社会保険労務士酒井嘉孝ブログ

東京都武蔵野市で社労士事務所を開業している酒井嘉孝のブログです。
(ブログの内容は書かれた時点のものとご理解ください)

年末年始休暇・休業を会社が勝手に短くする、延ばすことは良いのか

2023年12月31日 16時20分20秒 | 社会保険・労働保険
特定社会保険労務士の酒井嘉孝です。

年末年始の休暇・休業の方も多い時期かと思います。
一方で年末年始休暇を楽しく過ごすことができるのはこの時期にも多くの働いている方がいらっしゃるからであり、たいへん有り難く思います。

年末年始の休暇休業がある会社にお勤めの方は就業規則に例えば、『12月29日から1月3日までの間は休業とする。』などと具体的に時期を定めて規定されていることが多いです。
就業規則に具体的な休日の日が定められていれば原則会社も労働者もそれに沿って休みとしなければなりません。

労働者の側が12月28日や1月4日を年次有給休暇にして実質的に休暇を延長する分には構いませんが、特に会社はこれを短縮したり延長したりすることはできません。
たまに年末最終日は大掃除だから、年始最初の日は明けましておめでとうの挨拶をするのが当たり前だからと年休を取ることは罷りならんとする会社を見かけますが、年休は労働者の希望を優先するものであり、事業の正常な運営を妨げる場合に限り、会社側に「時季変更権」が認められています。
事業の正常な運営を妨げるというのは休まれると会社が立ち行かなくなるというレベル感のもので、大掃除と明けましておめでとうの挨拶は事業の正常な運営とは考えにくいので時季変更権は行使できないでしょう。

話がそれましたが、例えば『12月29日から1月3日までの間は休業とする。』という年末年始休業の就業規則の会社で「今年は曜日の並びが悪いから1月4日も休みにしよう」とするのは良いものなのでしょうか。
休みが増えて良いようにも見えますがただ休みにしてしまうと、月給の方の給料は変わらないでしょうが時給や日給で働いている方は賃金が下がってしまうこととなるため労働条件の不利益変更となります。

一方で『12月29日から1月3日までの間は休業とする。』という同様の例の会社で「ライバル会社が12月29日も稼働しているので我が社も出勤日とする」と鶴の一声で休みが減る場合はどうでしょうか。
時給や日給の方は稼働が増えて賃金が増えますが月給の方は給料が変わらずに働く時間が増えるのでこれも労働条件の不利益変更となります。

労働条件は労働契約法に合意がなければ変更できないと定められています。
(労働契約の内容の変更)
第八条 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。
(就業規則による労働契約の内容の変更)
第九条 使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

従って労働条件の不利益変更となるうる、会社が労働者の合意なく休暇・休業を延ばしたり短くしたりすることはできないということになります。

では会社にとって全く方法がないのかと言うとそういうことはなくて、
・事前に休業日について就業規則を変更しておく、
・(休暇休業を増やす場合)年次有給休暇の計画的付与の手続きを行なっておく、あるいは休みとなって賃金が減る場合会社都合の休業として休業手当を支払う、
などが考えられます。

休日数が変動することにより、割増賃金の時間単価や休日出勤の単価、遅刻早退の控除の時間単価への影響も考えられ、慎重かつ計画的に対応することが求められます。
とにかく、思いつきや鶴の一声で休暇や休業日を変更するのは会社にとってリスクが大きいです。


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