(1)宗教には伝統的宗教と非伝統的宗教がある。いわゆる新宗教、新興宗教は近代になってからも生まれているので、じつはその構成は非常にモダン、近代的だ。世界救世教にしても、天理教にしても、真光(まひかり)教にしても、創価学会を含めて、この種の新宗教は会館も比較的モダンなかたちであるし、教義体系も合理性を重視している。
一見非合理に見える真光教あるいは世界救世教の手かざしはどうか。手かざしによって何かが治るというのは、因があれば果があるという意味で、明確な因果関係がある。ある人が手かざしをした場合に効果があって、ある人のときはまったく効果がないということではなくて、ある種のきちんとした技法を手に入れれば効果があるということです。そういう構成をとる場合は、近代科学に近くなる。近代主義的な構成になる。
(2)これに対してキリスト教はそうではない。カインが春から秋まで一生懸命働いてつくった穀物を祭壇に積んだけれども、神は風を吹かせて全部吹き散らす。アベルが羊を割いて置いたら、すごく喜んだ。なぜ、このような違いが生じたかといえば、神様がたまたまそういう機嫌だったからだ。
(3)ユダヤ教もそうだが、キリスト教の神様は、自分がつくったものだから、自分が壊すのも勝手という論理を主張することがある。
「おい、最近おまえら悪事を重ねているな。こういうつもりでつくったんじゃないから皆殺しにする。洪水を起こす。しかし、おまえはいいやつだから、おまえの仲間だけは助けてやる」
こういうノアの方舟の話なんかもある。
ちなみに、このノアの方舟の場面で、神様は、もう二度と人類を滅ぼさないと約束し、その契約の証に虹をかける。中国では虹は天が起こっていることを意味した。だから、虹があらわれると権力が崩壊する兆候だと受け止められる。虹が平和のシンボルだというのは、日本でも明治期以降キリスト教の影響が強まってからだ。それまで虹に対してあまりいいイメージはなかった。
(4)なぜユダヤ教やキリスト教の世界で、特にユダヤ教の世界で論理が発達するのか。
それは預言者は神様に呼ばれてつねに議論をしないといけないからだ。人間側と神様の側の過去の対戦成績は、人間が全勝だ。なぜか。神様が一度でも勝てば我々はここにいないはずだ。さまざまな問題があっても、神様が最後に翻意して、やはり人間を生き残らせようかと決断する。そういう物語の構成になっているから、論理は死活的に重要なのだ。
神様は、黙って心を察してくれるということはない。必ず口に出して説明しないと、言うことを聞いてくれない、というのが、ユダヤ教とキリスト教の神様だ。
□佐藤優『牙を研げ 会社を生き抜くための教養』(講談社現代新書、2017)の第2章の「⑧論理が発達する理由」
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【佐藤優】天照大神vs.須佐之男命 ~『牙を研げ』~」
「【佐藤優】仏教や神道とは違う、一神教の思考法 ~『牙を研げ』」
「【佐藤優】国教は習慣というかたちをとる ~『牙を研げ』~」
「【佐藤優】紅白歌合戦の、カオスからコスモスへ ~『牙を研げ』~」
「【佐藤優】武士政権成立前後のグローバリゼーションと反グローバリゼーション ~『牙を研げ』~」
「【佐藤優】プロテスタンティズムという思考の鋳型 ~『牙を研げ』~」
「【佐藤優】日本兵は捕虜になるとよくしゃべる理由、米軍の日本研究 ~『牙を研げ』~」
「【佐藤優】ソ連軍の懲罰部隊が強かった理由、日本軍の「生きて虜囚の辱めを受けず」 ~『牙を研げ』~」
「【佐藤優】『牙を研げ 会社を生き抜くための教養』 ~各章の小見出し~」
「【佐藤優】『牙を研げ』 ~まえがき~」
「【佐藤優】『牙を研げ 会社を生き抜くための教養』 ~目次~」
一見非合理に見える真光教あるいは世界救世教の手かざしはどうか。手かざしによって何かが治るというのは、因があれば果があるという意味で、明確な因果関係がある。ある人が手かざしをした場合に効果があって、ある人のときはまったく効果がないということではなくて、ある種のきちんとした技法を手に入れれば効果があるということです。そういう構成をとる場合は、近代科学に近くなる。近代主義的な構成になる。
(2)これに対してキリスト教はそうではない。カインが春から秋まで一生懸命働いてつくった穀物を祭壇に積んだけれども、神は風を吹かせて全部吹き散らす。アベルが羊を割いて置いたら、すごく喜んだ。なぜ、このような違いが生じたかといえば、神様がたまたまそういう機嫌だったからだ。
(3)ユダヤ教もそうだが、キリスト教の神様は、自分がつくったものだから、自分が壊すのも勝手という論理を主張することがある。
「おい、最近おまえら悪事を重ねているな。こういうつもりでつくったんじゃないから皆殺しにする。洪水を起こす。しかし、おまえはいいやつだから、おまえの仲間だけは助けてやる」
こういうノアの方舟の話なんかもある。
ちなみに、このノアの方舟の場面で、神様は、もう二度と人類を滅ぼさないと約束し、その契約の証に虹をかける。中国では虹は天が起こっていることを意味した。だから、虹があらわれると権力が崩壊する兆候だと受け止められる。虹が平和のシンボルだというのは、日本でも明治期以降キリスト教の影響が強まってからだ。それまで虹に対してあまりいいイメージはなかった。
(4)なぜユダヤ教やキリスト教の世界で、特にユダヤ教の世界で論理が発達するのか。
それは預言者は神様に呼ばれてつねに議論をしないといけないからだ。人間側と神様の側の過去の対戦成績は、人間が全勝だ。なぜか。神様が一度でも勝てば我々はここにいないはずだ。さまざまな問題があっても、神様が最後に翻意して、やはり人間を生き残らせようかと決断する。そういう物語の構成になっているから、論理は死活的に重要なのだ。
神様は、黙って心を察してくれるということはない。必ず口に出して説明しないと、言うことを聞いてくれない、というのが、ユダヤ教とキリスト教の神様だ。
□佐藤優『牙を研げ 会社を生き抜くための教養』(講談社現代新書、2017)の第2章の「⑧論理が発達する理由」
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【参考】
「【佐藤優】天照大神vs.須佐之男命 ~『牙を研げ』~」
「【佐藤優】仏教や神道とは違う、一神教の思考法 ~『牙を研げ』」
「【佐藤優】国教は習慣というかたちをとる ~『牙を研げ』~」
「【佐藤優】紅白歌合戦の、カオスからコスモスへ ~『牙を研げ』~」
「【佐藤優】武士政権成立前後のグローバリゼーションと反グローバリゼーション ~『牙を研げ』~」
「【佐藤優】プロテスタンティズムという思考の鋳型 ~『牙を研げ』~」
「【佐藤優】日本兵は捕虜になるとよくしゃべる理由、米軍の日本研究 ~『牙を研げ』~」
「【佐藤優】ソ連軍の懲罰部隊が強かった理由、日本軍の「生きて虜囚の辱めを受けず」 ~『牙を研げ』~」
「【佐藤優】『牙を研げ 会社を生き抜くための教養』 ~各章の小見出し~」
「【佐藤優】『牙を研げ』 ~まえがき~」
「【佐藤優】『牙を研げ 会社を生き抜くための教養』 ~目次~」