p3ぶろぐ おかわり : 糸井正和経済経営研究所

金融・経済・経営の幅広い分析をお届けします。身近な路地裏経済から陰謀渦巻く国際戦略まで、様々なハナシをお楽しみ下さい。

内燃機関の無い、(世界でたった一つではないけど)自動車

2017-10-01 12:34:56 | 企業・産業
今週は、特殊なデザインや先進的な機能を備えた掃除機や扇風機などで有名な家電メーカーである英Dysonが、電気自動車(EV)分野への参入を表明して話題となりました
そのEV、ガソリンや軽油を燃料とする内燃機関車と比べると部品数がだいぶ減るコトもあり、産業としての参入障壁が下がることで新規参入が多くなるとみられていました。
実際、結構な数のEVメーカーや周辺産業ベンチャーが立ち上がったのですが…
米Fiskerは破綻して身売り日本でもゼロスポーツが自己破産。周辺分野でもEV用交換式バッテリーシステムを提案して名を上げた米Better Placeが破綻と、まぁ惨憺たる有様です。
結果として足元のEV世界市場上位は、米TESLAを例外として、既存の自動車メーカーばかりです。(BAIC(北京汽車)・GEELY(吉利汽車)・JAC(安徽江淮汽車)・ZOTYE(衆泰汽車)は中国大手、ZD(新大洋電動車有限公司)は専業のようですがGEELY系列ですネ)

確かに、部品数がざっくり3万→2万と大きく減少するコトで“摺り合せ”産業としての度合いが弱まり、しかもコアパーツであるモーターや電池は外部からの調達可能。一見、新規参入が容易に思えるのは確かなトコロです。
とはいえ安全性が求められるボディや快適性もしくは趣味性が求められるシャシー・足回りのノウハウは、既存の自動車メーカーにはなかなか追いつけません。
さらに、“辛口”で知られる自動車メディアも直近の2017年11月号では、マイナーチェンジ後のホンダ「Fit」のボディと足回りを絶賛(かつてワタシがホンダ車乗りだった頃は、絶賛されたエンジンに対してボディは「ペラペラな“クソ”」が定評だったんですけどねぇw)。既存の自動車メーカーがEVシフト後の“生き残り”に向けて、差別化要素を“磨き”に出ているコトが推測されます。
また、販売・メンテのチャネルについて、特に先進国では、既存メーカーのディーラー網に追いつくコトは、容易ではありません。

こうした状況に対して、唯一の“成功例”であるTESLAは、自社開発の「Model S」以前の「Roadster」で英Lotus社のボディとシャシーを流用。組立も同社に委託しました
また、Paypal創業で既に著名人となっていたイーロン・マスクCEOが前面に立つコトで、メディアを上手く使って知名度を上げられました。
他のEVベンチャー各社は同じ“手”が使えなかったというコトが、現在の状況に繋がっていると言えるでしょう。

さて、知名度では十分に高いDyson。最初から独自製品の投入に打って出るようですが、うまくいくでしょうか。
電池は買収した米Sakti3の全固体電池を使うのでしょう。モーターは(“クラス”は違いますが)自社が得意とする分野です。
それ以外の、これまでのEVベンチャーの多くが破れなかった“壁”にどう対処するのか、楽しみなトコロです。

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