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『日銀の金融政策の限界①』三橋貴明 AJER2016.8.16(7)
https://youtu.be/k8aMqKCQZOA
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不動産業界におけるヒアリングによると、日本銀行のマイナス金利政策を受け、都市部の駅近マンション、それも「収益マンション」への投資が絶好調とのことです。銀行側も、収益マンションであれば、喜んでお金を貸してくれます。
不動産投資以外でも、銀行の貸出態度は緩和されています。現在の銀行は、大企業や中堅企業はもちろんのこと、中小企業に対してまで「バブル期並」にお金を貸したがっているのです。(それにも関わらず、設備投資がマイナスになっているため、問題なのですが)
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_53.html#DI
ちなみに、GDPとは消費、投資、純輸出の合計です。収益マンションの「建設」の場合は、建設サービスが生産されたという話になり、GDPは成長します。
それに対し、既存の不動産の売買では、GDPは増えません(多少、不動産サービスが生産されますが)。10億円の土地が15億円で売れ、売却者が5億円儲かったとしても、GDPは成長しないのです。
先日、発表になった16年4-6月期GDP速報値では、民間住宅が対前期比5%と、マイナス成長の回避に貢献しました。
問題は、中国の不動産関連で散々に語りましたが、
「誰も住まない、住む予定がないマンション」
を建設したとしても、GDPは成長してしまうという点です。GDPは建設サービスが生産された時点で拡大し、その後、建設されたマンションに人が暮らすか否か、あるいは賃貸に出されて収益が出るか否かは関係がないのです。
収益マンションの多くは、普通に賃貸され、投資者に利をもたらしています。
とはいえ、何しろ現在の日本はデフレーションが継続し、全体の需要は拡大していません。特に、企業の設備投資が停滞しています。
この状況で、金融緩和で日銀当座預金を400兆円越えまで積み上げ、更にマイナス金利政策。行き場のないお金が、投資先を求め、多少、調子が良い不動産に流れ込み、供給過剰にならないか懸念していたのですが、やはりなってしまっているようです。
『焦点:不動産に供給過剰懸念、マイナス金利で実需なき投資急増
http://jp.reuters.com/article/focus-real-estate-market-idJPKCN10U0R6
直近の不動産市場で、住宅や老人ホームなどの供給過剰に対する懸念が浮上している。日銀のマイナス金利導入後、潤沢な資金が建設原資として流れ込んでいるが、需要が相対的に弱く、空室率が急上昇してバブル崩壊のリスクが出ているためだ。
政府内には、マイナス金利政策による利回り曲線フラット化が投資の様子見を招いているとの分析があり、日銀の「総括検証」とその後の対応策に注目している。
<不動産業者からの警告も>
「過度な金融緩和は、投機に使われるだけ」──。ここにきて不動産業界の中で、こうした見方が目立ってきた。
少し前までは中国系外資の不動産投機が話題となっていたが、今は、国内でのマイナス金利が実需なき不動産投資を引き起こしているとの声が広がっている。オフィスビルや高級マンションなどの建設に投機的な動きも見られ、「不動産市場は異様な状況」(不動産業者)といった声もある。(後略)』
日銀のマイナス金利政策導入以降、新設の住宅着工数が急激に伸びています。過去三年間は、年間80万戸台だったのが、6月には年率換算で100万戸を超えたそうです。
しかも、マンションなどが建てられるのはいいのですが、メインの買い手であるべき中間層の所得がデフレで伸びていません。結果的に、最終的な需要(住居で暮らす、という意味)がないマンション建造が相次ぎ、空室率上昇のリスクが出てきました。
結局のところ、需要不足という根本的な問題に手を付けず、それどころか緊縮財政で需要不足を後押しし、その反対側で金融政策によりデフレ脱却を目指すという「歪んだアベノミクス」は、不動産市場に対してもリスクをもたらしてしまったことになります。
もっとも、解決策は明らかで、政府の財政出動により、
「不動産以外の投資先を創出する」
「実質賃金の安定的な上昇により、中間層の所得を引き上げる」
しかないわけです。
一応、安倍政権は財政拡大の方向に舵を切りましたが、間に合うかどうかは分かりません。
いずれにせよ、需要なき国において金融政策のみを拡大しても、様々な歪みを引き起こすのみで、実体経済(GDP)の安定的な成長はもたらさないのです。これが、過去三年以上に渡り継続した、日本国の「社会実験」の結末なのでございます。
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