我武者羅に生きろ
脇目も振らず、一心不乱の「我武者羅」な姿で、滴り落ちる汗さえ拭うこともせず、物事に取組んでいる人が好きです。
そこには、男も女も年齢や属性など何も関係なく、ただ、人の姿としてリスペクトを呼びこす美しさが漂います。
頭(思考)・心(感情)・身体(行動)のなかで、時に能書きを知識として振りまく方がいらっしゃいますし、ダダを捏ねてしまった子供のように論理的な思考が出来ぬ方もいらっしゃいます。
それを「間違いだ」と否定するつもりは微塵もないのですが、この場合、思考も感情もエネルギーの矢印が自分以外のモノに向けて放出されているといえますが、行動という現実の力の前には、一溜りもなくなることがあるものです。
「我武者羅」な姿とは、一つの目的に向かって、勢い込んで向こう見ずに歩んでいる姿ですので、得てして客観性を忘れ、主観的になりがちで、大局を見れずらくもしてしまう要素があるため、どこかに危なっかしさが付き纏うものだともいえます。
それでも行動の大切さを思う時、どんなに素敵で素晴らしい思考と感情があったとしても、それならば世界中の人々が笑顔で幸せに溢れる筈であるにも関わらず、現実的にはそうならぬことで実証されるようにも思い至り、そんな極めた思考と感情が行動の後押しとなっていることが一番のことで、例え、極めた思考と感情が無くとも、行動にはそれを凌駕するだけの力が秘められていると言えるのではないでしょうか。
我武者羅の色んな由来
我武者羅の言葉が出来る由来はいくつかの説があるそうです。
「我武者」の言葉に接尾語「ら」が付けられ、
漢字の「羅」を当て字とされ「我武者羅」となったとする説。
「我武者」と書くことから、「我が強いわがままな武士(武者)」とする説。
「我」に「むしゃくしゃする」の「むしゃ」が付いたとする説、
「我無性(がむしょう)」が転じたとする説。
「我貪り(がむさぼり)」が転じたとする説。
我「自分・自我」+武者「武芸に携わることを任務とする人」+羅「網の目のように並べ連ねること」
勝手訳をするならば、武士が道を極めるために自分を追い込み修行を重ね続けるなかの姿勢とでも言い表すことが出来るのでしょうか・・・
突き抜けられない
芯に冷たさを含んだ夜の秋風に吹かれながら駅を目指して歩いていると、ひとりの若いストリート・ミュージシャンに出会うことになりました。
正に掻き毟るようにコード弾きをしているアコースティックギターのチューニングは少しズレていて、彼の歌もお世辞にも上手とはいえるものではありませんでした。
俯き加減に声を張り上げて歌われているのは、どうにもならない・答えの見つからない「なぜ」でしたが、彼の歌声はそのまま彼の心の中の叫び声のようにも感じていました。
何人かが離れた場所で歌声を響かせていましたが、彼の周りにはひとりもオーディエンスはいませんでした。
少しだけ離れた位置に立ったまま耳を澄まし続けていると、バシンと音がして目を開ければ、彼のカッティングに耐えられなくなったギターの弦が切れてしまっていました。
チューニングが狂ってしまっていた上に4弦か5弦のベース音が鳴る弦が切れてしまったことで、しばらくはそのまま歌い続けていた彼も、途中で歌を止めてしまいました。
誰も聞いている人がいないから止めたのか、チューニングが狂って伴奏が出来ないから止めたのかボクには分かりませんでしたが、彼のそんな姿を見て、停めていた足を駅に向けて動かしだすことにしました。
我武者羅LOVE
駅のコンコースに着くまでに背中から彼の歌声が聞こえることはありませんでした。
東海道線に乗り込み、流れる夜の車窓を眺めながら、遠い昔にあった同じシュチュエーションを思い浮かべていました。 ひとつだけ違っていたのは、その人はギターの弦が切れても、歌い続けたことでした。
そして、どれ位の月日が経ったのかは忘れてしまったのですが、その人がTVに出て歌われ、さらにそこからしばしの時が経ち、「あの時の彼だ」と、インタビュー記事を眺めながら忘れていた日のワンシーンをハッキリ思い出す出来事が昔にありました。
我武者羅・・・正確には「一心不乱」の方がピッタリするのかも知れないとも思うのですが、記憶の片隅に残り続けていたほんの一瞬の出逢いが、時を経て彼の住むステージが変わったことを知るも、それは結して不思議ではないほどの何かの力に溢れていたことを感じたのでした。
そんな彼を心の中で応援し続けていましたが、表舞台から消えて行ってしまう時には、はじめてであった時の我武者羅なエネルギーは消え失せ、要領とは言いませんが、どこかに余裕のある嘘っぽさを感じてしまい、気になる存在ではなくなっていきました。
我武者羅になれることと出会えることは少ないのかも知れませんし、行動にそれを移せることも稀なことなのかも知れません。
それでも、そんな心姿を失うことなく過ごしたいと思うのです。
行動が伴えなくなってきつつある日々ゆえになお更そんな風に思うのかも知れませんが、いつまでも我武者羅LOVEで汗を流しながら過ごしたいと思う今日この頃なのでした。
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