ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

黄金のアデーレ 名画の帰還

2015-11-23 18:09:43 | あ行

これは予想以上におもしろかった~!


「黄金のアデーレ 名画の帰還」74点★★★★


***************************

1998年。

ロサンゼルスに暮らす
82歳のマリア(ヘレン・ミレン)は
ある裁判を起こそうとしていた。

それは故郷オーストリアでナチスに没収された
叔母の肖像画を取り戻すための裁判。

その肖像画とは、かの有名な
金色に輝くクリムトの名画だった――!

だが、現在の名画の所有者はオーストリア政府。
彼らが「国の至宝」を手放すことなんて、あり得るのか?!

マリアは弁護士ランディ(ライアン・レイノルズ)に
相談を持ちかけるが――。

***************************


かの有名なクリムト絵画を
オーストリア政府から取り戻そうとした女性の
実際の出来事を基にしたお話。


こういう実話ものって
割と正攻法で、まあ普通かな、ってことが多いんですが
この映画はおもしろかった。


実際、演出は手堅く、
過去と今を行ったり来たりする手法も普通なんだけど

クリムトのモデルとなったアデーレの話だけでもなく、
ナチスの暴挙や、つらい歴史の話だけでもなく、

返還を求める裁判の駆け引きのスリルだけでもない、という
単純構造でないのがいいんですね。。


最初は渋々、マリア(ヘレン・ミレン)を手伝うことになる
新米弁護士(ライアン・レイノルズ)や
彼らをウィーンでサポートする
若いジャーナリスト(ダニエル・ブリュール)の姿を通して


過去に向き合い、ときに前の世代が犯した過ちを認め、
それを償おう、正そうとする若い世代の勇気と行動を
浮かび上がらせた点が見事。

彼らの正義感に
「正しき人間のふるまいとは」を見せつけられ
グッときました。

「ミケランジェロ・プロジェクト」
繋がっている話なのも興味深いところで
逆に公開のタイミング、よかったかもね。


さらにちょっとおもしろいお話を。

最新号の『週刊朝日』(11/24発売)おなじみ「ツウの一見」で
「美術館を手玉にとった男」について
国立西洋美術館の渡辺晋輔さんに取材させていただいたときの
こぼれ話なんですが


例えば展示会をしたり、絵画を購入するときに
美術館員にとっては
「それが贋作かどうか」よりも
「ナチスの没収品ではないか」のほうが
よりリアルに心配な点なんですって。

海外から作品を借りて展示会をするときなどは
「何があっても、必ず、その国に返すこと」が
契約書の必須事項にあるそうな。

この映画をみると
「なーるほど!」と思いますよ、きっと。

あ、本編の「美術館~」話もおもしろいので
ぜひご一読を!


★11/27(金)から全国で公開。

「黄金のアデーレ 名画の帰還」公式サイト

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4 コメント

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★映画のMIKATA★映画をMITAKA (流石埜魚水)
2015-11-26 11:51:45
私掲載記事を見ると、見たい映画ばかりです。今、「障害者の映画」のテーマ追いかけてます。勿論、最新作も載せてます。良かったらアメーバブログにお立ち寄りください。
ありがとうございます! (ぽつお番長)
2015-11-29 00:28:21
お立ち寄りくださり、ありがとうございます!

ブログ、拝見させていただきました。
テーマの視点、おもしろいですね。
そもそもたくさん見ていらっしゃいますねえ!(尊敬)

「ハンガーゲーム」もクリアしたのですね!(笑)
ワシも来週は見なければ・・・!
Unknown (大阪マラソン)
2015-12-01 09:44:12
109分!

この題材なら2時間オーバーだろうなと予想したが、見事に外された。

裁判シーンをサクサクと進めることで裁判ドラマの要素を小さくしたのか、確かに世間的には名画であっても彼女にとっては家族の思い出を語る絵画という印象が強く残ったのは好印象でした。

あと、ヘレンさんの円熟の演技は言うに及ばず、新米弁護士の成長物語の面もあります。

また、自分の国や父親の過去の行いにどう目を向けるべきかも語っているような気もします。

参考映画の「ミケランジェロ~」も良かったですが、本作の方が上かな~とも思いますね。
円熟の (ぽつお番長)
2015-12-04 00:55:13

ヘレン・ミレンさんは
まさに
円熟で黄金に輝く
演技でございます。

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