秋分の日を境にして、夜の時間がどんどん長くなります。農家で、秋の夜なべと称して夜に仕事をしました。草履を作り縄をなう仕事などです。
江戸時代の庶民の生活を描いた、直木賞作家の山本一力さんの小説に良く出てくる場面です。よなべとは、夜に鍋をかけ夜食をとりながら仕事をしたことから来ているとか・・・。
武士とか僧侶などの学問を志す人は、学問にも精を出したようです。あんどんの灯りを頼りに読書をしたようです。
また、馬肥ゆる秋でもあります。夏の暑さで落ちた体力を秋に取り戻したいものです。
さて、涼風に誘われて、風流な夜の散歩に洒落たとき、何処からか漂う金もくせいの香りにうっとりするのもこの季節です。
夜の風に乗り漂う、そこはかとなく匂う金もくせいの匂いです。不思議な事に、その匂いの場所が分かりません。その匂いの方向も分かりません。
す~と来て、す~と逃げる風に漂う匂いだからと、理屈では分かっていても、その場所を突き止めたくなる。しばし、立ちどまり、眼を見張りキョロキョロしてみる。しかし、分からない。
そこで、翌朝、その匂いを感じた、あの夜の場所あたりに出掛けて見る。やっと見付ける。あ~ここだったのかと、ささやかな幸せを感じる。
しかし、その金もくせいの傍に寄っても、あの夜の匂いは余り感じない。その理屈は分からないけれど、夜は匂いを増幅するように思えてならない。