春はあちこちからいろいろな鳥のさえずりが聞こえてきます。ウグイス、シジュウカラ、ヒバリにイソヒヨドリ、声をたよりに姿を探すのがこの時期の楽しみです。我が家のあたりでよく耳にするのはシジュウカラの声です。というのも、庭のエゴノキにかけた巣箱で子育てをしているのです。日曜大工で巣箱を作り野鳥の入居を待ち続けて2年あまり、もうだれも住んでくれないのかと半ばあきらめていたところにシジュウカラが来てくれたのでとてもうれしくて、その暮らしぶりをそっと観察する日々です。
シジュウカラってどんな鳥?
シジュウカラはスズメくらいの大きさの鳥で、白い頬と胸元の黒いネクタイのような模様が特徴です。オスのネクタイのほうが太くて黒々としていて、春になると見晴らしのいい電線にとまって、よく響く声でさえずっているのを見かけます。
鳴き声1
鳴き声2
鳴き声3
我が家の庭の常連さんといえば、このシジュウカラと、エゴノキの実を食べにやってくるヤマガラです。共にカラ類とよばれる身近な野鳥で、木の洞や巣箱などで子育てをするそうです。頻繁に我が家に来てくれるのですから、気に入った住まいがあれば暮らしてくれるんじゃないかしら、そんな思いつきから巣箱を作ってかけたのが、2021年の秋のことでした。
待てど暮らせど…ついに入居者現る!
巣箱をかけて程なくしてシジュウカラが内覧に訪れたのですが入居はなく、その後も冷やかし客のシジュウカラがちらほらあるばかりで、ヤマガラにいたっては近づきもしませんでした。やがて、思いもしなかったヤモリが住みついてしばらく暮らしていましたが、半年ほどでその姿も見なくなりました。
ヤモリが引っ越した後は空き家のままでしたので、巣箱をきれいに洗い今までより少し高いところにかけ直して、野鳥の入居を待つことにしました。すると今年、ついに興味を示してくれるシジュウカラが現れました。立春の少し前から、巣箱の中をのぞいたり、まわりをせわしなく飛び回ったりするシジュウカラが1羽、時には2羽でやってくるようになったのです。
気になる物件ではあるようなのですが、巣箱の穴の大きさがしっくりこないのか、くちばしで何度もつついて穴を広げようとするかのようなしぐさをしたり、巣箱の中に入っては出るのを繰り返したりして、なかなか決断がつかない様子。かれこれひと月にもおよぶ念入りな内覧と立地調査を経て、3月のはじめにようやく入居を決めてくれたようです。それがわかったのは、一羽が口いっぱいに苔をくわえて巣箱に入るところを見たからでした。
巣作りを担うのはメスで、苔をたくさん持ち込んで巣を整えるそうなので、我が家の巣箱に落ち着くことにしたのは間違いなさそうです。
巣作りがはじまった
シジュウカラの声が聞こえると、家の中からそっと様子をうかがいます。巣箱近くの枝にとまってゆったりとした声でさえずっているオス。ふいに高くて短い鳴き声に変わったと思ったら、巣穴からメスがぴょこっと顔を出し、素早くあたりを見回してからあっという間に飛び去ります。その後を追うオス。シジュウカラは鳴き声で会話をしているそうなので、オスはあたりを見張っていて、メスに安全なタイミングを知らせているのかもしれません。
やがてたくさんの苔をくわえてメスが帰宅、どこで見つけてくるのか青々として見るからにやわらかそうな苔です。しばらくするとまた出かけていきました。
数日たつと、今度は白いふわふわした毛のようなものをたくさんくわえてくるようになりました。よく見ると動物の毛で、色や毛足の長さからして、どうやらご近所さんの大型犬の毛を失敬してきているようです。
メスが巣の中にいるときに耳をすますと、コッコッコッコッ、コッコッコッコッと、かすかに音がします。もちこんだ苔や毛をくちばしでつついて敷きつめているのでしょうか。小さな体で何往復もして準備をする姿を見ていると、何事もなく無事に子育てできますようにと願うばかり。これからしばらく、目が離せない日が続きそうです。