7が構造改革の加速化と機動的な財政出動を辞さない強いメッセージを出すべきだ」と述べ、政策協調への協力を求める。(後略)』


 総理がどこまで問題の本質を理解しているのかは不明ですが、一応、世界的に「金融政策は限界。財政拡大が必要」というコンセンサスが取れつつあります。恐らく、発端はアメリカだと思いますが、スティグリッツ教授やクルーグマン教授が来日した以上、財政拡大という正しい政策を望む「誰か」がいるのは間違いありません(総理とは限りません)。

 無論、国際的に主要国が協調して財政出動に乗り出すことも重要ですが、それ以上に我が国にとって重要なのは「財政出動の中身」です。


 20年間も放置してきたインフラや技術への投資を、拡大方向に転じることができるのか。国民一人一人が、地元の政治家に声を届けてほしい、日本の今後の運命が決める五月が始まりました。
 

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