ふるはしかずおの絵本ブログ3

『ゆりかごになりたい、とヤナギは言った』

木々が、おおきくなったら、何になりたいかを 語りあいます。

 

      ・・・

ナラが、ブナに 語りかけます。

 

 「ナラは、大きくなったらなにになるとおもう?」

 「さあねえ・・・なに?」

 「ナラのたんす

 

ブナは、ちょっと考えて、わたしは・・・

    

 「おもちゃ・・・つみ木とか、汽車とか」

   

  

カバノキは 「赤ちゃんのベッド」

ヤナギは   「ゆりかご」

ポプラは   「スプーンと おわんになるよ。あとは木ぐつ」

トウヒは   「バイオリンに なりたいな」

カエデも   「バイオリンに なりたい」

   

シダレヤナギは、いいました。

 

 「なんにもならない。シダレヤナギは朽ちる

  

  

トリネコは、「家の骨組みになる」

トウヒは、「クリスマスツリーになれるといいな」

トチノキは、「またトチノキになる、それだけ」

 

 

木こりが やってきた

 

ナラ、

ブナ、

カバノキ、

ポプラ・・・を切った。

   

でも、

小さなトウヒも そのままにした。

シダレヤナギには、手をつけなかった。

シダレヤナギは、言った。

    

  「さて、朽ちるか

    

   

シダレヤナギは・・・

   

 葉は 落ち、

 カビやキノコが 育ちはじめた。

 テントウムの 幼虫が、はいりこみ

 ハエが、たまごを うみつける

 アカハネムシ、カミキリムシが、幹をかじりとる。

   

 「たべられてる!」とトウヒが声をあげた。

 「朽ちるっていうのはこういうこと

 「そうか、わかった。みんな、なにかになるんだね」

    

小さなトウヒは、

おおきく りっぱになった。

そして、

トウヒは、夢をみた。

飾りが星のようにきらめく、クリスマスツリーになれますように。

    

          ・・・

10本の木には、それぞれ願いごとがありました。ナラはタンス、ナはおもちゃ、ヤナギはゆりかご、トウヒは、クリスマスツリー・・・ 絵本は、こうした木々の会話からできています。ナラとブナの会話の一部を紹介しました。巻末にそれぞれの木の専門的な説明があります。科学の絵本のようでもあり、おはなしの絵本のようでもあります。

     

実際の木は、絵本のように会話するわけではありませんが、地面の下で「菌類ネットワーク」をとおして、ほかの木と情報を交換し、栄養を共有しています。木々が互いにコミュニケーションをしているこの仕組は、「Wood Wide Web」と呼ばれています。

     

絵は木版画です。

      

       ・・・

※『ゆりかごになりたい、とヤナギは言った』 ベッテ・ウェステラ文、ヘンリエッテ・ブーレンダンス絵、塩崎香織訳、科学同人 2023年

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