語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】保護主義は今や世界のトレンド ~グローバリズム→国家機能強化~

2017年08月17日 | ●佐藤優
 (1)米国は、ずっと米国第一主義だった。世界の警官でいたのも、それが国益にかなっていたからだ。ただ、これからはメリハリをつけて、取捨と選択で、米国第一主義をやっていこう、ということだ。その原因は、やはり米国の国力低下だ。
 東西冷戦の崩壊のときに、米国には極度に力がついた。つきすぎた。そのことが、グローバル資本主義を加速させてしまった。そのツケが、今度は米国にまわってきたのだ。
 グローバル資本主義は、基本的には米国と手を携えて進んできた。ところが、タックスヘイブンでわかるように、ある時点で、米国にも税金を払わなくなってきた。これは困るわけだ。スターバックだってアマゾンだって、米国の企業だけれども、彼らのビジネスのやり方は、必ずしも米国という国をハッピーにはしない。
 つまり米国第一主義といっても、自由な市場をエンカレッジすることもあれば、国家を重視することもあるわけだ。今の米国では、国家重視の傾向が強まっている、ということだ。

 (2)TPPが崩壊したといっても、二ヵ国間協定でやるといっても、取引の内容はそんなには変わらない。自動車産業なんかは、相当に時間をかけていくってことだから、あんまり関係はない。一方、農作物の関税が下がる、ということは当分、なくなったわけだから、この点では米国は不利だ。ただ、トランプ大統領は農作物には関心がない。
 でも、たとえ米国から肉が入ってこなくても、日本はオーストラリアとの間に経済連携協定を作っているから、オーストラリアから入ってくるだけだ。
 TPPというのは、本当は保護貿易的なものだ。二ヵ国間協定も保護貿易なのだ。世界のトレンドは、グローバリズムの行き過ぎから、国家機能が強化されている。それは、保護貿易と相性がいい。それが今、世界のトレンドになっている、というわけだ。

 (3)ただ、二ヵ国間協定を結ぶとなると、米国は相当強く出てくるだろう。それに多国間交渉だと、ある意味、連合軍が組める。たとえば砂糖。日米が協力して、オーストラリアを押させる、なんてこともできた。
 一方二か国間交渉になると、そういうわけにはいかず、相当、面倒くさいことになる。

□佐藤優・監修『地政学から読み解く米中露の戦略』の「第1章 地政学から読み解く米国の戦略」の「TPP離脱。保護主義は、じつは世界のトレンドである ~グローバリズムの行き過ぎから、国家機能が強化されている~」

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 【参考】
【佐藤優】商売人トランプは儲かる戦争をする ~軍事費1割増は経済政策~
【佐藤優】大使館が引っ越すと第三次世界大戦の引き金になる ~地獄の釜の蓋が開く~
【佐藤優】トランプを理解する二つ目のカギ ~「イスラエル中心主義」~
【佐藤優】トランプを理解するカギ ~彼の信仰、カルヴァン派~
【佐藤優】×宮家邦彦/北朝鮮の核問題、ICBM問題にどう向き合うか

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