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蒼月に問う

 

どうして僕は生きるのだろう

生きていく為には 仕事をしなければならず

仕事をする為には 衣食住を整えねばならず

衣食住を整える為には 仕事をしなければならず

どうして僕は生きるのだろう

眠れずに見上げた夜空には

蒼く冷たく輝く月が

静かに ただ静かに 僕を見下ろしていた

 

どうして蝉は生きるのだろう

その生涯の大半を 土の中で過ごし続け

ひと夏だけの晩生を森の中鳴き続け

果ては抜け殻だけを残し土へと返っていく

どうして蝉は生きるのだろう

寝苦しくて見上げた夜空には

蒼く冷たく輝く月が

静かに ただ 静かに 僕を冷笑していた

 

どうして僕は生きるのだろう

目的地も見失い

誰かの為だとか何かを成す為だとか

それすらわからずに命を燃やし続ける

どうして僕は生きるのだろう

眠れずに見上げた夜空には

蒼く冷たく輝く月が

静かに ただ 静かに美しく輝いていた

 

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告白

      

好きです たったその一言で僕の人生は一転した

一つ年下の 華奢な身体に澄んだ瞳の少年

彼は僕の瞳をじっと見て 臆することなくそう言った

冬の始まり 放課後の美術室 既に陽は落ち始めていた

面食らった僕はただ 彼の顔を見ていた

細い首を少し傾げて 可笑しいですか?と言った

そもそも 今この美術室に二人で居るのは

珍しく彼が僕に絵のモデルを頼んできたからだった

 

好きです それはいったいどういう意味なのだろう?

僕の頭の中を 何かがぐるぐると回っていた

ずっとずるいなって 思っていたんです 彼は続けた

先輩には 僕に無いものが たくさんあるんですよ

人は自分には無いもの それに憧れる ですよね

先輩は 僕の憧れだけどそれだけじゃ嫌なんです

これは僕の我儘です でも、もっと傍にいて欲しい

 

好きです その言葉を言われるのは初めてではない

それなのに どうしてこんなにも動揺しているのだろう?

僕の心の中で 何かが弾けたような気がした

入部した時から 気にはなっていた 大人しそうで

それでいて自己主張は しっかりとしている

なんだ…僕は僕でこの後輩の事が気になっていたのか

彼の言う我儘は ちょっと嬉しいようなそんな気がした

 

 

 

 

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ラブストーリー

 

    

何が間違っていたのだろう?

どこで間違えたのだろう?

何度も何度もくり返し問いかける

けれども僕は知っている

どこにも答えなんて無いと

見上げた澄んだ青空は

じきに来る冬の寒さを思わせる

君は今 幸せなのかい?

僕の隣でうたた寝する君の

細くて柔らかな髪の毛を

起こさないように そっと撫でる

 

日が傾いて夕闇が近づく

高らかに響く烏の鳴き声

何度も何度も湧き上がる想い

この感情は何だろう?

本当は知っているのに

認めたくなくて 信じたくなくて

夕闇の空に 輝く一番星

指を指して笑う君の頬に

僕はそっとキスをする

照れくさそうに僕を見つめる

 

長い長い冬が来て

山に白い雪が降る頃

二人で一緒に生きると決めた

けれど僕は知っている

それはとても険しい道だと

それでっも良いと君が微笑む

どんなに寒い夜も二人なら

乗り超えられるから

二人で綴る ラブストーリーは

これから始まって行くのだ

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桜の精の物語

       桜姫物語

 ある春の日の夕暮れ時、見慣れぬ娘が現れた。

それはそれは美しい娘で、通りを行く皆が振り返るほどだった。

娘は何かを探しているらしく、立ち止まり、辺りをきょろきょろと見回している。

旅人らしく杖をもち、傘をかぶっていた。娘は再び歩き出そうとして立ち止まり、

しゃがみこんだ。

「どうかなさいましたか?」 

声を掛けたのはこの村の薬屋の若旦那だった。

「すみません、供のものとはぐれてしまって、少々無理をしてしまいました」

「それはいけません。私の家は薬屋を営んでいます。宜しければ少しの間、休

まれてはいかがですか?」

男の言葉に少し戸惑いながらも娘は頷くと、後をついて来た。

 店につくと、男は使用人らしき男性に水を持ってくるよう命じ、娘を店の隅に

ある竹の長椅子に座らせた。先ほどの使用人が水の入った茶碗を乗せた盆を持っ

てきた。受け取った男がそれを娘の横に置くと「さあ、どうぞ」と言った。

娘はかぶっていた傘の紐をとき、傍らに置いて丁寧に礼を言った。そして震える

手で茶碗を取ると、ゆっくりと口に運んだ。その艶のある長い黒髪、うるんだ瞳

色白の陶磁器のような肌。まるでどこかの姫君のようだ。

「助かりました。なんとお礼を言ってよいか・・・」

「いえ、いえ、そんな」娘に見とれていた男は、慌てて

「そう言えば、お供の方とはぐれたのはどの辺りですか?」と訊いた。

「この少し先の小さな山を下りた辺りです」娘は答えた。

「ああ、あの辺りはいくつかの道に分かれていますので、もしかしたら別の道

に向かわれたのかもしれませんね」

「そうですか・・・」娘は不安そうに答えた。

「なあに、すぐに気づいて追いついて来ますよ」と、男は言い、さらに「二三日

この家に逗留されると良い」と付け加えた。

「そんな、ご迷惑をお掛けするわけにはまいりません」と丁重に断ると、

「じきに日が暮れます。あなたのような娘さんを一人で外には出せません」

確かに一人では宿も探せず、途方に暮れるだろう。

「ありがとうございます。それではお言葉に甘えてご厄介になります」と頭を

下げた。案内された部屋は離れにあった。

「母屋の方は奉公人の出入りも多く、こちらの方が静かですので」

 娘の名は『おせい』といい、年は十九だという。母親は子供の頃に死に、

茶屋を営んでいた父親も最近病死し、世話役だった叔父と二人で嫁いだ姉の家を

尋ねるところだったという。夕餉の後、離れを訪れた若旦那とそんな話をした。

「あの丘の上に大きな木が見えるでしょう? もうすぐ奇麗な桜が咲きますよ」

「それは是非見てみたいものですね」

「ええ、是非。ここで一緒に見て頂けたら良いな」

若旦那は何とかしてこの娘を自分のものにしたいと思っていた。

 彼の言う通り桜の花は、娘が逗留して二日後には奇麗に咲いた。

心細かった娘は優しい若旦那に心惹かれるのに時間はかからなかった。

 

 この薬屋の若旦那という人は、本当に心根の優しい男だった。大旦那様からも

信頼され、ご近所様からも頼りにされるような人であったが、ただ一つ、彼には

許嫁がいた。まだ子供の頃に顔見知りだった父親同士で決めた約束であった。

 大旦那は悩んでいた。ここ数日の息子の様子から、あの娘を好いていることは

明らかだった。娘も器量が良いだけではなく、とても穏やかな性格で、このまま

嫁にしたら店が繁盛するだろうとさえ思った。だが今更結婚の約束を反故にする

ことなど無理である。相手は隣村の大店の呉服屋さんの娘だ。しかもその娘さん

は息子のことを気に入っている。大切に育てられたのだろう正直、少々我儘な節

がある。

 つい先日も妻が「いっそこのまま息子の嫁になってくれたら良いのに」などと

言っていた。娘は世話になっているだけでは申し訳ないからと、よく妻の仕事を

手伝って甲斐甲斐しく働いていたので、使用人からも慕われていた。

 そんな折、娘が逗留して五日ほどたったある日、店に文が届いた。内容は薬を

届けて欲しいというもので、差出人はご贔屓にしている隣村の男からだった。

 珍しいこともあるものだと息子に相談すると、「いいよ、俺が届けるよ」と

言ってくれた。隣村まで往復で二日ないし三日はかかる。出がけに息子は「親父、

おせいを頼んだよ」そう言って笑っていた。

 若旦那が店を出た翌日の夕刻、店におせいさんに会いたいと言う人が来たと聞

き、てっきりはぐれた供のものと思い、大旦那は店に出た。しかし、そこに居た

のは息子の許嫁である「お京」だった。不思議に思いながら、要件を訪ねると

「ただ、顔を見に来た」とだけ告げた。大旦那はその時、何となく二人を合わせ

てはいけない気がして、留守だと言おうとしたが、客の一人が店に居たおせいの

名を呼んだ。

 「へえー、あんたがおせいね」

仕方なく奥の座敷に招き入れ、息子が不在であることを告げた。

「良いの、私が用があるのはこの人だから」そう言った。

二人に茶を淹れて戻った使用人が、「おせいさん大丈夫でしょうか?」と訊いた。

「大丈夫だよ、あの人は仮にも息子の許嫁だ」と答えたが、内心穏やかではな

かった。そもそも、あの客が薬を届けて欲しいなんて文をよこすだろうか?それこそ読

み書きも出来ないあの客が・・・。

 

 半刻ほどたって、お京は店を後にした。帰り際、「あの娘、気分が悪いから暫く

一人にしておいて」って言っていたから。そう言い残した。店の者は察した。恐ら

くは許嫁が自分だと娘に言ったのだろうと。

 その深夜、戸を叩く音がして使用人が戸を開けると、息を切らした若旦那が立っ

ていた。「親父はいるか?」しかし、その使用人は怯えた表情で彼を見た。そして

眼を伏せた。「何があった?」彼はそう言いながら返答を待たずに家の中へと入っ

た。

 彼が目にしたものは床に横たわり白い布を被せられたせいの姿だった。首を垂れて

何も言わぬ父と母、すすり泣く使用人。ああ、そうか、そうなんだな。若旦那は恐ろ

しいほどに冷静に、そして表情一つ変えずに言った。「殺されたのか?」誰に?

だが、その問いに誰一人答えなかった。

 「村の手前で会ったんだ、あの客と。文なんてとてもじゃないけど学のない俺には

書けるはずもないでしょう。何の冗談ですか?って笑ってた」若旦那は普段の優しい

顔とは裏腹な表情で奥歯をギリリと噛みしめて言った。「殺してやる!」と。皆が声

を失ったその時、母親である大女将がそっと顔に掛けられた布を外して言った。

 「見てごらん?苦しかった筈なのに、こんなに穏やかな死に顔を。この娘はきっと

お前に心配かけないように、最後はこんなふうに安らかな顔をしたのだろう」

 「死因・・は・・?」必死に冷静さを保ちつつ、若旦那が訊いた。

 「多分、毒物だろう」今度は大旦那が苦しそうに答えた。「すまない、お前にせ

いのことを頼まれていたのに」

 「毒って、うちは薬屋だろう?毒って・・・。誰だよ、そいつは?」

 これには誰も何も答えなかった。やがてもう夜が明ける頃、一人の使用人

が彼の元へやって来た。何故か、手に小刀を持って。

 「どうした?」若旦那が尋ねると、彼は泣きながら言った。「どうか自分

を殺して下さい。奉行所には自害したと言って下されば良いです。これは父

から貰った護身用です」そう言って、持っていた小刀を差し出した。

 「何を言っている?お前が殺したとでも言うのか?」

 「いいえ、でも私が取り次がなければ・・・」

 「取り次ぐって、誰を?」

 「申し訳ございません。私が会わせたりしなければきっと・・・」

 その使用人の言葉で確信がいった。この家の内情に詳しくて、使用人に

顔が利く人物。さらにおせいに敵対しそうな人物。「来たのか、彼女が

?」その問いに使用人は答える代わりに号泣した。「申し訳ございません。

申し訳ございません」彼はそう繰り返してた。

 翌日、家中の従業員、使用人が集められ、せいの死因は思い肺病による

ものだとさ

れた。これは恐らく犯人であるおきょうをかばう為ではなく、薬屋で毒殺

が行われたという不祥事を隠すためでもあり、それが最善の策であると誰

もが思ったからである。

もちろん、昨夜の使用人にも固く口留めをした。そして大旦那様はせいの

為に、亡骸を家族同様に丁重に弔った。

 

 せいが亡くなって、つらい思いをしたのは薬屋の人々だけでは無かった。

何故か桜の散る頃から日照りが続き、夏の間も雨があまり降らずに日照り

が続いた。当然のごとく秋の収穫は半減した。飢饉の起こらないのが奇跡的

な程、ダメージはあった。

 そのせいかあちこちの村では強盗や子供の人さらいが相次いだ。しかし大

旦那様は元々面倒見が良く、困っている村人にはいつか返せる時に返してく

れれば良いと、無称で薬を与えるような人だった。不作の時などは自らの貯

えを村人にけ与えるなどの善行を行っていた為か、村人からは厚く信頼され

ていた。押し込み強盗に会うことも無く、本当に村人全員が助け合って生活

していた。季節は過ぎ、本当に長くてつらい冬が来た病人も相次ぎ薬屋に

とっては忙しい季節になった。あの悲しい出来事の後、暫くは婚姻を伸ばし

たいと告げると、なぜかあっさりと承諾された。やはり疚しいことがあるの

か・・・。

 

 長く厳しい冬がもうすぐ終わろうとしている頃、ある知らせが届いた。隣

村で起きた押込み強盗の話だ。それは紛れもなくお京の家だろう。一家惨殺。

そこには娘も居たという。大抵は子供や女は生け捕りにして売り飛ばす。だ

が激しく抵抗されれば奴らとて仕方ないので殺す、それが普通だ。若旦那に

とってお京はせいの仇のようなもの。けれど、死んだと聞かされて喜ぶこ

とも悲しむことも無かった。やがて長い冬が終わり、草木も芽吹き始めた頃、

もともと体の弱かった母が寝込んだ。若旦那は祈った、どうか父の為まだ母

親を連れて行かないで下さい。

 あの離れの部屋から見た丘の上の桜が満開になる頃、村の人々は活気を取

り戻し始めていた。寝込みがちだった母の顔色も良くなり、村は平和を取り

戻していた。そんな頃、村に奇妙な噂が立ち始めていた。あの丘の上の桜の

木の下に美しい幽霊が出るという噂。正直幽霊の話など信じない。ただ、そ

の幽霊の姿があまりにもおせいににていたから。。。。

 噂によると美しい幽霊が桜の木の下で舞を踊ると言う。どうにも信じられな

い話だ。

 ある夜の事、父と私はその真相を確かめようとかの地へ赴いた。はたしてそ

の美しい幽霊はいるのか? 私と父は絶句した。紛れもなくそれはせいの姿形

をしていた。

 私は夢を見ているのか?だが隣に佇む父の唖然とした表情、ほのかに香る彼

女の匂い、ああ、これは彼女なのだ。ひと時、彼女の舞に見入った後、私たち

は帰路についた。

 村の人々は幽霊だと言い、またある人は桜の精だと言い、只、私たちだけが

知っている。彼女は実際にこの世に生き、そして殺された人物であると。

 不思議なことにそれ以来、日照りに悩ませられることも、畑の作物が枯れる

ことも無くなった。ある人は彼女を豊穣の女神と呼んだ。またある人は救世主

と呼んだ。花はやがて散り、やがて沢山の実をつけ、子供たちを喜ばせた。

 以来、その村に干ばつや飢饉などの被害は及ばなかった。

 そして、いつの間にかその桜の木の下には沢山の供物が供えられるようになり

、人々は桜の精様と呼んで崇めるようになった。そんな村人の気持ちに応えるよ

うに、大旦那様は桜の木の下に祠を立て、いつでも村人が訪れられるようにした。

 その後数十年に渡り、桜の大木とその祠は大切にされ続けていた。

 私ももう長くはない。先代の大旦那とは違い商売というものに疎かったかもし

れない。結婚することも無く、子を成すことも無く、それでも使用人たちはつい

て来てくれた。なんの不満があるだろう? じきに私はこの世を去るけれど、私

は何も心配していない。

 父と母、そして最も愛した女性が、きっと私を迎えてくれるから。

 只、ひとつ気がかりなのは、私は彼女に心から愛してると伝えただろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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向日葵

                    向日葵

僕は向日葵が苦手だ 人の顔みたいで

それは舞台の上から眺める客席のようだ

僕は幼いころから日舞を習っていた

母が若いころ習っていたらしいが

交通事故で足を怪我してやめてしまった

だから僕がまだお腹にいる時から

男の子でも女の子でも日舞を習わせると

強く父に断言していたらしい

そして生まれた僕は 人形のような

肌も白く眼がぱっちりとした赤ん坊だった

 

僕は自分の顔が嫌いだ 僕を見た人は

まるで女の子みたいねと必ず言うから

それなのに母はとても嬉しそうだった

出かける時にはいつも僕を連れて行く

髪も伸ばし可愛い服を着せていた

それでも母が喜ぶのならと思った

小学校に入ってからは随分と

クラスの男子にからかわれた

それでも僕は気にしてなかった

だって僕は舞台の上で踊る人形だから

 

中学に入るとすぐに 成長痛がひどく 

稽古もできなくなった 母はとても心配した

治まるころには僕の身長は170cmを超えた

けれど身長と手や足は長くなっても

男らしい体つきにはなれなかった

顔も顎がほっそりとして目が切れ長になった

姐さんたちからは化粧映えのする顔だと言われた

これはきっと母の呪いだと僕は思った

高校の入学式の日 お前って凄いなと言われた

振り向くと小学生の時僕をからかっていた奴だった

 

僕は向日葵が苦手だ 人の顔みたいで

けれど小さい頃のように眼を背けることはない

高校に入って新しい友達もでき

いじめっ子だった奴から 凄いと言われ

なんだか少し恥ずかしかった

鏡に映る姿は僕の望んだ姿ではないけれど

いつの間にかそれに慣れてしまったのか

或いは自分自身を認められたのか

空っぽだった僕の心の中に何か温かい

そして懐かしい感情が芽生えた気がした

 

 

 

 

 

 

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