孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ大統領選挙 世界が注目する「もしトラ」 「ほぼトラ」トランプ氏の弱点も

2024-03-14 23:26:49 | アメリカ

(3月9日、米ジョージア州で集会に参加するトランプ前大統領【3月11日 ロイター】 やはりこの人が戻ってくるのか・・・)

【「もしトラ」で動く国際情勢 ウクライナ パレスチナ 中国 イラン】
アメリカ大統領選挙でトランプ氏が復権しそうだ・・・もし、そうなると・・・という「もしトラ」、さらに最近では「ほぼトランプになりそうだ」という「ほぼトラ」といった言葉が広がっています。

「ほぼトラ」かどうかはともかく、「もしトラ」については、ウクライナ、パレスチナ、中国、イランなどが最大の関心をもって見守っているのは間違いなく、トランプ復権は世界の流れを大きく変えることになります。

ロシアに対し想定外の抵抗を続けてきたウクライナは、プーチン大統領を称賛するトランプ氏の復権で最大の支援国を失い、その命運は尽きるとも思われています。
“トランプ氏は長年にわたって折に触れてプーチン氏を称賛。2022年のウクライナ侵攻を決めた際には同氏を「天才」と表現した。”【2月19日 ロイター】

****「トランプ氏は一銭も出さず」=ウクライナ支援巡りハンガリー首相*****
ハンガリーのオルバン首相は10日、米国で8日に会談したトランプ前大統領について、「ロシアとウクライナの戦争に一銭も出すつもりはない。そうすれば戦争が終わる」との明確な考えを持っていると述べた。オルバン氏はこの考えに賛同し、11月の米大統領選でのトランプ氏勝利に強い期待を示した。

首相府が、ハンガリー公共放送のインタビューを公開した。オルバン氏は「トランプ氏には戦争を終わらせるための詳細な計画がある。これはハンガリーの国益と一致する」と主張。平和を実現できるのはトランプ氏だけだと称賛した。【3月12日 時事】 
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パレスチナに関しては、現在はハマス壊滅に突き進み、将来のパレスチナ国家も認めないイスラエル対し国際社会、アメリカが一定の歯止めをかける役割を担っていますが、イスラエル支持一辺倒のトランプ復権でそのブレーキもはずれることになります。「二国家共存」という青写真もなくなります。

****トランプ氏、イスラエル支持を明言 TVインタビューで****
ドナルド・トランプ前米大統領は5日、FOXニュースのインタビューで、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ地区への攻撃に支持を表明した。米国に対し、同盟国イスラエルに抑制を促すよう求める圧力が国際社会で強まる中、トランプ氏としてはこれまでで最も明示的な発言となった。

トランプ氏は「イスラエル側か」と問われたのに対し、「イエス」と答えた。 イスラエルによるガザ攻撃に関する質問にも「問題を終わらせなければならない」と述べ、支持する姿勢を示した。(後略)【3月6日 AFP】
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アメリカの中東政策は、イスラエルとサウジアラビアの連携を基軸としたものになると思われます。そこには「パレスチナ国家」が存在する余地はありません。

中国に関しては、トランプ氏は60%の関税を課すとしています。

****トランプ氏、中国製品に60%超の関税も 大統領選勝利なら****
11月の米大統領選に向け共和党の候補指名獲得を目指すトランプ前大統領は、自身が本選で勝利すれば中国からの輸入品に再び関税を課すとし、税率は60%を超える可能性があると述べた。

4日放送されたFOXニュースのインタビューで、関税を課さなければならないと発言。60%の税率を検討しているとの報道について問われ、「いや、それ以上になるかもしれない」と語った。

トランプ氏は2018、19年に数千億ドル相当の中国製品に関税を課した。

バイデン政権は関税を維持し、安全保障上の懸念を理由に先端半導体や製造装置の輸出を禁止する新たな制限を導入した。米通商代表部(USTR)は関税に関する見直しを行っている。

トランプ氏は中国との間で再び貿易戦争を始めるのではないかとの見方を否定し、「貿易戦争ではない。中国とは何でもうまくやった」と主張。「中国にはうまくいってほしいと思っている。習近平国家主席のことはとても好きだ。私の任期中、とても良い友人だった」と語った。【2月5日 ロイター】
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中国が「もしトラ」をどのように考えているかは微妙。
もちろん60%の関税などは論外でしょうが、さりとてバイデン政権でもよりシステマティックな対中国戦略がジワジワと締め付けることになります。 60%関税などとは言っていますが、トランプ氏となら“取引”が可能という側面もあります。
中国が嫌うのはトランプ氏の予測困難なところでしょう。

英誌エコノミストの記事「中国はドナルド・トランプ氏の復帰をどれほど恐れているのか」によると
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「貿易と関税の観点からのみ判断すると、習氏はバイデン氏の勝利を支持している可能性が高い。バイデン政権はおそらく中国製電気自動車(EV)の輸入制限を拡大し、半導体、人工知能(AI)、量子コンピューティングなどの分野で米国の最先端技術の中国への流入をさらに妨げることになるだろう。しかし、トランプ政権と比べれば、不安定化する貿易ショックを引き起こす可能性ははるかに低い」とした。

他方、「米中関係には経済学以上のものが含まれており、ここで習氏の計算が違う方向に傾く可能性もある」と指摘。
【2月25日 レコードチャイナ】
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“経済学以上のもの”・・・トランプ復権によりNATO体制が揺らぎ、日韓とアメリカの関係にも波風が・・・といった展開は、中国にとっては好ましいものでしょう。

トランプ前政権によって核合意を台無しにされたイランは、トランプ復権に備えて、核合意復活交渉を再開したい考えとも。

****イラン、核協議再開を要求 トランプ氏当選に危機感****
イラン政府が、トランプ前米政権の離脱などで機能不全に陥ったイラン核合意の再建に向けた間接協議を4月下旬以降に再開するよう、バイデン米政権に求めたことが14日、分かった。複数のイラン外交筋が明らかにした。間接協議は昨年5月にオマーンで開かれたのが最後で、再開に向けた動きも停滞している。

イラン政府には、トランプ前米大統領が11月の大統領選で勝利した場合、合意再建が困難になるとの危機感があり、バイデン政権下で再建にこぎつけたい考えだ。

外交筋によると、最高指導者ハメネイ師は、米国の制裁による経済低迷やトランプ氏当選への懸念からイラン交渉団に協議入りを許可した。【3月14日 共同】
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【激戦州7州では、トランプ氏40%、バイデン氏37%】
肝心の選挙情勢は・・・と言えば、最新世論調査によればバイデン氏が僅か1ポイントリードという結果も。まだまだ先の長い長丁場ですから、今後も紆余曲折があると思われます。

****米大統領選、バイデン氏がトランプ氏を1ポイントリード=世論調査****
11月の米大統領選に関するロイター/イプソスの最新世論調査によると、バイデン大統領が支持率でトランプ前大統領をわずか1%ポイントリードしている。 調査は13日までの1週間に全米の成人を対象に実施した。

登録有権者の39%は、今日大統領選が行われれば、バイデン氏に投票すると回答。トランプ氏に投票するとの回答は38%だった。支持率の差は世論調査の誤差の範囲である1.8%ポイントを下回っている。

多くの有権者は態度未定。11%は「他の候補に投票する」、5%は「投票しない」、7%は「分からない」「回答拒否」と答えた。

登録有権者以外の回答も含むベースでは、トランプ氏がわずかにリードしているが、登録有権者は実際に投票に行く可能性が高く、本選の行方を占う上で重要な存在といえる。

激戦州7州では、トランプ氏の支持率が40%と、バイデン氏の37%をリード。全米調査は有権者の投票動向を予測する上で重要だが、大統領選の勝敗を決める選挙人の獲得数は一部の激戦州に左右されることが多い。

トランプ氏、バイデン氏、無所属候補のロバート・ケネディ・ジュニア氏の三つどもえの争いの場合にケネディ氏を支持すると回答した登録有権者は15%で、1月調査の17%から低下した。

ケネディ氏はトランプ、バイデン両氏から同程度の票を奪う可能性がある。トランプ氏とバイデン氏の2人しか選択肢がない場合、バイデン氏に投票するとの回答は50%、トランプ氏に投票するとの回答は48%だった。2%は回答を拒否した。

共和党の予備選から撤退したヘイリー元国連大使の支持者のうち、トランプ氏に投票すると回答したのは37%のみ。16%はバイデン氏に投票すると回答。残りは「別の候補に投票する」「投票しない」と答えた。

アラバマ州の裁判所が、体外受精でできた受精卵を凍結保存した「凍結胚」を「子ども」とみなすと判断したことについては、支持すると答えた登録有権者はわずか25%。支持しないとの回答は57%、残りは「分からない」と答えた。

調査は全米の成人4094人を対象に実施。うち登録有権者は3356人だった。【3月14日 ロイター】
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シンプルな全国一本の選挙ではなく、州ごとの選挙人獲得競争であるアメリカ大統領選挙を決定づける激戦州7州でトランプ氏の支持率が40%と、バイデン氏の37%をリード・・・というあたりが「ほぼトラ」の背景にあります。

【「ほぼトラ」とも言われるトランプ氏の弱点も】
予備選挙を圧勝してヘイリー元国連大使を撤退に追い込んだトランプ氏ですが、トランプ氏の“弱点”も明らかになっています。

ヘイリー氏は首都ワシントンとバーモント州では勝利。敗北した複数の州でも3割以上の支持を得るなど、共和党内にトランプ氏の再選を望まない一定の「反トランプ票」があることを明らかにしました。

バイデン、トランプ両陣営とも、このヘイリー支持票の取り込みに必死となっています。

****トランプ氏 圧勝の裏で際立つ“弱点” 勝敗占う「ヘイリー票」と「ガザ情勢」 バイデン大統領と再戦へ【アメリカ大統領選挙】*****
(中略)“圧勝”とスーパーチューズデーの結果は伝えられるが、結果からはトランプ氏の弱点も見えてくる。

リアルクリアポリティックスによると、全米におけるトランプ氏とヘイリー氏の直前の支持率は、トランプ氏78.4%対ヘイリー氏15.0%だった。実際にスーパーチューズデーでもテキサス州やオクラホマ州などは全米支持率に近い得票率でトランプ氏が勝った。

数字ではトランプ氏が圧倒しているのだが、問題はヘイリー氏に票を投じた共和党内の「反トランプ層」が大統領選挙でどう動くのか、という点にある。

たとえばノースカロライナ州の予備選挙の得票率はトランプ氏が73.9%、ヘイリー氏が23.3%と全米平均よりもヘイリー氏がやや頑張った結果になった。そして、ヘイリー氏が獲得した23%の票というのは、実は大きな意味を持つ。

「スウィングステート」の1つとも言われるノースカロライナ州は、4年前の大統領選挙でトランプ氏が約7万票、得票率では1.3%という僅差でバイデン氏に勝った州だ。今回ヘイリー氏に票を投じた23%の人を、大統領選挙で取り込むことができるのかというのがトランプ氏の課題だ。

この課題をクリアできないと、今年の選挙では同州でバイデン氏に敗れる可能性もある。そのバイデン氏は声明で「ヘイリー氏の支持者たちの居場所は私の選挙活動のなかにある」と自身の支持にまわるように訴えていて、早速「ヘイリー票」の取り込みに躍起になっている。

比較的都市部に近いバージニア州でヘイリー氏が3割以上の票を得ていたように、共和党内の「反トランプ層」は一定数存在する。だからこそ、「ヘイリー票」の確保のためにもトランプ氏は演説で「団結」に言及する必要があった。(後略)【3月10日 TBS NEWS DIG】
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言うまでもなく、トランプ氏は「裁判」という厄介なものを抱えており、その結果次第では選挙戦に大きく影響します。膨大な費用がかかる裁判で資金的に苦しいとも言われています。

「ほぼトラ」とは言われているトランプ氏ですが、そんなこんなで、まだ流れが決まった訳でもありません。(多分に個人的「期待」を込めての言い様ですが・・・)

****「ほぼトラ」にはまだ早い、米大学教授が語る「それでもバイデンが勝つ10の理由」****
<トランプ支持率はおそらく現在が限界ギリギリの最高値?見落とされがちなトランプの「弱み」を「全米最高の教授」サム・ポトリッキオが分析する>

バイデン米大統領の一般教書演説は、必勝への号砲だった。台本にとらわれず、共和党を面と向かって挑発し、そして勝った。11月の大統領選挙でも勝利するだろう。まだホワイトハウスを出ていく準備を始めるべきではない10の理由を説明しよう。

1) バイデンが直面する最大の問題は年齢だ。時間の経過とともに不利になる。だが一般教書演説では「闘士」の顔を前面に出し、絶妙な言い回しで問題の枠組みを変えた。「わが国が抱える問題は、私たちが年寄りかどうかではない。頭の中が古いかどうかだ」

2)トランプ前大統領の共和党予備選での得票率は各種世論調査を下回っている。過去2回の選挙では上回っていて、その理由として、支持者の一部が世論調査を拒否したか、トランプ支持を公言するのを恥ずかしがった結果だという分析が出回った。今回は逆だ。

ヘイリー元国連大使のバージニア州での得票率は世論調査より30ポイント近く高かった。サウスカロライナ州では8ポイント、ミシガン州で15ポイント、ニューハンプシャー州では7ポイント予想より多かった。ここから、世論調査でのトランプ支持率はおそらく現在が限界ギリギリの最高値に近いと思われる。

3) 特定の州でヘイリーに投票した有権者の約70%が、共和党の大統領候補が誰になっても支持すると明言しなかった。つまりヘイリーが獲得した票の大部分は、反トランプ派のものである可能性が高い。

4) 共和党が勝てるはずの議会選挙で苦戦し続けている大きな理由は、トランプが郊外の穏健派層に弱いせいだ。何としても議席が欲しい共和党の候補者は、選挙戦で反トランプの立場に転じる可能性がある。

5) 民主党の予備選は2回連続で左派より穏健派を選ぶことが確実だ。トランプはバイデンに「極端派」のレッテルを貼ろうとしているが、民主党が政策を穏健化させ続ければ、この作戦の効果は薄い。

6) 米経済は欧米民主主義国の中で最もいい状態を維持している。景気後退がなければ、現職大統領が選挙で負けることはない。

7) 米国民の半数近くはトランプの裁判問題、特に大統領選の結果を覆そうとした疑惑についてよく知らない。有権者がトランプの発言を知れば、評価は大きく低下する。

8) トランプは法と裁判に追い詰められ、プレッシャーを感じ始めるはずだ。有権者の関心とプレッシャーが高まれば、感情のコントロールを失うだろう。トランプの世論調査の数字が高いのは、おそらく大統領時代に比べてX(旧ツイッター)やテレビでの露出が少ないせいでもある。だが大統領選の投票日が近づけば、状況は変わる。

9) 米最高裁が人工妊娠中絶は合憲だとした「ロー対ウェード」判決を覆した2022年6月以降、民主党はいくつかの選挙で衝撃的な勝利を収めている。バイデンはイスラエルを強く支持しているため、若年層の支持を取りこぼしているが、アメリカ人の最大の関心事は自分たちの生活だ。一方、共和党は体外受精を制限する法案を提出して事態を悪化させている。共和党員の有権者が自分の党に反旗を翻す可能性も十分ある。

10) 既に裁判所から5億ドルの賠償金支払いを命じられているトランプの破産リスクも、大統領選の重要な要素だ。選挙資金集めでも苦戦している。バイデン陣営は小口献金が全体の97%を占めており、資金面では極めて有利な立場にある。一方、共和党は全国委員会委員長を退任させ、共同委員長にトランプの次男の妻を据えたばかりだ。

ここ半年のバイデンは苦難が続き、支持率はこの時期の大統領として史上最低を記録した。それでも秋の本番で彼の負けに賭けるのは愚かな選択だ。【3月12日 Newsweek】
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“秋の本番で彼の負けに賭けるのは愚かな選択”・・・個人的には「そうであってほしい」とは思いますが、勝負はこれからでバイデン氏にとっては厳しい状況が続くとおもわれます。

注目したのは、上記記事が指摘しているポイントのなかで2)の“トランプ前大統領の共和党予備選での得票率は各種世論調査を下回っている。過去2回の選挙では上回っていて・・・”ということ。

これまでは“隠れトランプ支持”が多く存在し、「一体この闇の底はどこにあるのか・・・」という不気味さがありましたが、最近では確かに一定に熱烈支持者は多く存在しますが、ヘイリー氏支持票に見るように、“底が見えてきた”感じも。

バイデン氏側の攻めどころは9)で指摘される人工中絶・体外受精問題でしょう。共和党支持者の中にも過激な主張とは距離を置く者も多くいますので。

一方のバイデン氏側の問題は・・・と言い始めると、これまたキリがありませんので、また別機会に。
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