2014年10月02日 08:00
淀川長治 映画ベスト1000 18
え〜、今日は戦前の日本において最も高く評価されたフランスの映画監督、ジュリアン・デュビビエの作品が登場します。
思えばオジサンがデュビビエ作品を初めて見たのは高校生の時。水野晴郎氏の解説でお馴染みの水曜ロードショーで「望郷」を見たのが最初でありました。放送翌日にクラスの映画好きの連中の印象を聞くと、「古臭い映画」という答えが返ってきました。しかしオジサンは、この古い映画に何か感じるものがあったのであります。当時それがなんであるかは判らなかったのですが、その1年後くらいに彼の代表作の一本である、「舞踏会の手帖」を見るに至り、それがペシムズムであり、1930年代のデュビビエ作品に共通して流れているテーマであることを知ります。そして、ペシムズムはオジサンの人生観に大きな影響を与えることとなったのであります。
前置が長くなりましたが、今日紹介する作品は、戦火を避けてハリウッドへ渡った時代の代表作で、1942年に作ったオムニバス映画、「運命の饗宴」(紹介はコチラ)です。とりあえず、淀川先生の解説をお読み下さい。
第一話はシャルル・ボワイエ、リタ・ヘイワース、トーマス・ミッチェルが共演。
人妻をそそのかした人気絶頂の舞台の二枚目(ボワイエ)。夫に撃たれた死の瞬間、うぬぼれの強いこの役者は、恋に狂ったこの人妻が抱きついてくると思ったら、彼女は夫にしがみつき、夫婦でこの死を事故死にしようと相談したんですね。ところがこの役者はカラカラ笑って立ち上がって「お二人さんよ、弾はそれて壁に当たった。心配無用」。夫婦はホッとした。役者は自分の車のの乗り込みましたが、それは死の迫る苦しみを抑えた一世一代の芝居。彼は走る車の中で死にました。この作品でボワイエは名優としての貫禄を十分に見せましたよ。
デュビビエ監督は本国では「アルチザン(職人)」などと言われ(特にヌーベルバーグの一派に)、日本のように高い評価を与えられていない面がありますが、少なくとも「舞踏会の手帖」だけは是非見ておくべき作品である、そんな風に思っているオジサンです。