2015年の経済の歯車を狂わせた最大の商品は「原油」であります。理由はともかく、一時は60ドル台であった原油価格が夏のガソリン需要期=原油価格が上がりやすい時期に40ドルまで下落し、それに引きずられるように金銀銅の価格も安値で放置されました。

まだ10月が始まったばかりですので2016年の予想をするのは早すぎるのですが、市況を見ている限り、資源相場は底打ち反転の兆しが見えてきました。仮にこの傾向が続けば物価動向への注意も必要かもしれません。

一つは中国の落ち着きであります。上海株式市場も比較的堅調に推移するとみています。理由はリスクオンのスイッチが世界で灯っているからです。市場は時としてセンチメンタルであり、具体的な事象に基づく理論的な動きをすることもありますが、こじつけが多いことも事実です。

言い換えれば、世の中の一定の動きに対してある事実が生まれるとその風潮に乗る様な解釈をしやすいとも言えます。よって、リスクオフの風が吹いていた中国の市場では何をやってもダメな空気が出来てしまったのです。中国元の切り下げもそんな嵐の真っただ中で強行したので失敗しただけであります。

ただ、その間に上海市場に於ける個人の信用取引の清算が進み、過度なボラティリティが収まりつつあることで市場が落ち着きをみせていることは風潮の変化とも言えます。

次にアメリカのシェールオイルであります。ロンドンで今週開催されたOil & Moneyという業界のトップクラスが集まる会合でアメリカシェールに対する銀行の貸し出し姿勢が厳しくなっていると指摘されています。シェールの掘削コストは技術革新で現状の市況でも利益は出るようになりつつありますが、銀行が貸し渋り始めたとすれば原油の需給は引き締まることになります。ちなみにシェールオイルのリグ数は先週末(10月2日)は前週比26減の614で1年前と比べると61%も減少しています。

更に気になるのはロシアがISに対する攻撃を強化しているのですが、戦乱は石油価格の上昇バイアスがかかります。今回はその動きがどうもきな臭く感じます。プーチン大統領は自国経済の為にオイル、ガス価格が上昇するよう仕向けるはずですからこの戦乱が思わぬ資源価格上昇の引き金を引く可能性が出てきました。またロシアはアラブ諸国と石油供給量について今月末に会合を開くとしています。

原油価格はチャート的には反騰が続き、NYマーカンタイルでは8日に一瞬50ドル台を回復しました。

併せて金の相場つきも変わってきています。これは産金コストは今後、改善どころか更に大きく跳ね上がるとみられており、来年末にかけて1700ドル台回復の声も出ています。理由は金がいよいよ掘りにくくなってきたためです。今までアメリカが金利を上げるかもしれないという懸念で売られ続けましたが悪材料は織り込み済みでむしろ実態相場に入る様相です。

最後に中国はダメでもインドはあるさ、という長期的期待感を紹介しておきましょう。インドが世界最大人口国になるのはさほど遠くない時期でありますが、この国は資源があまりありません。また、ITという高いレベルの産業が先に有名になってしまいましたがいわゆる軽工業が今後普及しながら中産階級が増えて発展を遂げていくとみています。2015年度はインドは新興国で唯一7%以上の高成長率を保ちそうですし、中国のような一人っ子政策をとっていませんでしたから若者が非常に多い国で活力もあります。

これらを考えていけば資源価格が今ほど下落した水準にあるのは価格循環のボトムにあると断言してもよく、何時どのきっかけで上昇に転じるか、というレベルの話であります。

資源価格の上昇は日本にとってはインフレにつながりやすいのですが、同時にドル安相場に転じるシナリオを描けますので円高になれば輸入物価は相殺されることになろうかと思います。

12月にもなれば専門家の来年の予想が出回ると思いますが、市場をみている限りその傾向は既に先取りしているとも言えそうです。

今日はこのぐらいにしておきましょう。

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ではまた明日。