民法 司法試験令和5年第5問肢ウを考えてみよう

【前回のあらすじ】

前回は,民法司法令和5年5問肢イを検討しました。
次は,肢ウからです。
それでは、はじまりはじまり。

スク東先生:こんにちは。調子はどうですか。

はい,まあまあです。

スク東先生:そうですか。

では早速,問題の検討を始めていきましょう。

民法司法令和5年5問肢ウです。

「ウ.AのBに対する意思表示がAの重大な過失による錯誤に基づくものであった場合には,Aに錯誤があることをBが重大な過失によって知らなかったとしても,Aは,錯誤を理由にその意思表示を取り消すことができない。」

正解はどうでしょう。

誤っています。

スク東先生:なんででしょう。

条文があったと思います。(95条3項1号)

スク東先生:なるほど,確認してみましょう。

(錯誤)
民法第95条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
 一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
 二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
 一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
 二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
4 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

スク東先生:確かに,条文があります。

はい,ただ,例によって意味を取らないといけません。考えないと忘れてしまいますからね。

スク東先生:そうですね。よくわかっております。では,どう考えていきましょうか。

うーん,まず原則でしょうか。表意者に重過失があったときは取消ことができません。これは,重過失のある者は保護に値しないからですね。

スク東先生:いいですね。錯誤は,表意者の保護を図るためにあります。表意者に,重過失がある場合,保護の要請が低いです。

はい,その上で,相手方が知っている場合,重過失の場合には,例外的に取消しを認めております。相手方が取引上保護に値しないときは,表意者を保護すべきだという価値判断が働いているのだと思います。

スク東先生:まあ,そうですね。相手は,表意者に重過失があることを知っていれば,教えてあるべきだったのでしょうね。自分に得があると思って,俗っぽいいいかたになりますが,表意者の錯誤に悪乗りしている感はあります。

なるほど,確かに,状況を理解すれば,表意者を保護すべきだと思います。

スク東先生:そうですね。この辺りは,条文はあるのですが,記憶に頼ると混乱すると思います。実際にイメージして検討されるとよいでしょう。それでは,本日の検討はここまでとしましょう。次回は,また来週お楽しみに。



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