the feeble silver light in the deepred sorrow 13 | - 堕ちていく心に贖罪を描いて -

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そして、ここからリオンとフュリツェイドの快活なハント解説が展開していく。

「コチラ、池の前の階段ではヴィシャスくんが順調にコンボを繋いでおります」

「今のは三体同時っ!三体同時ですっ!!お見事っっ!!」

「おーっと!串刺し、からの~っ!」

ヴィシャスの長剣に貫かれた山猫型がそのまま高く振り上げられると、

刃を離れ緩やかな弧を描きながら中央にある大きな池の中に放り投げられた。

「ダイナミックなスローイン!!」

「二人とも頑張れー、アッハハ~」

フュリツェイドは片足を胸の前に抱えるスタイルで、ヴィシャスとリーファに声援を送りながら余裕の鑑賞。

「一方のリーファも絶好調!軽いフットワークから繰り出す俊敏な攻撃で敵なし!」

「双剣・メディア&エレクトラから生み出される美麗な剣技はもはや芸術!

情けなど一切ないその刃の餌食となったヴァンプは例外なく全て塵と化すのです!」

「恐ろしい気迫で戦い続け、プロとしての意地を見せつけています!」

乗っている枝から落ちそうになる程身を乗り出しながら、

リオンとフュリツェイドはエキサイティングな彼らのハントの様子に熱狂している。

「さて、これはどう見ますか。フューリさん」

「はい、それぞれのサヴェッジの特徴と弱点を捉えるいいアプローチじゃないでしょうか。

スピードのあるリーファの持ち味が遺憾なく発揮されていますね、アッハハ~」

「実況はいい!解説もいい!!」

しつこく集まるサヴェッジを次々に斬り捨てながら、リーファが鬱陶しそうに抗議した。

「いいね~、人のハントをゆったり鑑賞。誰かポップコーン持ってない?」

 

 

 

次々と尽きることなく溢れ出る厄介な敵をものともせず、

冷静に長剣を振るい立ち回るヴィシャスの姿にリオンが目を丸くする。

「それにしても、ヴィシャスくんなかなかだね。かなり戦い慣れしてる感じだけど」

「フューリの言う通り、かなりの腕利き。彼ならオレもスカウトしたいかも」

リオンがそう関心していると、フュリツェイドはそれをまるで自分が言われたことのように得意げに笑う。

「でしょ、リオリーならそう言うと思ったよ。すごいよね、どうやって覚えたんだろ」

「なんか・・・オレらとは、戦う理由?みたいなのが違う気がする・・・」

「え、そう?じゃあボクたちの場合は?」

「ん~、そこにヴァンプがいるから狩る。困ってる人たちがいるから」

「それがクロスだよね」

「リーファさーん!」

唐突にリオンが必死に立ち回り続けるリーファに呼び掛けた。

「彼、思ったよりやるみたいよー」

「これはもしかしたらヤバいかもねぇ~、リーファさん」

からかうような口調でわざとらしく言って、リオンはシシシと笑ってみせる。

「無駄口叩いてないでしっかりカウントしろ!数忘れたら承知しない!」

 

 

 

「あーっと、リーファさん逃げられました!らしくないミスです!」

リーファが一撃を加えたものの仕留め損ねた一頭の狼型が彼女から素早く離れ逃げ出したかと思うと、

それはリーファとは離れた場所で集まる群れを蹴散らしていたヴィシャスの攻撃範囲に侵入してきた。

しかしヴィシャスは飛び込んできた獲物を視界に捉えたにも関わらず、

簡単に刃の届くその恰好のターゲットに何故か手を出そうとはしない。

その一頭を追い大きく跳んだリーファが、一度は逃がした獲物にすかさず強力な追撃を加え、

結局追加のワンカウントを得る。

そして沈んでいた身体を起こし真っ直ぐ立つと、リーファはヴィシャスを強く睨みつけた。

「どうして殺らなかった。今のは討てたはず」

振り上げていた長剣を一度下ろし、ヴィシャスはリーファへとスッと視線を流す。

「一度誰かの刃が当てられたものは俺の獲物ではない」

「・・・おかしな理屈を」

「俺に勝って俺を殺すんだろ・・・?」

そう言い捨てると、リーファに背を向けヴィシャスは再び凶悪な一群を捌いていく。

「無駄な余裕見せてると、後で後悔することになるよ」

あくまで冷静なその背中にリーファは鋭く警告を投げつけた。


 

 

「アッレ、よく見えない・・・・・・よっと!」

枝から降りたリオンが根元に転がる瓦礫の上へと着地した途端、

周囲で蠢いていたいくつもの不穏な影が彼のもとへと一斉に飛び掛かった。

サッと高く跳び、リオンは向かってきた集団を頭上の枝に掴まり避けたものの、

その直後、数匹同時に跳び掛かられ、かわしきれなかった一体へと反射的に銃弾を撃ち込んでしまった。

「あ、しまった」

白毛の獣が遠く吹き飛ぶのを見て、リオンはボソリと後悔の言葉を口にした。

「リオン!」

無謀にも真正面から挑んできた命知らずを仕留めた瞬間、リーファがそれを咎めるように声を上げた。

「っと、つい。悪い悪い」

聞こえたその叫びにリオンはバツが悪そうに頭を掻いた。



- the feeble silver light in the deep red sorrow - chap.3 #3-3


今までのストーリー


- the feeble silver light in the deep red sorrow - chap.3 #1-1
- the feeble silver light in the deep red sorrow - chap.3 #1-2
- the feeble silver light in the deep red sorrow - chap.3 #1-3 前編
- the feeble silver light in the deep red sorrow - chap.3 #1-3 後編
- the feeble silver light in the deep red sorrow - chap.3 #1-4
- the feeble silver light in the deep red sorrow - chap.3 #1-5
- the feeble silver light in the deep red sorrow - chap.3 #2-1 前編
- the feeble silver light in the deep red sorrow - chap.3 #2-1 後編
- the feeble silver light in the deep red sorrow - chap.3 #2-2
- the feeble silver light in the deep red sorrow - chap.3 #2-3
- the feeble silver light in the deep red sorrow - chap.3 #3-1
- the feeble silver light in the deep red sorrow - chap.3 #3-2