6299777190465681 関節リウマチの予防と制御のためのライフスタイル:喫煙/飲酒編 | 感染症・リウマチ内科のメモ

関節リウマチの予防と制御のためのライフスタイル:喫煙/飲酒編

リウマチ・免疫

前回につづきまして関節リウマチにおけるライフスタイルの影響で、今回は喫煙と飲酒です。どのように疾患に影響するのか、その量は? 今回も関節リウマチの疼痛や活動性、予後に影響するのか、その発症予防にはどうか?などの文献を元としています。

関節リウマチに対する運動、リハビリテーション、食事、および追加の統合的介入に関する米国リウマチ学会ガイドライン2022 年

2022 American College of Rheumatology Guideline for Exercise, Rehabilitation, Diet, and Additional Integrative Interventions for Rheumatoid Arthritis (Arthritis Rheumatol. 2023 Aug;75(8):1299-1311.

喫煙

タバコ使用・禁煙に関する臨床の質の尺度や、RAにおける禁煙に関しての適格基準を満たす研究が存在しないため、このガイドラインではRA管理のための個々の禁煙介入についてさらなる推奨を行わなかった。
RA疾患重症度の上昇、治療反応性の低下、長期不良転帰のリスク増加など、RAに対する悪影響・有害性は十分に確立されている
RA患者をケアする臨床医は禁煙に関するカウンセリングにおいて不可欠な役割を果たす
現在喫煙しているRA患者は、禁煙に向けたサポートを受ける必要がある

リウマチ性疾患および筋骨格系疾患(RMD)における喫煙、アルコール摂取および疾患特有の転帰:RMD 患者のライフスタイル改善に関する欧州EULAR推奨事項系統的レビュー 2021年

Smoking, alcohol consumption and disease-specific outcomes in rheumatic and musculoskeletal diseases (RMDs): systematic reviews informing the 2021 EULAR recommendations for lifestyle improvements in people with RMDs
RMD Open. 2022 Mar;8(1):e002170.

喫煙

早期RAと喫煙に関する現在のエビデンスでは、
・現在喫煙している人は非喫煙者と比べてEULARの寛解に達しない確率が2.6倍高い
・2つの研究では喫煙と高い疾患活動性との有意な関連が報告、一方、2つの研究では関連がないと報告
・2つの研究で現在の喫煙者は、より疾患活動性があり、CRPレベルが有意に高かったが、身体機能は同様だった
・CRPレベル、疼痛、X線検査による進行および関節外症状、に関する研究間で結果は一貫していなかった
・喫煙者をパック年数に従って分類した場合、喫煙パック年数が増加しても疾患活動性パラメーターと X線写真の進行に差異はみられなかった

RAと喫煙に関する現在のエビデンスでは、
・2件の研究では、喫煙とX線撮影によるびらんの進行との有意な関連が報告されていた
・DMARDs曝露前後で間質性肺疾患がOR 2.2の確率で発生することが報告
・5件の研究では、喫煙がEULAR治療反応性の低下の予後因子であることが報告
心臓血管CVイベントの高いリスクと関連
・喫煙者(1日に1箱以上喫煙)では非喫煙者よりも X線写真によるびらん進行が遅くなったとの報告あり
・ある研究では大量喫煙(10パック年以上)と機能障害との間に有意な関連があることが報告された

これらの RMD を持つ人々は禁煙を奨励および支援されるべきであり、喫煙が症状、身体機能、疾患活動性、疾患の進行、併存疾患の発生などのいくつかの結果に悪影響を与えることを知らされるべきである

アルコール摂取

・6件の前向きコホート研究で RA患者のアルコール摂取量が評価されたが、結果は一貫していなかった
女性のみにおいて、中等度摂取と60ヵ月時点でのX線撮影による進行の高いオッズとの間に有意な関連性があった
・時折飲酒する人や毎日飲酒する人に比べて、大量飲酒者(1日に数回アルコール飲料を摂取する人)では、X 線撮影による進行が著しく大きいことがわかった
・非飲酒者と比較して、時折または毎日飲酒する人の方が、X線検査での進行が少ないとの報告もある
・2件の研究では、アルコール摂取は疾患活動性と関連していなかったが、全く摂取しなかった場合は毎日の中等度・多量のアルコール摂取と比較すると、寛解達成確率の改善と関連していた
・アルコール摂取量が多い患者に標準的なメトトレキサートやレフルノミドを使用することに臨床医が消極的であることが、このグループの予後不良の原因となっている可能性がある

アルコール摂取量とは
・アルコール1単位は、純アルコールに換算で WHOと多くの国は10g、北米では14g、日本では20g としている 
 Alc 20gで だいたい 日本酒1合(180ml)、ビール500ml 相当
中等量Alc25-40gあたり、大量Alc40-60g以上 としている文献が多い
・日本厚生労働省「健康日本21」「節度ある適度な飲酒」1日当たりアルコール摂取量で20g程度としている、40g以上で「生活習慣病のリスクを高める飲酒量」になる

リウマチ性疾患および筋骨格系疾患の進行を防ぐためのライフスタイル行動と仕事への参加に関する欧州EULAR 推奨事項 2021年

2021 EULAR recommendations regarding lifestyle behaviours and work participation to prevent progression of rheumatic and musculoskeletal diseases (Ann Rheum Dis. 2023 Jan;82(1):48-56.

アルコール摂取

リウマチ性疾患患者のアルコール摂取については、特に新しい治療を開始する場合には(特にメトトレキサートなど)、医療専門家と話し合う必要がある
リウマチ性疾患患者は、特定の状況を除いて、低レベルのアルコール摂取が疾患の予後に悪影響を与える可能性は低いので安心できる
・アルコールとリウマチ性疾患に関する研究研究は比較的少ないが、発表された研究では、肝疾患のある人や特定の治療法(メトトレキサート、レフルノミドなど)を使用している人などの特定の状況を除き、一般に低レベルのアルコール摂取がリウマチ性疾患特有の結果に悪影響を与える可能性は低いことが示されている
メトトレキサートを服用しているRA患者におけるアルコール摂取による肝毒性リスクの研究(Ann Rheum Dis. 2017 Sep;76(9):1509-1514.) 週当たり14単位以下の摂取量はリスク増加と関連しなかった
RA患者および医療専門家は、中等量のアルコール摂取がRA再燃および併存疾患のリスク増加と関連していることを認識する

喫煙

RMD 患者には禁煙を奨励し、喫煙はすべての RMD の症状、機能、疾患活動性、疾患の進行および併存疾患の発生に有害であることを知らされるべきである
・RMD 患者を対象とした調査研究では、喫煙が病気の活動性、機能、進行、併存疾患の発生などの健康上の結果の多くに悪影響を及ぼすことも示している
・喫煙する RMD 患者は、喫煙を続けると症状の負担が悪化するだけでなく、心血管疾患などの重篤な併存疾患のリスクが増加する可能性があることを認識する
・関節リウマチ患者および医療専門家は、喫煙が抗リウマチ薬治療の反応を変え、疾患に影響を与える可能性があることを認識する
・喫煙が RA における DMARD への反応を制限する可能性があるという証拠がいくつかある

RA発症のリスク

・RAのリスクが高い患者に対して、発症リスクを軽減するため、禁煙するべきである
・RAの相対リスク(RR)は非喫煙者と比較して、現喫煙者(RR 1.43)と過去喫煙者(RR 1.47)のいずれでも有意に上昇していた。RAのリスクは10パック年以上の喫煙で有意に上昇し、パック年が増加するにつれて直線的に増加した(P傾向<.01)。毎日のタバコの本数が多く、喫煙時間が長いほど、リスクの増加と関連。過去に喫煙した人では、禁煙後 20 年以上経過するまでリスクが上昇したまま (Am J Med 2006; 119: 503.e1–e9.)
・16件の研究のメタ分析では、喫煙歴のある女性は非喫煙者に比べて血清反応陽性RAの確率が34%高いことが判明した。
喫煙は RA、特に RF+のRAでの男性およびヘビースモーカーの危険因子である (Ann Rheum Dis 2010; 69: 70–81.)
・共有エピトープ (SE)感受性遺伝子ホモ接合体は抗CCP陽性RAのリスクが上昇し、ヘビースモーカー(OR 52.6)など環境危険因子にもさらされている人はRAのリスクが著しくかつ選択的に増加する (Arthritis Rheum. 2007 May;56(5):1446-53.) 喫煙と血清反応陰性 RA の間には有意な関連性はない

まとめ

RAにおける喫煙に関して質の高い研究がないためガイドラインとしての推奨事項はまだでていない
喫煙は、リウマチ症状、身体機能、疾患活動性、疾患の進行だけでなく併存疾患の発生などのいくつかの結果に悪影響を与える
喫煙がRA治療への反応性の低下の予後因子であることを報告しているものが多い
RAにおけるアルコールに関してはさらに個々の報告も一貫していないが、少量までのアルコール量であれば安心できるようだ
大量飲酒者ではX線検査でのRA進行が著しく大きいことがわかった
アルコール摂取について、特にメトトレキサートなど新しい治療が開始される場合には医療専門家と話し合うこと

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