長唄三味線/杵屋徳桜の「お稽古のツボ」

三味線の音色にのせて、
主に東経140度北緯36度付近での
来たりし空、去り行く風…etc.を紡ぎます。

深夜の胡蝶

2024年04月27日 01時18分35秒 | 折々の情景
…時計を眺めると12時37分、珍しくとても理想的な時間に就寝できそうだなぁ…と居間のあれこれを片付けていたところ、ハタハタハタ…と中空を羽ばたくものがいる。
おやまぁ…と音の在処を探すと、



アゲハチョウが1頭、天井近くに積んである乱れ箱に止まった。
今日は日中、4頭ばかり越冬蛹が羽化して、昼過ぎには目出度く旅立っていったはずだが…
…そう言えば、本棚の裏のサッシの内側に、サナギが一つ在ったのを思い出した。



明日の朝、太陽の下に翔び立って頂こう…と宿主は眠た顔だが、お嬢さんは益々元気にパタパタと電灯の周りを飛び、天井を渡り歩いている。
仕方ないなぁ……

偶々傍らに、蔵書整理中につき、長き眠りから顔を出していた文庫本が一冊。



おやすみなさい。


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アブさん。

2024年04月24日 03時08分16秒 | 近況
午後の稽古が一段落して、外に出していた植木を部屋に入れたのと同時に、黒くて素早く飛ぶ賓客が一匹、稽古場に入ってきた。
一頻り、中空をブンブン右往左往していたが、ピタリと静かになった。
何処へ…と見回すと、黒くて意外と大きい蠅に似た虻にも見える虫が、お弟子さんが譜面をのせるテーブルの上にこちらを向いてピタリと鎮座している。
どうしたものかと様子を見に近づくと、逃げるでもなく阿るでもなく、例によって手を摺り足を擦りながら安閑と、平べったい面上にデンと座を占めておりゃる。
顔を眺めると何やら鼻が長くて、狂言面の嘯き(うそぶき)にも似たご面相である。

仕方ないなぁ…何か仕出かしそうな悪人づれにも見えないので放っといて、次の予定まで自分の稽古をすることにした。
するとどうしたことか、小一時間、私が独り浚っている間に、彼の賓客はそのままの姿勢で、長唄…三味線の音色を静かに聴いているのだった。

…さて、我が係累に4月23日の今日が命日のものは居ただろうか…と不思議な気がして考えた。
3月19日に最初の一輪が花開いた胡蝶蘭も、持てる蕾の総てが咲き揃って、そろそろ株の為にも切り花にしなくては…と思っていた。
明日は供花にしよう。



※表題写真は3月22日、下は3月19日に撮影したものです。
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newborn!

2024年04月12日 19時37分27秒 | 折々の情景
令和6年の春は、年々気の早くなるソメイヨシノ殿が思い掛けない茶目っ気を発揮して、大方の予想の裏をかき、4月に入ってからの開花となった。
なんと何年ぶりの新学期、新年度での桜でありましょうか…と、門出を祝うに常になく嬉しい心持ちがして、8日月曜日は薄曇りの花見に出掛けたが、次の日の火曜日は、これまたお天道様がムラっ気を起こして、暴風雨…春の嵐となった。



スズランの新芽も漸く頭を覗かせたものの、こう冷え込んでは幾ら花に誘われようとも、先駆けても良いこともありますまいから、もう暫くお待ちなさい…と越冬サナギたちに心のなかで言い聞かせていたところ…

そんな1週間が過ぎようという金曜日、曇天の寒さに午近くなってようよう、ベランダの植木に水をやりにゆくと、枝に小さきものがぶら下がっておりました。



そはいずくより来たりしか…と、又々今春も、人知れぬ処で密かに蛹化して、無事に羽化した魁の揚羽蝶が1頭。



よくまぁご無事で…と天敵どもや荒天を遣り過ごし、この世に成虫となって現れた強者を称賛しつつも、過剰なおもてなしはいっそ迷惑であろうと、そのままそっとしておきました。



いつの間にか枝に居なくなって出立したものと思っていたところ、午後も3時近くなって結界の外に出ていた姿を見つけました。
首尾よく伴侶に廻り逢えるとよいのだけれど…


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ことしの檸檬

2024年03月19日 10時00分55秒 | 近況
アゲハチョウ騒動記…揚羽蝶ラプソディ……ぅぅむ…と、とつおいつ悩みつつも、腰を落ち着けてパソコンの蓋を開ける間もなく、早や令和6年のお彼岸は来にけり。



幼虫たちが蝕んだ葉の形が心苦しく、半枯れの葉っぱを払ったら、檸檬樹は殆ど丸坊主の体となり、疎らな葉緑素にてこの冬を凌ぐ有り様となった。
それでも健気に春を迎えるまで三つの果実が残った。



一方で、結実せず冬を越した鉢を見ると、みな一様にシザーハンズ様の新芽を出して一陽来復を歓んでいる。



葉の少ないところへ、更に新芽を育てる余力の無さそうなユーレカ種も不憫である。
ちょうど彼岸とて、供物とするのが佳かろうと、収穫した。



今年の檸檬は、幼虫養育のために犠牲にされた分、些か小振りであったけれど、レモンイエローに耀く艶やかさは変わらない。
(大きさ比較のため、善光寺名物の八幡屋礒五郎の七味唐辛子を添えた)

今日が祥月命日の仏さまへ、御供物代わりに…
故人を偲ぶ河童の手拭いと一緒に。


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木曜日の邦楽演奏会

2024年03月04日 12時19分19秒 | お知らせ
新暦の3月3日、ひな祭りも過ぎましたが、我が心の拠りどころ、太陰太陽暦では令和六年睦月廿三日の月が二時間ほど前、西の地平に沈んだばかり。
(表題写真は3月2日早朝撮影、廿一日の月と富士山のツーショットです)

時間も価値観もただ、時の過ぎ行くままに変わって行くご時勢に、暫し立ち止まって、自分自身の立ち位置を顧みるひとときをお過ごしになるのは如何でしょうか?



来る木曜日、3月7日午後2時より、
新橋駅ごく近くの内幸町ホールにて、
"和の音の集い"というイベントがございます。

午後1時30分開場で、開演まで和楽器体験コーナーにて、日本の伝統楽器とふれあうトキメキ時間もご用意されております。

長唄演奏の部に、私ども杵徳会一門の若手による「小鍛冶/こかじ」お囃子入りで参加しております。

確定申告が済んでやれやれ…と心の余裕がお出来になった方々も、そうでないけど、平日の午後に新橋界隈でちょこっと一息つきたい方々も、
どうぞお越しになって下さいませ。
お待ちしております。
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梅花、照星に似たり

2024年02月17日 00時54分25秒 | 折々の情景
一日、一日と過ごしているうちに、年が改まってしまった。
2024年2月10日は、月暦の令和六年正月朔日、元日であった。
新暦の年末、常に懸案事項であった稽古場の模様替えに着手し、蔵書の整理に手を伸ばして以来、旧暦の新年を迎える今日に至っても、いまだ志し成らず、作業進行中なのである。



中学校への三味線授業の帰り道、谷保の天神さまを詣った。
だらだら坂の参道をのぼると冬木立の合間に、白い星々を頂く樹々が見えた。
ぉぉ、何と嬉しいこと…梅が咲いている。

梅林に走り寄りたい気持ちを抑え、ここは菅原道真公へ先に御詣りするのが筋であろう…と本社へ。





阿吽の狛犬さんの奉納年代は、苔むし細石の赴きさえ生じた台座から読み取るのは最早ムリであったが、霊長万物に対する不変の情愛は感じ取れた。





梅が枝に見とれていると、枝を透かした先の青空に三日月が浮かんでいる。
今日は人日、正月七日であるから、七日月である。















殆ど幹が枯れて表皮一枚でつながっている腰の折れた老木があった。
ぐるりと回ってみると、一枝が伸びていて、まだ盛んに花を着けている。



花びらが円くなく、しべが長いこの梅は何と言う名なのであろう。
忙中閑あり…暫し花の下に佇み、時の移ろいに往く諸事を偲んだ。
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〽️夕日も早く 落葉どき 梢の風に…

2023年11月24日 12時21分24秒 | お知らせ
月歴神無月も十日を過ぎまして、二十四節気では小雪。
新暦では11月30日、来週木曜日の宵の16時より、
東京の日本橋蛎殻町にございます日本橋公会堂(日本橋劇場)にて、
伝統長唄伝承の会の演奏会がございます。

この演奏会は、重要無形文化財「長唄」の総合認定保持者(つまり人間国宝)の先生方が、毎年、後継者の育成とわざの伝承を目的として研修事業を行いまして、その成果を発表する演奏会で、今年度で13回目を迎えます。



有り難いことに、私も研修生としてお教えを賜り、本年は、二世杵屋勝三郎 作曲の大薩摩物『忍車/しのびぐるま』に出演させて頂きますことと相成りました。

この忍車は、安政五(1858)年十月の、江戸市村座の歌舞伎の一場面で、北条時頼の時代の鎌倉が舞台です。作者は河竹新七…後の黙阿弥です。
初演時、七代目 市川團十郎が盗賊の出立ちで、暗闘(だんまり/暗やみの中で手探りで戦う状態を芝居仕立てにした歌舞伎の立廻りの上演形式の一つ)を勤めたとのことです。

歌舞伎舞台の書き割りが目に浮かぶ、山深い…いかにも深山幽谷の雰囲気を表した合方や、「通い小町」でお馴染みの深草の少将の百夜通いにかけた歌詞も唄い込まれている、短いながらも山賤(やまがつ)が登場するお芝居の世界観を、見事に音で表現した、素敵な曲です。

お時間叶いましたら、是非お越しくださいませ。
お切符など徳桜も扱っておりますので、ご連絡頂けましたら嬉しく存じます。
当日の番組は16時30分頃より

越後獅子(えちごじし) ※囃子入り
娘七種(むすめななくさ) ※囃子入り
忍車(しのびぐるま)
神田祭(かんだまつり) ※囃子入り

以上4曲が演奏されます。


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邦楽演奏会@吉祥寺

2023年10月15日 06時15分41秒 | お知らせ
おはようございます。
矢継早やのお知らせで恐縮ですが、来週末(今週末?)にも演奏会がございます。



ご予定の多い錦繍の秋、
お時間叶いましたら是非お越し下さいませ。
お待ちしております。
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世田谷loveな皆さまへ

2023年10月14日 12時25分55秒 | お知らせ
今年はまだか…と案じていた金木犀が、昨日、東京都内では一斉に花開いた様子。

当方のアゲハチョウの幼児たちも、今季何世代かを繰り返し(写真撮影はしているのですが、ご報告未だ成らず…同好の皆さまには御免なさい)、終齢幼虫が十数匹、青虫に成る前のゼブラちゃん達共々合わせて三十数匹居るのではないか…と思いながら10月の声を聞いて、アッと言う間の中旬、

幼虫の数が蛹化のための旅立ちばかりだけでなく、奇妙な減り方が夥しい…と、不思議に思っておりましたところ、擬似鳥の糞がどうやら本物のフンらしい…と気がつくに及び、これは…最早手遅れかもしれないが、と、蝶のお母さんが卵を産みやすいよう張り出させていたベランダの檸檬樹の枝に、鳥避けの網をすっぽり、被せました。

さて、今日と明日の2日間、小田急線の成城学園前駅より徒歩4分ほどの成城ホール(世田谷区砧総合支所)にて、
世田谷区民の総合文化祭が行われます。

下北沢に稽古場を構えます当社中も、明日15日、現代邦楽曲「むさしの」を演奏致します。
謡曲、三曲、日本舞踊の伝統芸能のほか、吟詠、合唱、ダンスなど多彩な舞台がお楽しみ頂けます。
お昼には、世田谷郷土伝統保存会 三土代会による、もちつき大会も行われ、ご来場の皆さまに振る舞われます。
世田谷の郷土色豊かな文化の博覧会、
皆さまどうぞお越し下さいませ。

追記:むさしの 出番は13時55分~14時10分の予定です。
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雄々しき虫

2023年10月13日 17時55分55秒 | ベランダ実記
 夕暮れ時に、檸檬の枝先でキッパリと世界を睥睨する青虫が居た。



彼の視線の先が気になって…



ベランダの結界である網の先なので、巧く撮れなかった幼虫の後ろ頭。
恐らく、彼が羽化した後の住処である、井の頭公園の御殿山雑木林を見ているものと思われる。

咲き初めた金木犀の香を愉しむが如き、こうべの上げようも頼もしく、
幼虫の無事と未来の棲み処の安寧なるを願う。



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吾妻錦絵と長唄、謡曲の饗宴~鈴木春信展@下北沢

2023年08月19日 23時55分13秒 | お知らせ
 Charmingな春信美人画展~長唄と謡の空間において
      開催のご案内を申し上げます
                                 
九夏三伏の砌、皆さまいかがお過ごしでしょうか、
さて、このたび、小田急線と京王井の頭線がクロスする文化の街、下北沢・武蔵屋画廊様に於きまして、横山實コレクションと、歌舞伎の三味線音楽である長唄、また能楽の謡曲のライブ上演をお愉しみいただける、展覧会を行うこととなりました。

この催しは、予てより、日本が世界に誇る江戸時代の浮世絵と、世界を一にする同時代の音曲を同じ空間で鑑賞して頂きたい…との願いから、幾たびか行って参りました試みですが、今回は劇場ではなく、ギャラリーという、ごく身近に作品の息吹を感じて頂ける空間で行います。

21世紀も二割方進みました今日、日本人が、自らの歴史の中で育み、紡いできた自分たちの伝統文化に触れる機会が激減しているという統計を目にしました。
西洋文化とは異なる立脚点、価値観のもとに生まれ、世界に類を見ない独特の日本文化に、日常的に親しんで頂きたいとの願いを込めまして、企画いたしました。

会期は来月9月19日㈫から24日㈰の6日間、入場無料です。
初日のみ夕方4時開場、会期中は連日11時開場で、夜7時まで
吾妻錦絵の開祖、鈴木春信の名品20点をご覧いただけます。

横山實先生による解説が毎日、午後2時半から
22日㈮、23日㈯には2回目が、夕方5時半から行われます。

また、今回は、春信が活躍した江戸時代の明和年間(1764~1772)に作曲された歌舞伎音楽である長唄を選曲しまして、日替わりで連日2回、正午と夕方4時半から演奏いたします。

さらに、今展覧会の目玉でもある見立て絵『風流やつし七小町 通い』にちなみまして、金春流シテ方・森瑞枝師による謡曲「通小町」のライブ公演が、19日夕方5時、22日と24日の午後3時半にございます。

ご多用のところ恐縮ではございますが、お運び頂けましたら幸甚に存じます。
皆さまのご来場をお待ちしております。        
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池のほとりに

2023年08月14日 15時51分56秒 | 折々の情景
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今週末の演奏会@成城ホール

2023年06月16日 06時32分02秒 | お知らせ
おはようございます。
今年は花の暦が早いようで、菖蒲園の様子が気になる一方、夏の高原からはニッコウキスゲ開花のニュースが届きます。
梅雨の晴れ間に覗く空がこんなに青いのならば、私もどこかへ行きたいもの…

揺すぶられる旅情を胸に秘め、
さて皆さま、今週末、こちらへお出かけになるのは如何でしょう?

6月も早や3週目の今週末18日(日)、
小田急線 成城学園前 駅北口 徒歩3分、
成城ホール(世田谷区/砧区民会館)にて、邦楽の演奏会がございます。

13時開演で終演は16時ごろ。
入場は無料、お出入り自由にて、
長唄、笛、囃子、小唄など、伝統的な古典邦楽から新作の現代邦楽などがお愉しみいただけます。
また、企画番組として長唄杵家流御家元・杵家弥七師の「三味線のお話」もございます。



杵徳社中は、
三味線三重奏曲「ペーパードール」
長唄「もみじ橋」
そして、歌舞伎舞踊「近江のお兼/おうみのおかね」としてご存じの方も多いかと存じますが、
古典長唄「晒女/さらしめ」を演奏いたします。

團十郎娘(だんじゅうろうむすめ)、というタイトルでもお耳になさった方もいらっしゃるかも、
7代目市川團十郎が、文化十(1813)年六月に江戸森田座で初演いたしました、八変化舞踊のうちの一曲です。

舞台は琵琶湖畔、花道を暴れ馬を追いかけて、田舎娘キャラを表す濃い緑色のきものに、布ざらしのたらいを抱えた力自慢の女の子・おかねが派手やかに登場します。

相撲の組み手の振りをして男衆と立ち廻りをしたり、まだ知らぬ恋へのあこがれを盆踊りの風情でしっとり舞い、越後獅子にもございます晒(さらし)の合方(あいかた)では、長尺の布を…現代で言えば新体操のように振り回しなびかせて踊るとても面白い番組で、開幕から3か月ものロングランの大人気を博したそうです。
近江の地名を詠み込んだ歌詞も、ご当地ソング的な旅情を誘います。

一口に晒の合方と言っても、バリエーションが豊富ですから、
越後獅子は三下りで、出稼ぎである大道芸の心情を描いた都市の憂鬱をも内包する曲調ですが、
晒女は二上りで、朴訥としたカントリーで鄙びた明るい農村、里の牧歌的雰囲気です。
三味線音楽の奥深さと申しましょうか。

七代目の團十郎と言えば、歌舞伎十八番を制定し、その豪奢な暮らし向きにお上から睨まれ江戸追放になり、また、子息・八代目に團十郎(のちに自殺しますが昭和の歴史やミステリー作家たちの格好のネタでして、20世紀には面白い小説が沢山ありました)を譲り、自分は五代目海老蔵を名乗り…云々と、エピソードのとても多い名優で、
四谷怪談の民谷伊右衛門に代表される色悪と、市川家のお家芸である荒事の両方を得意とした、思い馳せるだに、タイムマシーンで観に行きたい役者のひとりです。
今回は踊りは無く、地(じ)の演奏のみですが、江戸時代文化文政年間の芝居町の賑わいをご想像頂いて、ご観覧いただけましたら嬉しいです。

「近江のお兼」と申しますと、新橋演舞場での先代の七世中村芝翫丈の舞台が想い出されます。
当時、芝翫丈は体調を崩されて、私が物凄く愉しみにして伺った日は、当代の芝翫=当時・橋之助が代演でした。客席から悔しげに睨んでいた一観客に申し訳なさそうに踊っていた橋之助丈には、いま思うと、しみじみとごめんなさいです…30年以前の記憶。
芝居好きな人間というものは、自分の贔屓俳優に激しい執着をいだいているものなのです。

伊豆半島西海岸の松崎町に、江戸時代に左官の名工として名を馳せた入江長八(いりえ ちょうはち)の記念館がございます。
長八は、漆喰で彫塑する独自の技法を編み出した職人で、もう二十年近く以前、同記念館に参りましたところ、「近江のおかね」という画題での作品があり、びっくりしました。
長八は文化12年生まれとのことですから、七代目團十郎が活躍した同時代に生きて同じ江戸の空気を吸っていた人間です。
同記念館の土産用絵はがきがあったので記念に買い求めたのですが、いつだったかの午年の、年賀状の返礼に友人に送ったので、もう手元になく、写真でお見せ出来ないのが残念です。

…というように、キリがない近江のお兼に対する私のシンパシー…
冷静に真心を込めて演奏いたします。

ご来場をお待ちしております。

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長唄の発声・歌唱法ワークショップがあります。

2023年06月09日 21時15分20秒 | お知らせ
関東地方は梅雨入りしたようでございます。
空も晴れぬが、心も晴れぬお年頃の皆さまに、ひととき、浮世を離れ日本の伝統文化に触れていただければ、ほのかに明るいともしびが胸のうちに灯るかも知れません…

というわけで、
JR中央・総武線 及び 京王井の頭線 吉祥寺駅 北口徒歩3分の
コピス吉祥寺A館7階
(以前は伊勢丹百貨店 吉祥寺店でした。往年のTVドラマ「俺たちの旅」オープニングテーマで、中村雅俊と秋野太作、田中健が水浴びする池はこの前庭に在りました)
吉祥寺美術館 音楽室にて

6月17日 土曜日 夜19時より受付まして、20時ぐらいまで、
長唄の発声・歌唱法のワークショップがございます。
参加費は無料です。どなたでもご参加頂けます。
講師は生まれも育ちも生粋の吉祥寺ネイティブ、長唄杵徳会家元・杵屋徳衛です。

この季節にぴったりの"いたこ=潮来出島"(カタカナじゃないほうですょ…)
雨に濡れながらひそやかに咲く、水辺のあやめ草に恋心をそこはかとなく唄い込んだ素敵な曲を体験します。
 ♪いたこでじまの マコモのかげで アヤメ咲くとは しおらしや…

当月歌舞伎座で当代市川中車丈が熱演中の「ども又=傾城反魂香/けいせい はんごんこう」は、琵琶湖畔の土産物・大津絵がテーマになったお芝居です。
その大津絵の画題の一つが"藤娘”というキャラクターで、
昭和時代にⅥ尾上菊五郎が新演出で藤音頭入りの歌舞伎舞踊「藤娘」を再編し、人気曲に仕上げたのは有名なお話ですが、
そのはるか以前の、安政元年(1854=日米和親条約、締結さる)に落語でお馴染みの初代ではないほうの中村仲蔵が、
今回みなさまに唄って頂く「潮来」入りの趣向で上演して以来、
いたこ入りで踊る形態の藤娘もございます。しみじみして佳いものです。

ご参加下さった皆さまに、当日の教材の、特製「潮来/いたこ」杵徳譜の楽譜をプレゼントいたします。
定員は15名様で、予め前日の金曜日までに、
電話0334680330か、メールou.kinetoku@gmail.com
へ、ご予約をお願い致します。

とある古典芸能従事者の方が、体験レッスンをなさったとき、
メールでご予約があったので待っていたところ、いらっしゃらないので、ご連絡したら、
「予約はしたけれど行くとは言っていません」との、ご返事を頂いたとか。
なぞかけのような世の中になって参りました。

きっかけは軽い気持ちでありながらも、前向きなご参加をお待ちしております。
限られた時間でも、豊饒なひと時が皆さまにもたらされますように…
嬉しくお待ちしております。

【追伸】
同企画は7月15日(土)にもございます。
まったく同じ内容です。ご参加受付しております。
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明日の演奏会@吉祥寺

2023年06月03日 12時29分38秒 | お知らせ
新暦なれど6月2日の悪天候にて、昨日被災された皆さまに御見舞い申し上げます。

さて今日は旧暦四月十五日、夕暮れには美しい月も昇りましょうほどに、先ずは表題写真のご説明。
一年間双葉のままだった檸檬の実生がありまして、どうなるのかなぁ…と気にしておりましたところ、このほど目出度く脇芽が生えて参りました。
令和の一年寝太郎噺とでも申しましょうか、気長に暮らすと佳いことがあるものです。

ご案内が遅くなりましたが、明日4日(日)は、吉祥寺駅南口 徒歩2分の 武蔵野公会堂にて、
武蔵野邦楽連盟による、“邦楽 春の会”が開催されます。

開場は12時半、開演は13時。終演は16時の予定です。
古来よりの日本の伝統文化である長唄、箏曲、現代邦楽の演奏をお楽しみ頂けます。
入場は無料、お出入りは自由です。



ご来場をお待ちしております。
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