ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

「従業員が痴漢で逮捕!」 会社はどう対処するべき?

2015-08-23 14:29:41 | 労務情報

 女性が薄着になるこの季節、万が一、従業員が電車内で痴漢行為を働いた容疑で逮捕されたら、会社はこれにどう対処するべきだろうか。
 こういう事態に慣れていないと(普通は慣れていないので)気が動転してしまうが、経営者としては、浮足立つことなく、「会社の損害を最小限に抑える」ことを冷静に考えたい。

 その第一歩は、まず、「事実」の把握から始まる。どう対処するにしても、本人が自認している(もしくは裁判結果等から客観的に読み取れる)「事実」をもって判断しなければならない。もし誤認逮捕であったりしたら取り返しがつかないし、そうでなかったとしても、社内外から「軽率な会社」とのレッテルを貼られかねないからだ。
 このことは、逮捕された事がマスメディアで報じられてしまった場合でも同様だ。「従業員が逮捕された」ことだけをもって慌てて会社が謝ってみたり、逆に、拙速に「会社の責任ではない」とコメントしたり、といったマスコミ対応は、「お粗末」としか言いようがない。取材攻勢に対しては、「事実を調査中」とだけ答えておけば良いのだ。

 また、本人の処分についても、「会社の損害を最小限に抑える」ことに軸足を置いて考えるべきだ。
 例えば、解雇(懲戒解雇または普通解雇)するとしたら、その従業員を排除することによって社内秩序が安定する効果と、解雇無効が争われた場合の金銭リスクやレピュテーションリスクとを比較考量しなければならない。あるいは、「心を入れ替えて職務に専念する」と誓約させるのが会社にとってプラスになると考えるなら、「始末書」を提出させるだけに止めることも選択肢に入るだろう。
 なお、識者の間では「職場外での違法行為に対して会社は懲戒権(従業員を懲戒できる経営上の権利)を持たない」との意見も有り、また、訴訟事案では裁判所は労働者側に有利な判決を出す傾向にある。しかし、実際に会社が損害を被り、それを解決するために懲戒した事案については、裁判所も是認している(東京高判H15.12.11等)。
 そういった意味でも、さらには敢えて感情を殺して冷静に判断するためにも、「会社の被った損害」を基準とするのは合理的と言える。

 いずれにしても、会社がこういう場合にどう対処するかを、他の従業員たちも注視していることは、忘れてはならないだろう。


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