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あれは何年前だったろう
毎日のようにカメラを持って
水路に沿った細道を
散歩していた頃がある

五月には石垣の野ばらが咲くのを
楽しみにしていた
いつの頃か野ばらは伐られていた

けものみちを上った山頂には
梅の花が咲いていた
更に上がった先には蜜柑畑があり
秋になると蜜柑はたわわに熟れていた

畑の石に腰かけて夫とお弁当を食べたこと
愛犬をつれて上がったことなど
いまでは夢の中の出来事のようだ

もうその山に上がることはなく
たまに山裾の細道を散歩すると
人棲まぬ屋敷に庭木だけが聳えたつ


今朝通った川沿いの屋敷は
知らぬ間に駐車場になっていた

かつて色とりどりの花が咲き
塀沿いに老女が佇っていたのは
この間のような気がするけれど
もう何年も経っているのだろう