ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

港町

2018-04-07 13:30:53 | ま行

 

いつまでもいつまでも

見ていたいような。

 

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「港町」74点★★★★

 

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想田和弘監督、観察映画第7弾。

しみじみ沁みて、今回かなり好きだ。

 

前作「牡蠣工場」でおなじみ、岡山県の牛窓を舞台に

そこに暮らす年老いた漁師、魚屋さんなど数人と

猫たちを映す観察ドキュメンタリー。

 

モノクロームの画面はいつにもまして静かで、テーマも声高でない。

そのささやかさが、観客をより対象に没入させるんだと思う。

 

 

漁師と漁に出て、魚が網から外される様子が延々と続き、

魚屋さんが魚を店先に出すまでの過程も延々と続く。

しかし見ていてちっとも飽きることがない、この不思議(笑)。

 

ここにあるのは

やがて消えていくかもしれない空間と時間。

そのなかでめぐる、人と人との関わり。

それを

たゆとうように、ながめながら、いろいろを考える。

 

これぞ「想田ブランド」というか

「想田監督の目」を信じてよし!という感じですね。

 

同じ話を繰り返すおばちゃん=クミさんと、

耳の遠い老漁師=ワイちゃんの会話のもどかしさなどには

なんだか、自分の親と接してるような、既視感もあっておもしろい。

 

でも、例えばワン・ビン監督の「苦い銭」とかとは違って

そこに暮らしたような感じではないんですよね。

 

あくまでも、ストレンジャーの視点。

 

監督自身も、奥さんでプロデューサーの規与子さんも

けっこう会話に入ってきているのに、この距離感は、なんだろう。

 

で、そののちに見えてくる

明るいクミさんの複雑な家庭の事情に「えっ」となる。

 

最終的には

やっぱりいろいろあるわなあ。

人生はウロウロと行ったり、来たりだわなあ、いう思いが

じわーんと残るのでした。

 

「AERA」にて、想田監督にインタビューさせていただきました。

AERAdotに記事、あがっています~。

映画と併せて、ぜひ!

 

★4/7(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

「港町」公式サイト


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