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『国民経済は繋がっている①』三橋貴明 AJER2017.1.31(3)

https://youtu.be/KARKeRtEL4Q                      

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 昨日、ヒカルランドの講演にお越し頂いた皆様、ありがとうございました。面白かった?

 来週は、月、火、水、木、金、土と、六日連続講演・・・(土曜日は経済塾)。声持つのだろうか?


 さて、マクロ的に見ると、日本企業はこれだけ人手不足が進んでいるにも関わらず、労働分配率を引き下げ、内部留保を積み上げている状況です。


企業の内部留保が過去最高、給与に回らず春闘も期待薄
http://jp.reuters.com/article/employee-salary-idJPKBN16G09B?il=0
 企業の利益剰余金の蓄積である内部留保が、2016年末に過去最高の375兆円に達した。10年前の水準から135兆円増加したが、企業は人手不足にもかかわらず、利益を人件費に回すことはなく、16年末の労働分配率は43%台と過去最低水準だ。
 今年の春闘も賃上げに消極的な企業が多く、人手不足に伴う給与増はパート社員に限定されそうで、政府・日銀が期待する所得増を起点にした景気拡大は雲行きが怪しくなっている。(後略)』


 内部留保の多くを占めるのは、企業が保有する現預金です。

 というわけで、非金融法人企業の現預金の推移をグラフ化してみました。


【非金融法人企業の現預金(億円)】

http://mtdata.jp/data_55.html#naiburyuho


 自分で作って吃驚してしまったのですが、実は企業が現預金を貯めこむようになったのは、むしろ「第二次安倍政権発足後」なのです。


 1997年から2012年末まで、日本企業(非金融法人企業)は20.6兆円の現預金を増やしました。そして、13年から16年にかけ、日本企業の現預金の増加額は、何と39.9兆円

 安倍政権下の四年間に積み増された現預金の方が、橋本政権から野田政権期に増えた分よりも大きくなっているのです。


 上記からは、二つの事実が読み取れると思います。


(1) 安倍政権下の金融政策がもたらした円安により、グローバル企業を中心に「円建て利益」が確かに増えた。
(2) ところが、利益を稼いだ企業は、人件費や投資(※国内の投資)を増やさず、銀行預金を積み増し続けている。 


 すなわち、量的緩和により「円安」に持ち込み、企業のグローバルな価格競争力を高め(つまりは、外貨建てで安く売るということ)、企業が外国で稼いだ利益の円建て換算を膨らませたところで、労働分配率は上がらず、国民の給与が(デフレ脱却に)十分なほど増えるわけではない、という事実が証明されたのです。

 また、確かに一時的に法人税は増えましたが(グローバル企業の円建て利益が増えたため)、為替レートという物差しを変えたところで、実質輸出が増えたわけではありません。しかも、
「安定的に輸出が増えるか?」
 と、経営者が考えたとき、「応!」と答えられる人はいないでしょう。そもそも、現在の世界は貿易拡大率が経済成長率を下回る、スロートレードという問題を抱えています


 安倍総理は、恐らく「円安で企業の利益が拡大すれば、人件費が増え、国内の投資が増え、デフレ脱却できる」と考えたのかも知れません。何しろ、岩田規久男教授の「量的・質的金融緩和の波及経路」には、
「円高修正⇒輸出増加⇒設備・住宅投資増加⇒需給ギャップ縮小⇒生産増加⇒雇用需要増加⇒賃金上昇」
 という、円安から人件費上昇までの「波及経路」が書かれているのです。今となっては、まさに「絵に描いた餅」としか表現のしようがないのですが。

 結局、デフレ期にトリクルダウンを期待したところで無駄、という事実が、過去四年間で証明されたのです。


 円安で企業の利益を膨らませたところで、それが国民にしたたり落ちる(トリクルダウン)ことはありません。特に、大々的な「人件費引き上げ減税」を実施するわけでもなく、グローバル株主資本主義が蔓延した状況では。


 ちなみに、法人企業統計(金融業、保険業除く)によると、2015年度に国内企業は純利益のうち、22兆2千億円を株主配当に回しました。何と、22兆の配当とは、リーマン・ショック前のピークの06年度と比べても、6兆円(37%)多い数字です。


 安倍政権は、別に配当制限の規制をかけているわけでも何でもありませんから、こうなるに決まっています。

 まとめると、安倍政権は金融政策により円安に誘導し、企業の利益を拡大したものの、利益は人件費ではなく「現預金」と「配当金」に回ったというのが、過去四年間の「結果」なのです。 


 円安は、輸入物価上昇と実質賃金下落という形で、国民にダメージを与えます。我々に損をさせ、増えたのは現預金と株主への配当金(及び自社株買い)だけというのが「結果」なのでございます。


 この状況で、総理や閣僚が、
「企業は人件費にお金を回してほしい」
 などと言ったところで、アリバイ作りとしか思えません。


 我が国は、企業の利益の多くが人件費に回り、労働分配率を引きあげる形の「構造改革」が必要な局面です。

「人件費を引き上げる形の構造改革を!」に、ご賛同下さる方は、↓このリンクをクリックを!    
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