言葉のかけら

エルヴィスのレパートリーを日本人の視点から読み取る訳詞プロジェクト「言葉のかけら」

かけら補足資料「In The Ghetto」

2015-02-01 20:00:00 | かけら補足資料
★ エルヴィスが歌ったのはいつ?
RCAの資料(↓)に見えるように、
エルヴィスが「In The Ghetto」を歌ったのは
1969年1月21日AM1:00~AM4:00と言われていたのですが
2013年5月発表のFTD「From Elvis In Memphis」では

  1969年1月20日PM9:00~PM12:00

とブックレットに書かれているのです。
実は1998年発刊のセッション研究書「A Life In Music」でも
1969年1月20日PM9:00~PM12:00と解説されていたのですが・・・



「In The Ghetto」とは逆に「Rubberneckin'」は、1969年1月20日PM9:00~PM12:00と
言われていた録音時間が、1969年1月21日AM1:00~AM4:00と訂正されたのですが
ここに「Gentle On My Mind (Vocal Overdub)」の情報を加えると

  XPA5 1154 In The Ghetto
  XPA5 1155 Gentle On My Mind (Vocal Overdub)
  XPA5 1156 Rubberneckin'

と、見事に(笑)、マトリクス・ナンバーが並ぶので、おそらく
それぞれの歌に取り組んだ順番がマトリクス・ナンバーに反映されているのでしょう。
しかし、現在のところRCAの資料に1969年1月21日AM1:00~AM4:00と
記録された「理由」は判明していないのです。

★ マスターテイク
1993年9月発売の5CDs「From Nashville To Memphis - The Essential 60's Masters I」の添付資料で「テイク23」とされた「In The Getto」のマスターテイクは、その後もずっと「テイク23」と言われて来ましたが、2013年5月発表のFTD「From Elvis In Memphis」のブックレットでは「テイク22」と訂正されました。まあもっとも、シングル・バージョン等、公式に発表されたマスターテイクは、エルヴィスがボーカルを差し替えていましたので、これを考えると

  テイク23と言われて来た「In The Ghetto」のオケ
  実際にはテイク22のものだった

と訂正するのが良いのかも知れませんね。

★ 訂正の嵐
FTD「From Elvis In Memphis」の発表によって、マスターテイクだけでなく、それまでに発表されていた別テイクの情報も訂正されました。
テイク3とテイク11は、

  Disc1-Track23 テイク3 = 4CDs「Platinum」
  Disc2-Track03 テイク11 = FTD「Memphis Sessions」

と情報に訂正がありませんでしたし
こちら(↓)も問題が無いといえば、確かに無いのですが

  Disc2-Track04 テイク13 = FTD「Made In Memphis」

・・・いや、テイク13と言われていたFTD「Made In Memphis」バージョンが
セッション研究家の間では、実際にはテイク14であると「誤訂正」されていたので
「訂正の訂正」になったわけです。
そしてここが「最大のあれれ」でして、

  Disc2-Track05 テイク20 未発表テイク

・・・実は4CDs「Today, Tomorrow And Forever」バージョンが
ブックレットに「テイク20」と解説されていたのですが
FTD「From Elvis In Memphis」で発表された「テイク20」は
また別のテイク・・・つまり「未発表テイク」が出て来たのです。
はたしてどちらのバージョンが本当のテイク20なのでしょうか?

★ Take19 From Elvis at American Sound Studio
2013年12月になってFTDレーベルからの「第3弾」となるFTD「From Elvis at American Sound Studio」が発表され、Disc1-Track19に「JANUARY OUTTAKES」としてテイク19が収録されると、それがまさしく4CDs「Today, Tomorrow And Forever」バージョンだったので、「テイク20論争」(笑)に答えが出るとともに、

  テイク14 → 実はテイク13
  テイク20 → 実はテイク19

の「ずれ方」が、マスターテイクの「テイク23 → テイク22」の
修正に至ったのであろうと分かったわけです。

22テイク中、海賊盤で発表された別テイクが「テイク1~12」に集中しており、
海賊盤で発表されたテイク12(LFS)がフェイドアウトになっていたために
そこで「テイク数の数え間違え」を起こしていたのではないかと・・・
間違えていた頃の「表」 を見れば想像が付くでしょう

★ コーラス・オーバーダブの不思議
1969年1月20日のテイク22を「一応のマスター」に選んだ後に、
1969年1月22日にテイク22のオケを使ってエルヴィスが全体を歌い直し、
1969年1月24日にコーラスをオーバーダブしたのですが、
なぜか海賊盤「American Rejects」収録バージョンは
「ダメを出されたテイク22」にコーラスが付いているのです。
これには

  コーラスをオーバーダブする際に
  テイク22がヘッドホンに流されていた

など、思いもしない理由があったのでしょう。
「Hey Jude」の「かけら化」のときには、
海賊盤「American Rejects」の音源となった「Draft Mix Tape」の存在を、
チップスとフェルトンの「ダブル・プロデューサー」が生んだ
「ひずみ」のようにも考えたのですが、2015年2月現在、ホントのとこは分かりません。
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4 コメント

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”進行中”メモ (バークレー)
2015-02-09 23:20:03
まあ、歌の内容からしてなんとなく「ghetto = スラム」を理解しているつもりなのですが
一応、ちゃんと調べておくのが「かけら流儀」なので・・・

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B2%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BC

・・・「ゲットーの語源」に諸説あげられていますが

  ヘブライ語で「分離」を意味する「ghet」に由来する

が、「そもそもの始まり」に、私なんかは思います
”進行中”メモ (バークレー)
2015-02-12 23:47:31
「snow」ってわりに「white」じゃなくて「gray」なんだなと
”進行中”メモ (バークレー)
2015-02-19 23:18:53
FTD「Writing For The King」には
作者「Scott Davis (クレジット名Scottは、Mac Davisの息子の名前)」が

  最後の歌詞「And his mama cries」は、エルヴィスが加えたもの

なんてな証言をしていましたが、Wiki「In The Ghetto」を読みましたら
http://en.wikipedia.org/wiki/In_the_Ghetto
最後の「and his mama cries」が「悪循環(The Vicious Circle)」を感じさせる
という解説にはなっているのですが、それが「エルヴィスによるもの」だとは書いてありませんでした。

エルヴィスの「作詞・作曲能力」について、とやかく言う人間もいますが
「In The Ghetto」の最後に「And his mama cries」の「有る無し」を思えば、
エルヴィスのファンと「とやかく言う人間」を比較する場合にも
「詳しい情報の有る無し」が関わっているのではないかと。
”進行中”メモ : 目からウロコでした (バークレー)
2015-02-28 19:18:58
具体的には歌われていないものの、「In The Ghetto」の聞き手は
何の疑問も無く「特定の肌の色」を連想するのですが
銃を手にした少年が通りに倒れていれば・・・

1.警官に射殺された
  (現在「In The Ghetto」を聞いた場合、「白人警官に」のオマケがつく)

が順当な受け取り方で、わずかながら

2.追い詰められて、自ら銃で命を絶った

を可能性として考えていたのですけど
エルヴィスママさんに「break away」の解釈として
「この若者がゲットーから抜け出そうとする姿」を指摘されると

3.仲間の金に手を付けて、仲間に始末された

もあるのかなと。

【余分なメモ】
「In The Ghetto」をじっくりと読んでいる間に
「関東のゲットー」のニュースが連日伝えられていたりする今日この頃。

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