人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

METライブビューイングでビゼー「カルメン」を観る ~ アイグル・アクメトチナ、ピョートル・ベチャワ、エンジェル・ブルー、カイル・ケテルセンと指揮者ルスティオー二にブラボー!

2024年03月12日 00時08分49秒 | 日記

12日(火)。わが家に来てから今日で3346日目を迎え、米映画界最大の祭典である第96回アカデミー賞の授賞式が10日、米ハリウッドで開かれ、宮崎俊監督の「君たちはどう生きるか」が長編アニメーション賞に、山崎貴監督の「ゴジラー1.0(マイナスワン)」が視覚効果賞を受賞した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     これを機会に ゴジラの音楽を書いた伊福部昭の名前も 一層 世界に広まってほしい

 

         

 

昨日、夕食に「ビーフカレー」と「生野菜サラダ」を作りました ビーフはいつも通り牛バラ肉を使っていますが、食べやすく美味しいです

 

     

 

         

 

昨日、新宿ピカデリーでMETライブビューイング、ビゼー「カルメン」を観ました これは今年1月27日に米ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演されたオペラのライブ録画映像です 出演はカルメン=アイグル・アクメトチナ、ドン・ホセ=ピョートル・ベチャワ、ミカエラ=エンジェル・ブルー、エスカミーリョ=カイル・ケテルセン、スニガ=ウェイ・ウー、フラスキータ=シドニー・マンカソーラ、メルセデス=プリアナ・ハンター。管弦楽=メトロポリタン歌劇場管弦楽団、合唱=メトロポリタン歌劇場合唱団、指揮=ダニエル・ルスティオー二、演出=キャリー・クラックネルです

 

     

 

「カルメン」はジョルジュ・ビゼー(1838-1875)がプロスペル・メリメの同名小説を原作に、リュドヴィック・アレヴィとアンリ・メイヤックの台本により1873年から翌74年にかけて作曲、1875年3月3日にパリのオペラ・コミック座で初演された全4幕から成るオペラです

物語の舞台は1820年頃のスペイン、セヴィリャ 兵士ドン・ホセはたばこ工場で働くカルメンとの恋に溺れ、軍籍まで失うが、やがてカルメンは闘牛士エスカミーリョに心移りする ホセには故郷に残した許嫁のミカエラがいたが、彼はカルメンを諦めきれず追い求め、彼の愛を拒否したカルメンを闘牛場の入口で殺める

 

     

 

1980年イギリス生まれの女性演出家キャリー・クラックネルの舞台・演出は、舞台を19世紀のスペインから現代アメリカの ある産業都市に移し替えています 第1幕でカルメンたちが働いているのは、たばこ工場ではなく兵器生産工場です 軍隊の兵士たちが工場を警備し彼女たちを管理しています。第2幕の酒場のシーンは、大型トラックの荷台が舞台になっており、トラックの車輪が回り、背景の壁の照明の点滅がスピード感を醸し出しています 第3幕の密輸団の野営キャンプのシーンは、なぜか大型トラックが横倒しになっていて、密輸品は武器という設定です 第4幕の闘牛場のシーンは大掛かりな観覧席が登場します。エスカミーリョは闘牛士ではなくロデオのカウボーイです

こうした「舞台を現代に置き換える」演出について、METピーター・ゲルブ総裁はインタビューに答え「過去の物語を扱うオペラを、現代の観衆にも身近に感じてもらう必要がある。そのための工夫として新しいアプローチの演出が求められている」という趣旨のことを語っていました 問題はその演出に説得力があるかどうか、です その点、今回の演出は全く違和感がありませんでした これはビゼーの音楽があまりにも素晴らしく、「どんな演出でも受けて立つ」度量の大きさを持っているからであり、キャリー・クラックネルの演出は「歌の邪魔をしていなかった」からです この手の演出は、時に「演出のための演出」になりがちですが、そうはなっておらず説得力がありました

さて、肝心の歌手陣です

カルメン役のアイグル・アクメトチナはロシア連邦バシコルトスタン共和国出身の現在27歳のメゾソプラノです 同共和国のウファ芸術大学で学び、2017/18シーズンから英国ロイヤルオペラのジェット・パーカー・ヤング・アーティスト・プログラムに参加し「運命の力」や「カルメン」などを歌い、18/19シーズンにはバリー・コスキー演出「カルメン」タイトルロールを歌いました 実は、私は彼女が2020年11月29日に新国立劇場のオペレッタ「こうもり」のオルロフスキー侯爵を歌うのを聴いています 当日のtoraブログには「声が良く通り存在感が抜群でした。今回の公演で最も印象に残りました」と書いています その印象は今回も全く変わりません ハバネラ「恋は野の鳥」、「セギディーリャ」をはじめ、ロシア出身のアンナ・ネトレプコを凌駕するかと思われる圧倒的な歌唱力と演技力で聴衆を魅了しました 幕間のインタビューで「これまでいろいろな役を歌ってきましたが、そのうち半分がカルメンでした」と答えていましたが、「現代のカルメン、それはアイグル・アクメトチナ」と言っても良いでしょう

ドン・ホセ役のピョートル・ベチャワは1966年ポーランド生まれのリリック・テノールです レパートリーが広く、今やMETを代表する歌手として大活躍しています ドン・ホセ役は今回が初挑戦とのことですが、この人は何を歌っても最高点を獲得します とくに印象的なのは歌っていないときの演技です。まさに本人になり切っているとしか言いようがない迫真の演技です ところで幕間のインタビューで「ドン・ホセは過去に人を殺している」と語っていましたが、原作はそうなっているのだろうか? ちょっと気になりました また、ラストのカルメンを殺すシーンは、ほとんどの演出は「ナイフで刺し殺す」となっていますが、本演出では「バットで殴り殺す」となっていて、殴るシーンは衝撃的でした

ミカエラ役のエンジェル・ブルーは1984年カリフォルニア生まれのソプラノです ロサンゼルス・オペラ若手芸術家育成プログラムに参加後、国際的キャリアをスタートさせました 余裕のある歌唱が印象的で、可憐な中にも芯の強いミカエラを見事に歌い演じました

エスカミーリョ役のカイル・ケテルセンは1971年アイオワ州生まれのバスバリトンです 幕間のインタビューで「METでエスカミーリョを歌うのは今回で25回目です」と答えていましたが、風貌といい堂々たる歌唱力といい、まさにエスカミーリョそのものです

特筆すべきはルスティオー二指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団の渾身の演奏と同合唱団の迫力あるコーラスです

ルスティオー二は幕間のインタビューで、「カルメンの初演は失敗でした その後の成功を見ずにビゼーはこの世を去りました 彼の死後にカルメンが世界中で絶賛されていることをビゼーに教えてあげたいくらいです われわれはビゼーに、そしてビゼーの音楽に敬意を表して演奏しなければなりません」と語っていたのが印象的でした

METでも、新国立オペラでも、「カルメン」は数年に一度は上演される人気オペラですが、高揚感溢れる前奏曲、ヒットメロディーのオンパレード、ストーリーの分かり易さ・・・これらの要素を考えれば、その理由が良く分かります 今回の上映は休憩時間(約10分)・インタビュー等を含めて計3時間37分ですが、あっという間でした

METライブビューイング「カルメン」の上映は都内では新宿ピカデリー他で14日(木)まで 東銀座「東劇」は21日(木)までです

 

     


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