ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ロング,ロングバケーション

2018-01-23 23:56:49 | ら行

「人間の値打ち」(16年)監督が
ハリウッド俳優を迎えて撮った作品。

さすが。


「ロング,ロングバケーション」72点★★★★


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その朝、
エラ(ヘレン・ミレン)は
50年連れ添った夫ジョン(ドナルド・サザーランド)をドライバーに
おんぼろキャンピングカーに乗って旅に出た。

ジョンはアルツハイマーが進行し、
記憶が飛びがちになっている。

「そんな状態のパパに運転させるなんて!」と
両親の不在に気づいた子どもたちが大騒ぎするなか

二人は想い出の土地を巡りながら
ルート1号線を南へとくだっていく。

彼らの目的地は、どこなのか――?


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イタリアの名匠
パオロ・ヴィルズィ監督作品。

「人間の値打ち」(16年)も
続く
「歓びもトスカーナ」(17年)
この監督は人間をえぐる描写と、ドラマチックな構成力が
とても素晴らしい。

本作もまったくそんな感じで
“熟年もの”の予想域を超える驚きと
「観てよかった!」の満足感をくれました。


50年連れそう仲良し老夫婦がキャンピングカーで旅に出る。

快活な妻は、周囲の人々とのおしゃべりを欠かさず
対して、認知症がはじまっている夫のほうは
ちょっとやばそう。

でも
若々しい妻の髪がウィッグだったりすることで
「あ、この人、闘病中なのか」と
詳細を言わずもがな、推し量らせる。

そのほかも
随所に気の利いたセリフを散りばめ、
夫婦の軌跡を描いても
センチメンタルになりすぎず

老いや病気をリアルに描いても
決して重すぎることなく笑いもたっぷり。
(ハイウェイで警官に止められるシーンには吹いたなあ

老夫婦だけでなく
それぞれ成人し、別々の道を行くことになった子どもたちを描写することで
どこの家庭にもありそうな問題が
より身近に浮かびあがります。


ラストもワシはアリだと思いました。

そして
これは、両親にも勧められるなあと。
心が沈むような“熟年もの”は見せたくないですもん。


★1/26(土)からTOHOシネマズ日本橋ほか全国順次公開。

「ロング,ロングバケーション」公式サイト

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