☆スタチン製剤による子宮筋腫治療の可能性 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、スタチン製剤による子宮筋腫治療の可能性を検討した報告です。

 

F&S Sci 2024; 5: 80(米国)DOI:https://doi.org/10.1016/j.xfss.2023.11.005

要約:ヒト子宮筋腫(平滑筋腫)細胞をマウスに移植し、活性化シンバスタチン10 mg/kg(12匹)および20 mg/kg(15匹)を投与し、対照群(7匹)との違いを検討しました。移植片の体積はシンバスタチン投与により20 mg/kg投与で53%縮小しました。移植片の細胞外基質が溶解し、細胞外基質形成が減少し、コラーゲン発現が低下しました。また、MMP1、MT1-MMP、MMP2、LRP1が有意に増加していました。

 

解説:子宮筋腫(平滑筋腫)は最大77%の女性に認められ、25~50%の方で日常生活に影響する症状があります。米国では、子宮筋腫により年間約20万件の子宮摘出術が行われており、年間344億ドルの医療費がかかっています。根治治療は子宮摘出術ですが、将来の妊娠の可能性を残すために子宮を温存をご希望の場合が少なくありません。現在の薬物療法は、月経や排卵を一時的に止めるだけで、薬剤をやめると子宮筋腫は元に戻ってしまい、根本的な解決になっていません。子宮筋腫の特徴は、無秩序な細胞外基質の大量沈着ですので、細胞外基質に作用する薬剤は治療の可能性を秘めています。その候補の1つがシンバスタチンです。シンバスタチンは、in vitro、in vivoともに、子宮筋腫に対する細胞増殖抑制とアポトーシス作用があり、細胞外基質が減少することが知られています。しかし、ヒトでの検討はなされていませんでした。本論文は、このような背景の元に行われた研究であり、シンバスタチンによるヒト子宮筋腫の縮小効果を示しており、子宮筋腫治療の可能性を示しています。ホルモン製剤でなく、内服薬で長期使用が可能なスタチン製剤は、手術療法に取って代わる可能性を秘めています。

 

子宮筋腫の治療については、下記の記事を参照してください。

2018.5.9「子宮筋腫治療における子宮温存方法の比較

2016.4.20「FUSによる子宮筋腫治療の効果

2014.12.11「子宮筋腫の新たな治療戦略

2013.9.30「☆子宮筋腫と妊娠

 

スタチン製剤については、下記の記事を参照してください。

2018.12.30「☆スタチン製剤が筋腫の治療に有効!?

2018.4.9「治療抵抗性の抗リン脂質抗体症候群にはスタチン製剤が有効

2018.4.7「重症妊娠高血圧症候群にはスタチン製剤が有効:パイロットスタディー

2015.4.10「重症妊娠高血圧症候群にはスタチン製剤が有効 その2

2015.2.25「重症妊娠高血圧症候群にはスタチン製剤が有効 その1