語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【保健】アメリカで「添加された糖類」の栄養表示へ

2017年03月26日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)米国で2016年5月に決定した新しい栄養成分表示基準に係る運用指針案が、1月19日に発表された。20年ぶりの改正の中で最も注目すべき変更は、加工食品への「添加された糖類(Added sugar)」の表示が始まることだ。

 (2)①炭水化物、②糖質、③糖類の違いを整理しておく。
   ①炭水化物:脂質、タンパク質と並ぶ三大栄養素の一つ。体内で消化吸収されエネルギー源になる②糖質と、消化吸収されない食物繊維に分けられる。
   ②糖質:米やパンなどに含まれるでん粉などの多糖類や、甘味のあるブドウ糖、果糖、砂糖などの単糖類・二糖類のこと。

 (3)日本の栄養成分表示では、糖質も糖類も区別せずすべて炭水化物の量が表示されるため、個別の加工食品に糖類がどれだけ含まれているかは分からない。
 米国では、2015年に発表された食事ガイドラインで、新しく炭水化物から独立して糖類の摂取基準が定められた。特徴的なのは、その糖類の摂取基準は、果物などにもともと含まれている糖類は除外され、加工食品に意図的に添加される糖類に限定される点だ。代表的なものが砂糖だが、でん粉を分解して作られる果糖ぶどう糖液糖」なども糖類に含まれる。これら添加された糖類は他の栄養素を含まない「エンプティカロリー」と見なされて摂取制限の対象とされた。

 (4)これら添加糖類の多い食事をしている人の間で、肥満や糖尿病・脂質代謝異常などの生活習慣病のリスクが増えるということが、多くの研究でわかってきたためだ。平均的な米国人は、食事からの総摂取カロリーのうち13.4%を添加糖類から摂っているが、
  ①摂取割合が10%未満の人たち
  ②摂取割合が10~25%の人たち
  ③摂取割合が25%以上の人たち
において、心疾患での死亡率が、②は①より1.3倍増え、③は①より3倍に増えたという調査結果も出ている。

 (5)そこで米国の食事ガイドラインでは、添加糖類の摂取量を1日の総摂取カロリーの10%未満とした。平均的な成人の1日の摂取カロリーを2,000キロカロリーとすると、砂糖の場合、50g未満となる。
 WHOや米国心臓協会は、さらに削減して総摂取カロリーの5%未満が望ましいとしている。砂糖の場合、25g未満となる。
 そこで、栄養成分表示でも、添加糖類の量がわかるように変更されたわけだ。食品表示の中で、天然に含まれる分も含んだ糖類送料の表示の下に「××gの添加された糖類を含む」と表示される。〈例〉炭水化物37g、食物繊維4g、糖類送料2g(添加糖類10gを含む)。
 さらに添加された糖類の量が1日の上限値(50g)の何%にあたるかも表示される。
 具体的な表示の猶予期間は2018年7月26日なので、まだ新しい表示の商品は出てきてないが、米国では「缶ジュース1缶とドーナツ一つで軽く超えてしまう」と加工食品メーカーからの反発もあった。

 (6)日本で売られているコカコーラの表示では、炭水化物の量は100mLあたり11.3gとある。すべての炭水化物が添加糖類だとすると、500mL缶1本で1日分の上限値を超えることになる。
 この制度は、消費者の商品選択の目安となるだけでなく、加工食品への添加糖類のさらなる減少にもつながることが期待されている。

□植田武智(科学ジャーナリスト)「アメリカで「添加された糖類」の栄養表示へ」(「週刊金曜日」2017年2月24日号)
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