岩をあとにすると、どうやら子どもは犬と一緒に帰ってきたらしい。
やっぱこの犬、スゲーわ。
ふと見れば総出でお出迎え。やめてくれはずいから。
「神の岩に雷が落ちたからケガをしてないか皆で心配しておったわい。何が起こったのじゃ?」
村長から聞かれたので、あーだこーだこーだあーだとかくかくしかじかまるまるうしうし。
「ふむ。そのようなことがあったのか。まさに奇跡というほかあるまい」
……また大地のせーれーさま?
村長は屋上で見たものをエマに尋ね、その答えに満足したらしい。
「ロトゼタシアがいかに広大かをわかったようじゃな」
つまり、あながちエマの言うことは間違っておらず、上の景色を見たらそれで終了ってか。
プライスレスってのは、両極端なんだよなぁ。意味的に。
「もしかするとこの村を出て羽ばたく時が訪れるかもしれんからな」
俺、やだ。
村長が満足したところで村に戻り、家に帰り着く。たらいま~わし。
「ああアルフレート。おかえり。無事成人の儀式を終えたようだね。村中でウワサになってるよ」
ウワサも何も……。なんて他人事な。全く無事ってわけでもなかったし、ってか出迎えなしとか世知辛いな。
「エマちゃんの足手まといにならなかったかい?」
ひでえ。おかんって全国的にこうなんだよな。
エマがまたアザのことを喋る。
「運命にはあらがえないのかねえ」
何やら曇った顔でため息を一つ。
何だよ。
「ついにあのことを話す時が来たようだね」
何何何ちょっと怖い。
突然渡されたのは、青いような緑のようなペンダント。なにやら文様がある。
どうやらじーちゃんから預かっていて、成人の日に渡すよう言われていたようだ。
で、ずっと黙ってたことがあるとか、改まって話し始める。何? 俺はひょっとしておかんの実の息子じゃなかったとか?
「アルフレート。あんたはね……。勇者の生まれ変わりなんだよ」
…………は?
何神妙な顔してもったいぶってトチ狂ったようなことを。
何大きな運命とか。
これまたじーちゃんからの遺言で、俺が成人したら北のデルカダールに行かせるようにということらしい。そしてこのペンダントを王様に見せるようにと。
え~。いきなりそんな話されても。王様に万が一大笑いされたら恥かくだけじゃん。それとも何? 王室巻き込んだ盛大なドッキリ企画が動いてるとか?
「さあ! 明日から当分会えなくなるわ! 今夜はお母さんがとびっきりおいしいご飯を作ってあげるからね!」
仕切りなおしたつもりか。気まずくて喉通らんわ。