p3ぶろぐ おかわり : 糸井正和経済経営研究所

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山に登りかけてる船のハナシ ~ 三菱重工造船事業の特損追加計上に思う

2015-05-10 12:34:56 | 企業・産業
GW明け後に飛び込んできたニュースは、芳しくないものでした。

三菱重工が、客船建造事業で追加の特別損失を計上したとのこと。会社のWebページに、前回前々回のようなプレスはまだ出てませんネ(5/10昼過ぎ時点)。
オリンパスの特損計上亀山社中の資本金がシャープになっちゃうハナシと併せて、そのままならGWの下げから下げ止まった相場に冷や水を浴びせかけるニュースになったかもしれません。
でも、米雇用統計の好結果で世界同時株高となったコトで、それも帳消し。
まぁ、運が良かったというところでしょう。

さてこの件では、11年間の客船建造事業の“空白”による技術の衰えが、大きな理由として挙げられています。
11年前までにノウハウを蓄積していた技術者は、退職や転職で去ったり、配置転換で他事業のノウハウを“上書き”していたのでしょう。

ただソレだけではなく、おそらくは世代間の技術承継の問題もあったのではないでしょうか。
同社の客船建造事業が空白期間に入る前、日本は既に相当期間、いわゆる「失われた20年」を経ていました。
その頃の採用抑制によって、現在(2015年時点)事業の中核を担うべき中堅世代が足りてないのは、多くの企業に見られる状況です。
バブル世代以前の社員が蓄積したノウハウの、“受け手”が足りないのですョね。
それでも事務系職種であれば、もともと技術進歩や事業領域の変化によってワークフローや扱うデータが時と共に変わっていきますから、継承が十分でなくとも、なんとかなったりします。
でも、客船建造みたいな“摺り合わせ”型産業のノウハウは、蓄積したものを継承していくコトが、より重要でしょう。
特に今回問題の2隻は、ほぼプロトタイプな一品モノのようで。“摺り合わせる”コト自体のノウハウが高度に蓄積されていないと、対応が難しいワケです。
ソレが現場で十分に継承されていなかったんではないか、と思えるのデス。

そうした状況が問題視されたのが、いわゆる「2012年問題」。
団塊世代が大量に定年を迎えた後、年金支給年齢に達することで社内に残った人材も去り、企業内に蓄積されたノウハウの多くが消失することが懸念されていました。
その際には、実質的な定年延長制度をそれまでより広く認めることで、問題の先送りが為されました。
ただそれにも、時間的限界は近づきつつあります。
一方で、アベノミクスによる景気回復傾向を受けて、採用が活発化。“受け手”の数の問題は、緩和されつつあります。円安を受けた生産の国内回帰の流れもあり、技術承継の確立には、むしろ好機と見ることもできるでしょう。

日本のモノづくり企業各社には、三菱重工の客船建造事業の現状を“他山の石”として、技術の棚卸しとその継承を、しっかりとやって頂きたいトコロです。

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