語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【朝日俳壇抄】ヒアリ来る地球はますます炎えてくる ~7月24日~

2017年07月24日 | 詩歌
【凡例】☆印は共選作。①、②以下丸文字は一席、二席等。

<長谷川櫂選>
 ①はるかなるものの一つに蝉の穴 (北杜市)北村和利
 ③滴りの下に光の溢(あふ)れけり (山口市)田福信介
 ④敗戦の一句八十一の夏 (川崎市)池田功
 ⑦人魂(ひとだま)のやうに鵜篝(うかがり)現れし (岩倉市)村瀬みさを
 【評】一席。あまりの暑さにぼうっとしてしまう夏の真昼。そんな感じのする一句。(中略)三席。滴る水の観察。落下して砕けるところに飛びちる光の粒子たちよ。

<大串章選>
 ①壁を這ふ蜘蛛に音なき迅(はや)さあり (八代市)山下さと子
 ④かの夏や野外映画のなつかしく (越谷市)新井高四郎
 ⑤下町に残る昭和の夕焼かな (新居浜市)三浦八重子
 ⑩香港のにほひ濃くなる熱帯夜 (熊本市)寺崎久美子
 【評】第一句。「音なき迅さ」が蝿捕蜘蛛の動きを見事に言い表している。(後略)

<稲畑汀子選>
 ①忘るるは呆(ぼ)けるに非(あら)ず只(ただ)涼し (高崎市)山本春樹
 ⑥ばらばらにされし獲物や蟻の列 (米子市)中村襄介
 ⑧七夕や夢は必らず叶ふとも (神戸市)森岡喜恵子
 【評】一句目。ふっと人の名前を忘れた作者。でも呆けたのではなく、涼しさに只心を許したのだと承知する。(後略)

<金子兜太選>
 ②ヒアリ来る地球はますます炎(も)えてくる (横須賀市)友松茂
 ③老人に心眼のあり牛蛙 (熊谷市)内野修
 ⑩文明を嫌ひて団扇手放さず (今治市)横田青天子
 【評】 芝岡さん、広島にて偶然に被爆死した丸山定夫を思う。嗚呼無念。友松さん、ヒアリ来る、炎えてくる、の恐怖を含むリズム良し。内野さん、牛蛙の存在感に、悟りを得た老人をみる。十句目、横田氏、生き様の皮肉。

□「朝日俳壇」(朝日新聞 2017年7月24日)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【朝日俳壇抄】為政者の驕り露見や青嵐 ~7月10日~
【朝日俳壇抄】叩かれて叩かれてなほ油虫 ~7月3日~
【朝日俳壇抄】政権も徒党に堕すや走り梅雨 ~6月26日~
【朝日俳壇抄】妻はヨガ吾は吟行風薫る ~6月19日~
【朝日俳壇抄】あの人も人間失格桜桃忌 ~6月5日~
【朝日俳壇抄】地響きに滝の重さのありにけり ~5月29日~
【朝日俳壇抄】聖五月人には青の時代あり ~5月22日~
【朝日俳壇抄】戦後よりまた戦前へ四月馬鹿 ~5月15日~
【朝日俳壇抄】空爆の次は花見のニュースかな ~5月7日~
【朝日俳壇抄】鞦韆は蹴るべし愛は返すべし ~5月1日~



コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【後藤謙次】反自民の受け皿... | トップ | 【南雲つぐみ】水出しのお茶... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

詩歌」カテゴリの最新記事