ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ある過去の行方

2014-04-17 22:28:23 | あ行

「別離」監督の新作。
否が応でも、期待値が!


映画「ある過去の行方」71点★★★★


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テヘランに住むアーマド(アリ・モッサファ)が
4年ぶりに雨のパリにやってくる。

彼は元妻のマリー=アンヌ(ベレニス・ベジョ)と
正式な離婚の手続きをするために来たのだ。

マリー=アンヌはいま付き合っている男(タハール・ラヒム)と
彼の息子、そして自分の連れ子の娘2人と暮らしていたが
家の中の雰囲気はどこか不穏。

そしてアーマドは、長女から
母と、父になるかもしれない男のある秘密を聞かされて――?!

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イラン映画界の超新星アスガー・ファルハディ監督が
初めて舞台を外国に移し、
「アーティスト」の主演女優ベレニス・ベジョや
「預言者」のタハール・ラヒムなどを演者に

よりグローバルな一歩を踏み出した作品です。


「彼女がいた浜辺」や「別離」のように
ハッキリとした面白さの感触は淡いかもしれませんが

でも
誰も悪人ではないのに、
どんどん悪い方に物事が転がるさまや

無意識も含めた「人の心」を
絵に写し取ろうという試みは一貫していて

注意深く観ると
意味と味が深くなる作品だなと。


例えばファーストシーンで
ガラス越しに
なかなか気づかない男女の様子、

いまの彼氏にマリー=アンヌが
さりげなく重ねた手を払われたりするシーンなどなど

よく見ると
さまざまな「深層」が映っていたことに気づくんですねえ。

我々が体験する日常のなかに潜む
男女の“あや”を
ミステリアスに織り上げる手腕は、さすがだなと思います。


実際、ネタとしては
浮気だったり、相手の妻の自殺未遂だったり、
出来事自体は小さいんだけど

それをどんどん、上手い具合に
加速させていくんだよね、ファルハディ監督は。

中盤、少々眠くなったけど
ラストはさすがピリッとしてました。


★4/19(土)からBunkamuraル・シネマ、新宿シネマカリテほか全国順次公開。

「ある過去の行方」公式サイト

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