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『プライマリーバランス黒字化という毒針(前篇)①』三橋貴明 AJER2017.7.18

https://youtu.be/TrM8icaF7DU
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時局 2017年 08 月号 」に、連載「三橋貴明の経世論 デフレーションはなぜ起きる?(中編)」が掲載されました。


 わたくしが外資系IT企業で働いていた頃、つまりはITバブル真っ最中でございますが、代理店営業は毎四半期「押し込み」に懸命になっていました。つまりは、四半期の終わりに代理店に在庫を購入させ、レベニュー(売上、という意味で使っていました)を確保するわけです。


 バカバカしい話ですが、四半期末に代理店に在庫を押し込み、数字を作り、期が明けると在庫を引き取るといった取引も横行。しかも、酷い営業になると、期末に在庫を押し込み、コミットメントを達成し、ボーナスを受け取り、「後は野となれ山となれ」とばかりに辞めてしまうという、とんでもない連中も少なくありませんでした。


 そもそもの目的は、顧客のニーズを満たす製品を供給し、事業を継続していくことであるにも関わらず、「短期決算」の思考に侵され、将来的な損失(在庫の引き取り)を承知の上で、強引に製品を押し込む。もはや、何のために事業をしているのか分かりません(「巧くやる」ことができる、一部個人の短期のカネのためですが)。


 ちなみに、その会社はわたくしが辞めた後も、世界的に粉飾決算を繰り返し、チャプター11となり、資産はバラバラにされ、各社に売却されました


 末期には、会社のトップが「利益!利益!」となってしまい、経理部が異様な力を持つ状況になりました。何しろ、見積もり一つ出すにも、経理部長の入念なチェックを経る必要があったのです。


 懸命にマーケティングや営業活動を続けても、経理部長の判断一つで、ビジネスが吹き飛ぶ。組織は硬直的になり、誰もが指示待ち的になっていきました。


● 目標の混乱
● 経理組織のパワー肥大化


 まるで、どこかの国を見ているようではありませんか。


              

 

基礎的財政収支 赤字幅、20年度8.2兆円 黒字化目標遠く
https://mainichi.jp/articles/20170719/ddm/008/020/156000c
 内閣府は18日の経済財政諮問会議に、中長期の財政試算を提出した。財政健全化の指標である基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の赤字幅の見通しは、2020年度に8・2兆円程度とした。1月の前回見通しの8・3兆円からほぼ横ばいで、20年度のPB黒字化という目標の実現は遠いままだ。
 PBは、国と地方の政策経費を借金に頼らずどれだけ賄えているかを示す指標。今回の試算では、経済成長率の見通しを下方修正したことで税収が減少する一方、歳出改革が進んで政策経費が抑制されるとして、若干の改善を見込んだ。
 18年度の国内総生産(GDP)に対する赤字の比率は、前回と同じ2・4%程度と試算。政府は18年度の対GDP比の赤字を1%程度に抑える中間目標も掲げているが、達成は厳しい状況だ。(中略)
 「骨太の方針」では20年度のPB黒字化に加え、GDPに対する債務残高の比率を安定的に引き下げるという新指標が加わった。借金を減らさなくても経済成長でGDPが拡大すれば低下が見込めるため、財政再建目標先送りへの布石との見方も出ている。 』


 そもそも、この記事を書いた大久保渉が勘違いしているのは、「財政健全化」とは、PB黒字化を意味しないという点です。財政健全化とは、政府の負債(債務)対GDP比率の低下です


 PBが黒字化しても、政府の負債対GDP比率が上昇すれば、財政悪化なのです。強引なPB黒字化を目指し、デフレが深刻化し、名目GDPが縮小すると、普通にあり得る事態です。


(1) 財政健全化とは、政府の負債対GDP比率の引き下げであり、PBの黒字化ではない
(2) PBが黒字化したとしても、デフレ深刻化で名目GDPが縮小し、政府の負債対GDP比率が上昇すれば、財政の悪化


 上記が事実であるにも関わらず、新聞はPB黒字化目標の未達成を「危機」として煽る。結果、強引なPB黒字化(在庫の押し込み!)が推進され、デフレが深刻化。名目GDPが成長せず、財政は却って悪化する。


 とはいえ、財務省の権力はあまりにも強く、政治家も、他の官庁も逆らえない。新聞社が緊縮財政を批判すると、国税を飛ばされる。


 財務省の内部は内部で、緊縮に反対する官僚が左遷され(されているそうです)、緊縮派のみが権力を握り続ける。緊縮派のトップが、緊縮派を引き上げ、永遠に「バカの再生産」が続く。


 それにしても、
「GDPに対する債務残高の比率を安定的に引き下げるという(正しい財政健全化の)新指標が加わった」
 ことを受け、新聞が、
「財政再建目標先送りへの布石との見方も出ている。」
 と、書くわけです。我が国のジャーナリズムの知的レベルがどれほど低いか、絶望感を覚えるほどです。


 我が国はこのままでは、財政をめぐる「知的貧困」により亡国に至ります


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