ご苦労さん労務やっぱり

労務管理に関する基礎知識や情報など。 3日・13日・23日に更新する予定です。(タイトルは事務所電話番号の語呂合わせ)

その配転命令は合理的根拠に基づくものか

2014-04-03 19:30:29 | 労務情報

 会社が従業員に職務を与えるのは、当然の権利であり、また義務でもある。したがって、従業員の配属を決めることも、その派生として配置転換を命じることも、基本的には(当事者間に職種限定の特約がある場合を除き)、会社の裁量に任されるべきものだ。
 これは「人事権」と呼ばれ、会社が有する「経営権」に属する権限の一つとして、就業規則等に記載されていなくても(明文化しておくのが望ましいには違いないが)、一般的に認められている。しかし、会社は、人事権を有すると同時に、それが権利の濫用にあたる場合には無効となってしまう(民法第1条第3項)ことは、肝に銘じておかなければならない。

 配転命令が権利の濫用とされる典型は、「経営上の必要性と比較衡量して従業員の受ける不利益が過大である場合」(最二判S.61.7.14)だ。つまり、会社は「従業員の受ける不利益」を考慮に加えたうえで配転命令を下さなければならず、また、配転拒否された場合に業務命令違反として懲戒処分を科すに際してもこれを斟酌しなければならないことになる。
 また、その配転命令に不当な動機・目的が有る場合も、権利の濫用とみなされる。先ごろ、大手複合機メーカーにおける退職勧奨対象者に対する出向命令が、「自主退職を期待して行われた。人選の合理性も認められない。」として無効と判じられた(東京地判H25.11.12;会社側は即日控訴)のは記憶に新しいところだろう。なお、この事件で問題とされたのは「子会社への出向」であったが、実質的に「自社内の物流部門への配転」と同一視されることから、他の退職勧奨絡みの配転事案にも影響を与えそうだ。

 いずれにしても、配属命令・配転命令は、適材適所もしくは適正なジョブローテーションの観点から合理的であるべきであり、加えて、訴訟対策としては、その根拠が明確に示せるような資料を用意しておくべきと言えるだろう。


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