ソフィア・コッポラ監督「The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ」(2017年)をご紹介します。
舞台は1864年、南北戦争3年目。
南部側のバージニア州の人里離れた森の中にひっそりと佇むファーンズワース女子学園。
周囲から隔絶されたこの学園には、7人の女性~校長のマーサ(ニコール・キッドマン)と教師のエドゥイナ(キルスティン・ダンスト)、5人の女子学生~が暮らしていました。
ある日、森でエイミーがキノコ狩りをしていると、脚に大けがを負った北軍兵士マクバニー(コリン・ファレル)が倒れていました。
マクバニーは敵軍の兵士ですが、キリスト教精神でマーサらはマクバニーを看護することに。
ハンサムなマクバニーの世話をするうちに、アリシア(エル・ファニング)はじめ女学生達は自らの欲望が目覚めてゆくのを感じます。
そしてマーサも長く忘れていた欲望がうずくのでした。
マーサがそそくさと部屋から出て行った後、彼女の動揺を見透かしたマクバニーが「クックックッ」と笑いを堪える。
こいつはこなれたワルい男だ。
エドゥイナに好意を告げたマクバニーでしたが、女性陣が自分をめぐって争うのを愉しんでいました。
こうして学園に保たれていた静かで抑制的な調和が崩れてゆき、情欲、嫉妬と憎悪が渦巻いてゆきます。
結果、ショッキングな展開になるんです。
もちろん、悪いのはマクバニーです。彼女たちを弄んだんですから。
敵軍兵士のマクバニーを看護することは、マーサ達にリスキーなわけです。
でも彼女たちは助けてくれたわけですよ。 にも関わらず。
しかし、まだあどけない女学生がマクバニーの処遇についてある「提案」をする時の冷静な顔 。
その提案を聞いて決心、喜びの笑いを堪えるマーサの表情!(ニコール・キッドマンの熱演)
はぁ~…怖いですね。
色男マクバニーは学園に来るまでも女性たちを弄んできたと思うのですが、女性を本気で怒らせたことが無かったんじゃないでしょうか。
女性だらけの集団に 男一人がポンッと入ることになって、女性の集団に何かが動き始める。
そういう状況を観ていい気になってしまった経験のある男性は、この映画を観て特に変な汗をかいたんじゃないですかね。
1971年にドン・シーゲル監督がクリント ・イーストウッド主演で「白い肌の異常な夜」を作りました。
原作・原題は同じく「The Beguiled」です。
マクバニーの視線で恐怖を描いていました。
壁にマーサの影が映る…。
昔観ましたが怖かったですよ、これも。
「The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ」は、リメイクなんですが、ソフィア・コッポラが女性の視線で作ったんですね。
それだけにこう、真に迫るコワさがありました。
光の加減が印象的でしたね。自然光に見えるくらいなんです。
淡々と、でも耽美的なんですよ。