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映画で見る北アイルランド問題 ーアイルランド紛争の歴史

映画で見る北アイルランド問題 アイルランド

イギリスやアイルランドで婉曲的に「The Troublesザ・トラブルズ」とも呼ばれる北アイルランド問題

1960年代〜1990年代(見解によっては2000年代まで)の出来事とされていますが、根は深く、歴史を辿れば、紛争につながった背景として1910年代にまで遡ることもできます。
(さらに辿れば、イングランドから多くのプロテスタントをアイルランドに移住させたヘンリー8世の統治の時代、1540年代まで遡ることもできますが・・)

アイルランドの映画作品や小説など見てみれば、北アイルランド問題を背景に物語が描かれているものも多くあり、ここでは、そんな映画作品を見漁ったたびわ(@tabi_wa)がアイルランド・北アイルランドの歴史を映画とともに追ってみたいと思います。

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1910年代〜1920年代

「北アイルランド問題」とされた時、歴史は1960年代以降を指しますが、1910年代の出来事も大きく関わると思うため、この辺りのこともまとめておきます。

1910〜1920年代の出来事
  • 1916年
    イースター蜂起

    アイルランド独立を求める武装蜂起
    (イギリス軍により鎮圧され、反乱首謀者の多くが処刑されたがアイルランド独立の動きを作る)

  • 1919年
    アイルランド独立戦争勃発
  • 1921年
    英愛条約が締結

    1920年に制定されたアイルランド統治法(=アイルランドを南北に分け*、北はイギリス領、残りの地域はアイルランドに自治を与えるというもの)に沿い、アイルランド独立戦争の休戦条約として英愛条約が結ばれた
    *アイルランド北部ではキリスト教の教派・プロテスタントの人が多数派、南部ではキリスト教の教派・カトリックの人が多数派で、それにより南北に分割された形になります。

  • 1922年
    アイルランド内戦のはじまり

    自治権を得たことをまずはよしとする派と、アイルランド全島での独立を目指す派で、アイルランド国内で抗争が始まった

『マイケル・コリンズ(Michael Collins)』

イースター蜂起に始まり、英愛条約の締結までと、その間の人間ドラマを描くのが『マイケル・コリンズ』です。

アイルランドの独立を目指した人物、マイケル・コリンズの生涯を描いた作品で、アイルランド独立の歴史を学べるとともに、ダブリンに今も残る歴史的な場所を見ることができます。

『マイケル・コリンズ』とダブリンを知るならこちらの記事も↓↓

『イニシェリン島の精霊(The Banshees of Inisherin)』

1923年、アイルランドの小さな孤島に暮らす2人のおじさんの仲違いを描く作品が『イニシェリン島の精霊』です。

アイルランド島南側での内戦がはじまった翌年が舞台となる作品で、会話中にも “遠くの内戦” を伝えるセリフが何度か登場します。

一見、物語は内戦を遠目に、過激に発展するおじさん同士の仲違いを描く作品のようにも見えますが、当時の時代背景やアイルランドの歴史を照らすと、単純なけんか話ではないように見えるのです。

↓↓『イニシェリン島の精霊』の裏読みはこちらでまとめました

『麦の穂をゆらす風』

日本では配信がなく、DVDを買うなどしないと観られない作品ですが、アイルランドの内戦をテーマに扱う映画では、他に『麦の穂をゆらす風』もあります。

1960年代

1960年代の出来事
  • 1960年代後半
    北アイルランド内で多数派のプロテスタントと少数派のカトリックが対立

    過激派によるテロなど、暴動が次々と起こっていく

「北アイルランド問題」が激化したのは、ベルファストで、反カトリックの武装集団がカトリックの住民に対しテロ行為を実行したことが始まりとなっていたようです。

『ベルファスト(Belfast)』

1969年の北アイルランド・ベルファスト、カトリックとプロテスタントの抗争が激しくなり始めた頃に生きる少年と、その家族を描いた映画作品が『ベルファスト』です。

全編モノクロの映画で、紛争を背景に描くため、重い映画のように見えますが、笑いを誘うシーンもあり、比較的見やすい作品だと思います。

少年の無邪気さがあるからこそ、紛争について考えさせられる作品です。

1970年代

1970年代の出来事
  • 1972年
    血の日曜日事件

    北アイルランド・デリーで、デモ行進中の市民が英陸軍に銃撃された事件。14名が死亡した

  • 1972年以降
    ベルファスト、デリー、ダブリン、モナハン、デリーなどで爆弾テロ

『プルートで朝食を(Breakfast on Pluto)』

プルートで朝食を』は、1970年代、北アイルランド問題が深刻化する中、トランスジェンダーであるパトリックの人生を描いた作品です。

政治運動にのめり込む友人が登場したり、爆弾で友人を失ったり、爆破テロに巻き込まれたり、北アイルランド問題の時代背景を反映する内容が多く登場します。

劇中では、「血の日曜日事件」についてのセリフも度々登場します。

北アイルランドの歴史と物語の展開を解説する記事も書いてます↓↓

『グッド・ヴァイブレーションズ(Good Vibrations)』

1970年代、アイルランド・ベルファストを舞台に、音楽に生きたレコード店店主テリー・フーリーの実話を映画にしたのが『グッド・ヴァイブレーションズ』です。

1975年、アイルランドの人気バンド「マイアミ・ショウバンド」のメンバーが過激派により殺害された事件も背景にある映画です。

ベルファストにツアーにやってくるバンドもほとんどなく、音楽産業も行き詰まっている中、いい音楽を広めようとするテリー・フーリーの奮闘ぶりが描かれます。

ある種サクセスストーリーでもありますが、映画最後のクレジットまでしっかり読む必要があります。(オチとしては結構好きでした

『ブラディ・サンデー(Bloody Sunday)』

日本では視聴が難しそうですが、血の日曜日事件を扱う2002年公開の『ブラディ・サンデー』という映画もあります。

1990年代〜現在

1990年代〜現在の出来事
  • 1998年
    ベルファスト合意(Good Friday Agreement)

    和平合意が成立し、北アイルランドとアイルランドの間に置かれていた検問所も撤廃

  • 2020年
    イギリスがEUを脱退(Brexit)

1998年のベルファスト合意を経て、現在は平穏が保たれることとなっています。

ただし、宗教間での争いが完全になくなったわけではなく、今もベルファストの街には「ピースウォール(平和の壁)」と呼ばれる、両者を隔てる壁があり、今もなお一部の武装組織が若者の勧誘を続けています。

『ぼくたちの哲学教室(Young Plato)』

和平合意に至ってから二十数年。ベルファストの小学校で行われる哲学の授業を取り上げたドキュメンタリー映画が『ぼくたちの哲学教室』です。

今も残る「ピースウォール」と、歴史に刻まれた北アイルランド問題を背景に、ケヴィン校長の哲学の授業が展開されます。

アイルランドの国境

国境線

決して元から北アイルランド問題について詳しかったわけではなく、アイルランドの小説や映画を見るうち、歴史についても関心を持ち、こうして歴史をまとめるに至りました・・

アイルランドや北アイルランドに関わりのある芸術作品に触れれば触れるほど、紛争の歴史を背景とした作品が多く、その歴史が大きな影響を与えていることがわかります。

政治や経済のことに限らず、北アイルランドとアイルランド、2つの地域の間には確かに国境がありますが、国際試合でのラグビーチームが南北合同チームであるように、2つの地域が完全に分断されているわけではありません。

よそ者の自分が、国境の捉え方についてどちらの主張が正しいなどというつもりはありませんが、それぞれの派閥の背景にあるものを理解すると、どちらの言い分も否定しきれないからこそ、この問題の根深さを感じたりもするのです。

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