語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【朝日俳壇抄】戦後よりまた戦前へ四月馬鹿 ~5月15日~

2017年05月15日 | 詩歌
【凡例】☆印は共選作。①、②以下丸文字は一席、二席等。

<稲畑汀子選>
 ①押し寄せる芽吹き明りの大玻璃(はり)戸 (長野市)鈴木しどみ
 ③挨拶に行く先々に桜餅 (松本市)唐澤春城
 ⑤囀(さえずり)や一樹一樹に空のあり(柏原市)早川水鳥
 ⑧信濃路の右も左も花盛り (大阪市)友井正明
 ⑨花吹雪散り込む峡の宿に泊(は)つ (尼崎市)橋本絹子
 ⑩終着を吉野と決めて花の旅 (福山市)広川良子
 【評】一句目。玻璃越しに見える庭の情景。押し寄せるような木々や草々の芽吹きが始まった。待たれた春への喜びが伝わる。(中略)三句目。桜の花の頃に訪ねる家のもてなしであろう。

<金子兜太選>
 ①戦後よりまた戦前へ四月馬鹿 (いわき市)馬目空
 ③ゆくりなく初蝶に会ふ皇居かな (米子市)中村襄介
 ⑤風を呼ぶ春落日の鴉かな (さぬき市)野崎憲子
 ⑥亀鳴くや砥石の面(つら)は己(おの)が面 (河内長野市)西森正治
 ⑩立つときはいつも桜がありにけり (箕面市)櫻井宗和
 【評】馬目氏。言うこと為(な)すこと戦前そっくりだ。嘘(うそ)がまかり通る。ああ嫌だ。(中略)中村氏。皇居を訪れたら初蝶に出会った。その新鮮さよ。

<長谷川櫂選>
 ①全円となるぼうたんの真昼かな (合志市)坂田美代子
 ④端午の日かつて曽祖は鉄兜 (所沢市)小坂進
 ⑦シヤボン玉我等も若き父母なりき (東京都)廣川風韻
 ⑨花見酒孔子孟子も屁の河童 (横浜市)渡辺萩風
 ⑩今日からは東京人や花吹雪(大和市)小田島恵子
 【評】一席。牡丹の爛漫(らんまん)たる感じ。これが「全円」である。単に牡丹の形のことではない。(下略)

<大串章選>
 ②故郷にまた無人駅さくら咲く (戸田市)蜂巣厚子
 ③島桜白し灯台なほ白し (東京都大島町)大村森美
 ⑩山桜淋しくなればふぶきけり (川口市)青柳悠
 【評】(前略)第二句。電車の乗客が減り、無人駅が増えていく。故郷の過疎化は大きな課題。第三句。白い灯台の上には青空が広がっている。心洗われる光景。

□「朝日俳壇」(朝日新聞 2017年5月15日)
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 【参考】
【朝日俳壇抄】空爆の次は花見のニュースかな ~5月7日~
【朝日俳壇抄】鞦韆は蹴るべし愛は返すべし ~5月1日~

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