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老人ホームでの在宅医療

2017年06月08日(木)

月刊公論6月号の連載は、「老人ホームでの在宅医療」で書いた。→こちら
なんだか、分かったようで良く分からないのが老人ホームである。
医療と介護の連携は決して容易では無い、と最近、強く感じる。
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公論6月号  「老人ホーム」での在宅医療   
        医療と介護の連携は可能か
 
老人ホームという選択
 
 在宅医療の推進が国策として謳われて既に10年以上が経過した。そして今、在宅か施設かという二者択一ではなく、両者の間には「老人ホーム」など様々な選択肢がある。老人ホームの価格帯はざまざまであり一律に論じることは難しい。しかし今回いわゆる「老人ホーム」における在宅医療、医療と介護の連携について考えたい。

 そもそも老人ホームは医療需要が低い人が生活する場である。胃ろうや人工呼吸器など医療需要が高い人は療養病床などの慢性期病院が主な受け皿となている。しかし病気が無いという高齢者は稀であるし年々持病が増えてくるはずだ。自立している入所者は通院医療となる。国民皆保険制度はフリーアクセスが最大のウリなので複数の医療機関にかかることは可能だ。しかし3つも4つもの医療機関にかかると当然、多剤投与になってしまう。多剤投与とは6~7種類以上のお薬を飲んでいる人のことだが、後期高齢者の5人に1人がそうなっているという。多剤投与には何ひとつ良いことが無い。転倒や認知症、そして予期せぬ相互作用のリスクが確実に増大する。多剤投与に関わる社会保障費は直接的にも間接的にも大きな負担となっている。

 すでに多重受診になっている人はできるだけ「かかりつけ医」を決めて、処方医を一元化していくことをお勧めしたい。ただし専門医しか診られない病気がある人は病院と診療所の併診が可能であることを知って欲しい。普段は近くの診療所にかかりながら、定期的に病院にも通院しているという人は珍しくない。

 しかし年々体力が低下し要支援から要介護状態になれば、通院が難しくなる時がやって来る。そもそも要介護の判定をもらうには住民票がある自治体の職員による調査と主治医意見書の両方が必要である。その主治医とは意見書を書く医師。病院の専門医でも構わないができれば近隣のかかりつけ医に書いてもらうことをお勧めする。生活状況の把握は病院の専門医より地域のかかりつけ医の方が得意である。そして在宅医療にも取り組んでいる医師が望ましい。老人ホームは自宅扱いなので、2週間に1回程度の訪問診療をしてくれる医師を予め調べておきたい。特定の医療機関を指定する老人ホームがあるかもしれないが、基本的に在宅医療においてもフリーアクセスが原則である。希望を伝えれば主治医は選べるはずだ。現在、複数の医療機関が関わっている老人ホームが大半である。ただし在宅医療の医療費は一人の医師が同一建物で一度に診る患者さんの数で大きく変動する。たいへん複雑な規則なので同じ訪問頻度であっても医療費が変動することは知っておきたい。たとえば一度に2人の患者さんを診る場合と1人の患者さんだけを診る場合の訪問診療費には4倍もの差がある。これは国が決めた制度なのでその理由を聞かれても我々は答えることができない。

 
介護サービスとケアマネ制度

 ケアマネージャーとは介護保険サービスの相談役だ。老人ホームの場合、ホーム側が指定して選べない場合が多い。本来は要介護者のケアマネもフリーアクセスなのだろうがそうではない場合がある。介護施設や小規模多機能を利用する場合も同様だ。本来、ケアマネは中立公正ということになっているが、独立系のケアマネはごく少数しかいない。もしケアマネとの相性が悪ければ我慢せずに事業所内での変更を希望して欲しい。サービス内容が介護度の枠を超えてしまう場合は自費での利用が可能である。医療保険は保険診療と自費診療の併用は厳しく禁止されているが、介護保険は自費サービスを併用しても問題が無い。

 実は在宅医療で一番お世話になるのは看護師であろう。その看護師は老人ホームに所属する看護師と外部から訪問看護師として入る場合がある。老人ホームに訪問看護ステーションが併設されている場合もあり、ひとくちに看護師といっても様々な社会制度に従っている。一般に訪問看護は末期がんや神経難病には医療保険制度下で提供され、それ以外は介護保険制度下で提供されている。つまり訪問看護制度は医療保険制度と介護保険制度の両方にまたがっている。さらに薬剤師も老人ホームを訪問していることが多い。薬の処方箋は医師が診察しないとが発行できず有効期限は4日間である。その他、ホームに訪問する医療系スタッフとして歯科医や理学療法師や栄養士らもいる。実は在宅医療に従事している私たちでさえ充分に理解できないほどのかなり複雑な制度で提供されている。
 
 
医療と介護の連携 
 
 要介護状態で老人ホームに入所することは、医療保険による在宅医療と介護保険による介護サービスの両方を利用することである。医療の司令塔である医師と介護の司令塔であるケアマネの2トップ体制で提供される。老人ホームの場合はその2人以外にコンシュエルジュやマネージャー等のスタッフが関わる。しかし様々な人が部屋に出入りすると認知症の人は混乱することがあるので、徐々に顔を覚えてもらったほうがいい。

 「医療と介護の連携」が全国各地で謳われている。超高齢・多死社会を乗り切る方策として「地域包括ケア」という考え方が基礎になっている。中学校区の「地域」をひとつの「療養単位」として考える。本来の家も老人ホームも「自宅」というくくりである。しかし年々複雑な制度になり、ついていけないという開業医も多い。在宅サービスを提供する現場は定められた書類の整備に忙殺され疲弊している。介護保険制度と医療保険制度の「制度同志の連携」は進んでいなないことが大きな課題だ。

「どんな老人ホームがいいのか?」とよく聞かれる。私は「外に開かれたホーム」と答えている。閉鎖的ではなく出入り自由な雰囲気のホームがお勧めだ。また医療と介護の連携に積極的であることだ。また以上のような基礎知識を分かり易く説明してくれるホームをお勧めする。

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最近、いろんな高級(高額)老人ホームから在宅医療の依頼を受ける。
ホームが勝手に決めた在宅医(それ自体が法律違反ではあるが)に不満があるからだ。

いまだに「看取りをしない遠くの在宅医」と高級(高額)老人ホームはガッチリ組んでいる。

その理由とは、
「看取りをしない」という点で利害がしっかり一致するからだ。


高級(高額)老人ホーム =看取ると、その部屋の次の売値が下がる
在宅医 = 看取らずに、看取り搬送するので楽である。


歪んだ政策のなかで、何も知らない人が多くの後悔をしている。

「こんなはずじゃなかった・・・」

こんな声、施設への不満を延々と聞くことになる。


乱立するサ高住も玉石混合だし、
グループホームにいたっては、ここに書けない問題が山積。

すべては、政策の不備であるし
行政の無策に思える。

一例をあげるならば、在宅でありながら肝心の訪問看護が入れない。
訪問看護が鍵なのにそれ無しで看取りまで、と言っているのである。





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この記事へのコメント

有料老人ホームからの依頼…
あきらめに近い想いで訪問させていただいています

有料老人ホームでは
介護保険 限度額いっぱいでのサービスで利用させれているんでしょう
訪問看護が訪問する単位数はありません
なので
施設での訪問診療の先生から 特別指示書を書くので 14日間だけ…という依頼を受けます
さまざまな看護問題が出てきても
目を瞑らざるを得ないことが多いです
なぜならば
継続的な看護ができません

ほんとに…
難しいです

ほんとに…
ばあちゃん!介護施設を間違えたら もっとボケるで〜

Posted by 訪問看護師 宮ちゃん at 2017年06月08日 11:41 | 返信

訪問看護は、「医師の指示(訪問看護指示書)に基づき、在宅の療養者に対して看護サービスを提供するもの」という記事がありました。これはたぶん医療保険でまかなうのでしょうね。

一方、
居宅療養管理指導というのがあり、これらは介護保険で支払うのですが、介護保険外で本人は一割負担です。
なんだかよくわからにゃいのですが、私宅は実際に有料老人ホームで、薬剤師居宅療養管理指導というのに釈然としないまま契約し、不可解な請求を調べて、後に契約解除したのですが、医療保険ではなく介護保険の範囲外だけれども一割負担で使えるそうです。???
⑤の看護師居宅療養管理指導っていうのもあるみたい。
やっぱりなんだかよくわからない。ただ、介護保険から支払われること、しかし、老人ホーム側が使える介護保険の金額には影響しない。なぜなら、介護保険外で一割負担だから。???

居宅療養管理指導<5種類のサービス内容>
①医師・歯科医師による指導
医師や歯科医師による医学的な管理指導としての療養の指導や助言を訪問して行います。利用者や家族に介護の方法や介護サービスの利用法などもしどうします。利用者の同意を得て、専門家としての立場から、ケアマネジャーやサービス事業者に情報提供を行います。
②歯科衛生士による指導
指定居宅療養管理指導事業所に所属している歯科衛生士が歯科医師の指示に基づき自宅を訪問して口腔ケアを行います。また、飲み込むための機能訓練なども行います。
③薬剤師による指導
病院の薬剤師が医師の指示を受けて、薬に関する指導や助言を居宅を訪問して行います。薬局の薬剤師の場合は、医師や歯科医師の指示により作成した「薬学的管理指導計画書」に基づいて指導します。
④管理栄養士による指導
指定居宅療養管理指導事業所に所属している管理栄養士が居宅を訪問し、栄養管理の指導・助言を行います。この際、計画的に医学管理をしている医師の指示が必要となります。
⑤看護師・保健師による指導
看護師による在宅療養管理指導が入ることで、医療との連携がとりやすくなります。主自治の意見書にチェックがあれば、医師の指示をつけずに在宅療養管理指導を依頼できます。ただし、訪問介護を受けている場合は、両方を受けることはできません。

Posted by 匿名 at 2017年06月09日 01:14 | 返信

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