Art Tree ブログ

アートツリー出版社のブログです。

Tokyo Contemporary Art Award 2022-2024 受賞記念展

2024年04月17日 | 日記
★取材レポート★

東京都とトーキョーアーツアンドスペース(TOKAS)は、2018年より中堅アーティストを対象とした現代美術の賞「Tokyo Contemporary Art Award(TCAA)」を実施しています。受賞記念展が東京都現代美術館で2024年7月7日まで開催中です。
第4回の受賞者は、サエボーグさんと津田道子さんです。
鑑賞者は展示作品をただ鑑賞するだけではなく、展示室内でのふるまいが作品の一部となる体験ができます。

サエボーグさん(左)と津田道子さん(右)


サエボーグさんの作品は《I WAS MADE FOR LOVING YOU》です。
展示室内の中心にあるステージに、人工的に作られた一匹の犬がいます。鑑賞者はステージの上の犬が動いたり寝そべったりする様子を見ることができます。



鑑賞者が近寄って手を差し伸べると、犬は寄ってきて前足を差し出してきます。鑑賞者の立場は見る側から見られる側に変わります。



サエボーグさんはこの作品を通して、人がペットをケアしているが、人もペットにケアされていること、人間とペットの境目、ペットと家畜の境目について考えています。人にケアされることで存在する弱い立場のペット=犬と人間がどのような関係を作れるか、繊細なものを感じとってほしいといいます。

津田道子さんの展示は「Life is Delaying 人生はちょっと遅れてくる」です。
そのうちの作品の一つに、《カメラさん、こんにちは》があります。
ダイニングテーブルがセットされた空間に、3人の人物が演じる家族の姿が写真と映像で展示されています。演じている役者さんはオーディションで選ばれた12人で、同じ脚本で演じています。



津田さんは、2008年頃に1988年に撮影された映像を見つけました。それは津田さんが8歳の時に初めて家にきたビデオカメラで撮影した家族の様子でした。見つけた時にこれをいつか作品にしたいと思っていながら作品にはしてきませんでしたが、コロナ禍で家で過ごす時間が増えて生活が変わり、 身体についても考え今回の作品で取り組むことにしたそうです。



津田さんは最初、役者さんを3人選ぶはずでしたが、オーディションをするうちに、役者さんによってたくさんの家族が出来上がることに気づきました。
様々な役者さんが演じることで、同じ脚本から色々な家族が立ち上がります。津田さんの個人的な経験が起点となっている作品ですが、役者さんによって男女の役割が変わるなど、様々な家族の姿が映し出されています。
鑑賞者も、ダイニングテーブルが中心にある展示空間で、集団の中での人々の立ち位置について考えるでしょう。

(木場公園内にある東京都現代美術館)


サエボーグ「I WAS MADE FOR LOVING YOU」/津田道子「Life is Delaying 人生はちょっと遅れてくる」
Tokyo Contemporary Art Award 2022-2024 受賞記念展
【会期】2024年3月30日(土)-7月7日(日)
【開館時間】10:00-18:00
【休館日】月曜日(4月29日、5月6日は開館)、4月30日、5月7日
【会場】東京都現代美術館 企画展示室3F
(東京都江東区三好4-1-1 木場公園内)
【入場料】無料
【主催】東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 トーキョーアーツアンドスペース・東京都現代美術館
【詳細は公式HP】https://www.tokyocontemporaryartaward.jp

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JAPAN / A Love Story 100 Photographs by Michael Kenna

2024年04月17日 | 日記
★取材レポート★

世界的な風景写真家のマイケル・ケンナ氏の「日本」をテーマにした巡回展が、東京からスタートします。
2024年4月17日(水)から東京・代官山ヒルサイドフォーラムで開催されています。



ケンナ氏の作品は、ロンドンのビクトリア&アルバート博物館、フランス国立図書館、サンフランシスコ近代美術館、東京都写真美術館など100以上の美術館に所蔵されています。世界で最も作品がコレクションされている写真家のひとりです。



ケンナ氏が撮ると、神社の鳥居も、琵琶湖も、秋の景色も、静けさが伝わる墨絵のような写真作品となります。
自身を「恐竜のよう」と例えるケンナ氏は、デジタル全盛の現代にフィルムカメラを使用し、暗室にこもって現像まで自分で行います。
ケンナ氏の作品は正方形です。1987年からハッセルブラッドにカメラを変えて撮影を続けています。作品のサイズは2種類に決めているそうです。



ケンナ氏は自分で現像した最初のプリントを、24年の付き合いとなるアシスタントのマーク氏に送ります。
すると、マーク氏がこうしたらどうかとアドバイスをします。
試行錯誤して最終的にプリントが決まり、それを額にいれて作品が完成します。
マーク氏は、「普段はバサッと置かれている写真が、額装されてギャラリーに飾られているのは嬉しい」といいます。

(右)ケンナ氏(左)マーク氏


3つある展示室内の映像コーナーでは、三脚にハッセルブラッドを構えたケンナ氏の撮影スタイルが映し出されています。
撮影時間は「5分の時もあるし5時間の時もある」そうです。ケンナ氏は同じ場所に何度も行くのが好きで、対象物と対話をしています。
地元住民には見慣れている北海道の"普通の木"であっても、ケンナ氏は「この木と親密になったな」と感じた時、何度でもその場所に通うそうです。



「年を重ねるにしたがって知らないことが増えてくる」という作家活動50年のケンナ氏。
展示室で、ケンナ氏の写真技術とお気に入りに出会う旅から刺激を受けるでしょう。

JAPAN / A Love Story 100 Photographs by Michael Kenna
【会期】2024年4月17日(水)-5月5日(日)
【会場】代官山ヒルサイドフォーラム
(東京都渋谷区猿楽町18-8 ヒルサイドテラスF棟)
【詳細は公式HP】https://www.peterfetterman.com/japanalovestory/

■アートツリー出版社の写真雑誌『PHOTOSAI』Vol.44に展覧会情報を掲載しています。



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「やまなしメディア芸術アワード2023-24」入選作品展

2024年03月27日 | 日記
★取材レポート★

高い表現力や想像力あるいは高度なデジタル技術の技能を有する人材育成を目的として開催される『やまなしメディア芸術アワード』。
3回目の開催となる今年は、378作品の応募がありました。
3月31日まで、山梨県内の3エリアの会場とオンラインで、入選作品展が開催されています。

今回は、JR甲府駅から徒歩約5分の場所にある、「小さな蔵の美術館」での展示を取材しました。



入選作品のうちの5作品が展示されています。

■ Scott Allen <<Unreal Pareidolia -shadows->>


日用品を影絵にすると、それをAIを使用して別のものに見立て、生成された画像になります。



例えば、このような日用品を並べて影絵にすると、



AIによって「ベンチに座って雲を眺める女性」の画像になりました。



その他、若手のアーティストによる、日常や現代社会を題材にして制作された作品が
展示されています。
普段意識していない身近な出来事も、熟考することで異なる形態になることに気がつきます。

3月22日には、山梨県立美術館で受賞者の表彰式が行われました。
受賞者の方はそれぞれ、地域と人との関わりを後世に残すこと、コミュニケーションによる問題を解決することなど、作品が果たす役割について考えて制作したそうです。



受賞作品の詳細は公式HPに掲載されています。
https://y-artaward.jp/

<山梨県立美術館のある芸術の森公園から富士山がきれいに見えました>


「やまなしメディア芸術アワード2023-24」入選作品展
【会期】2024年3月9日(土)-3月31日(日)
【会場】山梨県内3エリア、オンライン
・甲府:小さな蔵の美術館(甲府市丸の内1-1-25 甲州夢小路)
・北杜:GASBON METABOLISM(北杜市明野町浅尾新田12)
・富士吉田:FUJIHIMURO(富士吉田市富士見1-1-5)
FabCafe Fuji(富士吉田市下吉田3-5-16)
・ONLINE(オンライン):オンライン上での発表となります。
【入場料】無料
【詳細は公式HP】https://y-artaward.jp/exhibition.php

■アートツリー出版社の投稿できる写真雑誌『PHOTOSAI』Vol.44は2024年3月27日発行です。



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版画の青春 小野忠重と版画運動

2024年03月15日 | 日記
★取材レポート★

1930-40年代に版画に熱中した青年たちの作品を紹介する企画展が、町田市立国際版画美術館で開催中です。



「新版画集団」と「造型版画協会」による版画運動を、リーダーであった小野忠重の旧蔵品を中心に紹介しています。
彼らは、まだ芸術としての地位が確立していなかった版画を大衆化しようと、様々な試みをしました。



新版画集団が発行していた版画誌『新版画』は、価格の安い印画紙を使用して、200部ほど発行し安く頒布していました。
最初は月刊で発行していましたが、時間がなく作品制作にかける時間がなくなってしまうことから、途中から季刊とし、作品制作と展覧会に力を入れていきました。



小野は版画について莫大な資料を集めており、版画に関する研究者でもありました。
プロレタリアートに影響され、労働者を表現した作品を制作するなど社会派らしい一面も持っていました。
版画の大衆化は、自分の身近な事柄を題材にしていくことだという考えでした。



小野の作品の他、一緒に組織的に活動した版画家の作品も展示されています。
藤牧義夫は線描を活かした作品、武藤六郎は東京銀座の都市風景など、それぞれが独自の表現を追求しています。





戦後に制作された作品も展示されています。
戦前から戦後に至っても彼らは版画活動を続けていましたが、
戦後の新しい時代になっても彼らの作品に大きな変化は見られません。
海外の現代美術と共鳴する戦後の新しい作品は、戦後に版画を始めた新しい世代によって制作されてゆきました。



版画の青春 小野忠重と版画運動
―激動の1930-40年代を版画に刻んだ若者たち
【会期】2024年3月16日(土)-5月19日(日) *月曜日は休館。ただし4月29日(月祝)・5月6日(振休)は開館、4月30日(火)・5月7日(火)は休館
【会場】町田市立国際版画美術館(東京都町田市原町田4-28-1)
【詳細は公式HP】https://hanga-museum.jp/

■2024年3月27日発行の『PHOTOSAI』Vol.44に展覧会情報を掲載しています。



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生誕120年 安井仲治 僕の大切な写真

2024年02月27日 | 日記
★取材レポート★

大正から昭和戦前期の日本の写真界を牽引し、日本写真史において傑出した存在として知られる写真家、安井仲治の回顧展が、東京ステーションギャラリーで開催中です。



安井が38歳で病没するまでの約20年に発表した作品や資料を、時系列で観ることができます。



大阪で生まれた安井は18歳で関西の名門・浪華写真倶楽部に入会します。当時のアマチュア写真家は芸術写真を追求し、安井も技術を駆使して絵画のような芸術写真を発表しました。



1930年代に入ると、安井は「半静物」という新たな取り組みを始めます。日頃身近にあるものを組み合わせ、異様なもの、怪しい雰囲気の作品を仕上げました。



1930年代後半に日中戦争がはじまると、写真家たちはそれまでと同じような活動はできなくなりました。安井は、傷痍軍人やヨーロッパから迫害を逃れて神戸にやってきたユダヤ人を撮りましたが、それを単なる記録写真ではなく創作的意図をもって作品にしました。一方でそれらは国策に沿った内容ともなっており、バランス感覚をもって活動していたことが伺えます。



時代の変化の中で身近な光景に目を向け、小さいものや醜いとされるものにも被写体としての価値を見出した安井の作品からは、現代においても多くの学びを得ることができます。



生誕120年 安井仲治 僕の大切な写真
【会期】2024年2月23日(金・祝)-4月14日(日) *月曜日は休館(4月8日は開館)
【会場】東京ステーションギャラリー
(東京都千代田区丸の内1-9-1 *JR東京駅 丸の内北口 改札前)
【時間】10:00-18:00(金曜日-20:00) *入館は閉館30分前まで
【詳細は公式HP】https://www.ejrcf.or.jp/gallery

■投稿できる写真雑誌『PHOTOSAI』では写真作品を募集しています。



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