111 『サラバ!』-西加奈子 | おかのうえまで

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そんな感じで、ゆっくり
書評書いていきます。

『サラバ!』
西加奈子



発刊 2014年
出版 小学館


もう暖かい日も多くなってきました。
春は一番好きな季節です。
だって寒くも暑くもない…

さて、今回は西加奈子さんの『サラバ!』
『こうふくみどりの』ぶりの西さん。
今作は直木賞受賞作であり『満願』と同じく本屋大賞候補作です。
上下巻からなる中々重厚な一作。
発売時から気になってたんですがやっと読めました。

イラン、日本、エジプト…
各国を転々としながらも生活する家族がテーマ。
狂気的な姉、姉と対立する母らしくない母、去っていく父、
どこかで彼らの様にならぬ様に、
出来るだけ良い子に見られる様に、
時には空気として存在を消せる様にして生きている主人公、歩。

上巻では上手く振るまい、
壊れていく家族の中で上手にやっていく歩。
上巻だけ読んだ時は全く好きになれない物語かと思ったら、
下巻でしっかり転機はやってくる。

下巻からは本当にすごい。
西さんの怒濤の表現でストーリーが押し寄せてくる。
サトラコヲモンサマの真実、
姉の超進化、そして個人的に一番の見所はティラミス…

西さんが出ていたNHKの番組で、
小説は伝えたい言葉にいくまでたくさんの回り道をしなければいけない。
そう言っていたのを思い出した。
主人公の歩とたくさん回り道しながら最後にやってきたラストは感動。
伝えたい言葉がしっかり伝わりました。

「歩、歩きなさい」の台詞は
西さんがすごい笑顔で考えてそうだったり。
サラバ!が出てくるシーンは西さんっぽくて本当に好き。
作者の実体験をベースに魅了的な要素がたくさん詰まっている。
良い話でした、ハードの上下巻だけれど買って良かったと思える作品。
おすすめです。


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